茹でだこ
ルルドは苦笑を浮かべるアマリーを抱き寄せると、テーブルにあるケーキを見て笑みを浮かべた。
「アマリー?まだケーキがある。一緒に食べようか。」
「え?」
アマリーはルルドに流れるように膝の上に座らされると笑みを浮かべ楽しそうなルルドに今度はチーズケーキをフォークで取られ口元へ差し出される。
「今日はテーブルいっぱいにケーキを並べて楽しそうだな。ほら、チーズケーキは、アマリーは好きかな?」
差し出されているケーキとルルドの顔を見比べると、あきらかにルルドは食べてもらえるのが当たり前と言うように微笑んでおり、アマリーは顔を赤く染めた。
「る、、、ルルド様。恥ずかしいですから、あの、自分で食べれますから。」
「おや?先ほど二人にあーんとされたのだろう?私だけアマリーの可愛らしい顔を見れないのはずるい。」
何がずるいのだとアマリーは言いたくなった。
だが、明らかにルルドはアマリーが口を開くまで待つ気なようで、アマリーは根負けをした。
ゆっくりと口を開くと、そこへチーズケーキが運ばれる。
チーズの濃厚な味が広がり、アマリーは思わずへにゃりと笑みを浮かべて咀嚼した。
チーズケーキに罪はないし、とてもおいしくて笑みがこぼれてしまう。
そう思っていると、ルルドが微笑ましいものを見るかのような瞳で見ており、アマリーは恥ずかしくなり紅茶でチーズケーキを流し込んだ。
「おいしい?」
「は、、はい。あの、ルルド様も食べてください。」
「ん?」
ルルドはにっこりとアマリーを見つめてきて、アマリーは悟った。
食べさせろと、言っているの?
「え?えっと、、、。」
戸惑うアマリーに、ルルドは口を開いて見せた。
アマリーはぷるぷると震えながら、顔を真っ赤にしてフォークでチーズケーキを一口取ると、それをルルドの口元へと運んだ。
ぱくりと食べたルルドは、甘く笑みを深めて口の端についたチーズケーキをなめとった。
「美味いな。」
アマリーは心の中でルルドのその色気たっぷりな様子に悲鳴を上げた。
氷の宰相どこに行った!?
甘い瞳で見つめないで!
お行儀悪いのに、口元をぺろりとなめとった姿が少しいやらしく見えて、そんな事を思ってしまう自分がとても恥ずかしく思える。
あわあわと戸惑うアマリーを見たルルドはくくっと笑い声を漏らすと、アマリーの可愛さにそのままアマリーを抱きしめて言った。
「すまない。困らせてしまったな。つい、可愛らしくて。ふふ。ありがとうアマリー。」
「ひぇっ。あの、、、ルルド様。恥ずかしいです。」
「ふふ。はぁ、早く結婚したい。」
「けっ、、ま、まだ婚約したばかりです!」
「ああ。ハンス陛下が結婚式を挙げないと、挙げにくいしな。」
ハンスとアメリアの方を見ると、会話はどうにか続いているようでぎこちないながらも二人が頑張っている姿が目に入った。
「上手くいくといいですね。」
「ああ。」
アマリーがそう呟いた瞬間、きつくまた抱きしめられてアマリーは驚いた。
「ルルド様?!」
「上手くいってもらえないと、いつまでたっても結婚できない。それが辛い。」
その呟きに、アマリーは茹でたタコののようになった。




