たくさんの虫
ルルドに屋敷まで送られて、お父様にあいさつを済ませ、どうにか自室に帰った時には、へろへろになっていてかなり疲れていた。
体の中の薬は解毒薬を飲みすぐに楽になったけれど、やはりどこか違和感があり、疲労感と倦怠感が襲ってきた。
侍女に手伝ってもらい身を清め、ネグリジェへと着替えを済ませると早めにベッドに入り眠りにつくことにした。
ベッドに入り、いざ、眠りに就こうとした瞬間、ぶわっとアマリーの頬は真っ赤に染まった。
自分のルルドに甘えると言う羞恥を思い出し、布団の中で悶絶する。
なんてはしたない事をしてしまったのかしら。じ、自分からキスを求めるなんて、私はいつからこんなはしたない女になったのかしら!?
ごろごろとベッドの中でのたうちまわりながら、両手で顔を覆う。
どうしましょう。もしかしたら、ルルド様にはしたない女と思われてしまったかもしれないわ。
そんな事など絶対にないのだが、アマリーはベッドの中で悶々と考える。
大丈夫かしら?私の事、嫌いになったりしないかしら?いえ、ルルド様はそんなお人じゃないわ。でも。
体は疲れていると言うのに、アマリーはなかなか寝付けない夜を過ごすのであった。
実は、もう一人、同じような人物がいる。
自室に戻り、就寝の準備を済ませたルルドは、窓辺に腰掛けてグラスに入れた水を飲みながら息を吐いた。
アマリーが本当に無事でよかった。
ベッドにアマリーが押し倒されているのを見た瞬間、あの男を殺してしまおうとルルドは思った。
だが、アマリーの目の前で殺生をするのはアマリーにいらないトラウマを植え付けそうで、だからこそ思いとどまった。
もしあの場にアマリーが居なければ、王弟だろうとなんだろうと切り殺していたかもしれない。
それもこれも、アマリーが可愛いのが悪いのだ。
ぷるぷると震えるアマリーは子ウサギを連想させ、白く艶めかしい肌は触れれば離したくはなくなる。
ルルドは自分の手を見つめ、ぐーぱーと繰り返しながら息を吐いた。
はっきり言えば、早く自分の手元に収めてしまいたい。
抱きしめて、キスをして、ずっと守りたい。
けれど彼女はずっと自分に守られているほど弱くはなく、自立した女性だ。
そしてとても魅力的だ。
もし結婚したとしても自分の心配は尽きないのだろうなとルルドはため息をついた。
アマリーに触れ、キスした瞬間、このままでいたいと思った。
アマリーは嫌ではなかっただろうかと、少し心配になる。
これからもたくさんの虫がわくだろう。
それを思うと、また、ため息が漏れた。




