願い
アメリアを追いかけたテイラーは、少し先のベンチにアメリアが腰掛けてこちらを待っていることに気が付いた。
「アメリア様。お願いですから、大人しくして下さい。」
「あらテイラー。ここは下町ですよ。そんな畏まらなくてもいいわ。」
その言葉に大きくテイラーはため息をつくと言った。
「陛下の何が気に食わないんだよ。昔っからキミはどうしてそう意固地になるんだ。」
「あの陛下の言葉を聞いてもあなた、そう言えるの?」
「はぁ、アメリア様。あのさ、あんまり意固地になっていると本当に陛下と上手くいかなくなるよ?好きなくせにどうしてそんなに意地を張るのか。」
「なっ!」
「ずっと一緒にいるんだからそれくらい分かるよ。」
テイラーの父は以前はハンスの今は亡き母の護衛を務めていた。そしてテイラーはハンスの母からの願いによってハンスと昔から友達のような関係であった。それ故に、アメリアの事も昔から知っている。
そして、小さな頃からずっとアメリアがハンス一筋である天邪鬼な女の子であることもテイラーは知っている。
アメリアは顔をうつむかせると、耳まで真っ赤にしている。
「俺だったら、、、そんな顔させないのにね。」
「え?」
「何でもなーい。ちょっとアメリア様帰りますよ。俺だって今日は夕食の約束があるんだからね。」
「テイラー。貴方またなの?貴方はもっと見る目を養わなきゃだめよ。」
「分かっているよ。自分に見る目がないってことは。アマリー嬢とルルドに人は見た目じゃないって教えてもらったし。けどね、俺にも色々あるの!」
「色々って何よ。」
テイラーはアメリアを見つめた。
町娘の振りをしたところでアメリアの美しさを隠せるわけもなく、そのメリハリのついた体も、澄んだ瞳も、周りを見れば男達からの視線を集めていることは一目瞭然である。
テイラーは大きくため息をついた。
「アメリア様には俺の苦悩は分からないだろうよ。さぁ、帰りますよ。貴方の好きなケーキはさっき買って馬車に乗せてありますから、帰ってからお茶を用意させますから。」
その言葉にパッとアメリアの表情は明るくなると嬉しそうに笑みを深めた。
「ありがとう!貴方ってば昔から私の事をよく分かっているわね。」
「もちろんそうでしょうよ。昔からあなたの愚痴を聞くのも、天邪鬼な貴方の機嫌を取るのも俺なんだから。」
「まあ、そうかしら。ふふ。貴方が居なくなったら私は大変ね。」
「そうですね。でも大丈夫。ハンスの妃になってからもちゃんとお支えしますからね。」
「はぁ、それは憂鬱だわ。」
「上手くいくように、ちゃんと作戦を立てるのも手伝いますから。さあ、馬車に乗って。」
「約束よ?ふふ。」
アメリアはそう言うと近くにいつの間にか来ていた馬車に乗り込んだ。
そんなアメリアに聞こえないように、テイラーは呟いた。
「貴方が幸せになれるように、ちゃんと手伝いますよ。」




