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帰りたい

 アマリーは、大きなため息をつくハンスの話を聞きながら紅茶を一口飲みほした。


 はっきり言って、もう家に帰りたいのだが、ハンスの愚痴が止まらず、アマリーは五度目の紅茶のお代わりをすることとなる。


 はっきり言って、お腹はもうたぷんたぷんである。


 しかもルルドは仕事で呼ばれてしまい、名残惜しそうに行ってしまった後であり、アマリーは帰る機会を逸していた。


「アマリー聞いているのか?」


「ええ。ですが一言。私に喋っていないで、アメリア様とお話ししてみては?」


 ハンスがうっと言葉を詰まらせた時であった。


 アメリアを送り届け帰ってきたテイラーが二人の様子に苦笑を浮かべると言った。


「こちらではハンス陛下が拗らせておいでですか。」


 アマリーはその言葉におやっと首を傾げると、テイラーは笑いながら言った。


「アメリア様も拗らせておいでですよ。ハンス陛下。いい加減素直になって、アメリア様と向き合ってみてはどうですか?」


 微笑んではいるが、どこか棘をはらむ口調にアマリーは内心首を傾げながらも様子を見守っていた。


「どういう意味だ?」


「素直に、アメリア様と向き合ってはどうかと、友人として進言しているんだよ。」


 砕けた口調になったテイラーに、ハンスはため息をついた。


「俺の事をアメリアが好んでいないことは知っている。」


「へぇ。本当に?」


「しつこいぞ。その証拠に、、、お前にはアメリアは素直だが、、、俺には、、、。」


 ぼそぼそと話をするハンスを見つめながらアマリーはため息をついた。


 なんだこの情けない感じの陛下は。


 恋愛ごとになると急に変わる人はいるが、陛下はまさにそれだなとアマリーは思った。


「いい加減にしろよこの朴念仁が。あんまりぼやぼやしていると、横からかっさらわれるぞ?」


 不敬だなと思いながらアマリーが見ると、ハンスが驚いたような表情を浮かべ、そして立ち上がるとテイラーを睨みつけるように言った。


「誰が、誰をさらうって?」


「お前達二人とも、もう少し歩み寄ってみろって言ってんだ。いいか。アメリア様とのお茶会をする約束を取り付けてきてやったから、そこで、ちゃんと、自分の気持ちを言え。アメリア様がどう思うかじゃなくて、お前がどう思っているかを言えよ。分かったか?」


 いつになく迫力のあるテイラーをハンスも負けじと睨みつけた。


 二人のその様子に、アマリーはほうっと息を吐くと、思った。


 帰りたい。


「アマリー嬢には、二人の取次として参加してもらうからよろしく。」


「え?」


 予想外の一言にアマリーは思った。


 帰りたい。



 

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