おバカな男
アマリーが屋敷に帰った後、テイラーとハンスはしばらくの間呆然と部屋の中で突っ伏していた。
ルルドは執事の入れた紅茶を飲み、お気に召したのか満足げに頷いている。
「何てことだ。どういう事だ!」
テイラーはそう声を上げると、じたばたと足を揺らした。
「あんな、あんなセクシーな女性に変身するなんて!誰が分かる!」
それにハンスも同意するように頷いた。
「あぁ。本当に、なんというか、堪らない体つきになったな。」
「そうだよ!あぁ、殿下。俺は何て浅はかな男なのだろう。くっそぉ。」
落ち込むテイラーに、ルルドは大きくため息をつくと言った。
「お前はもう少し、外見ではなく内面も見れる男になれ。」
「ぐはぁ。」
テイラーは項垂れ、ハンスもルルドの言葉にうっと、胸を抑えた。
確かに、自分達は今まで外見ばかりに目が行ってしまっていた。それにため息をついてしまう。
ルルドはその様子に呆れたように息をつくと、紅茶をまた一口飲んだ。
「はぁ。俺、頑張るよ。あーぁ。」
ハンスも頷くと言った。
「エミリアーデの言葉が脳裏をよぎるなぁ。私も気を付けるとしよう。あ、そうだルルド。」
「なんだ?」
「舞踏会には、アマリーの元婚約者も呼ぶからな。」
その言葉にルルドの眉間にしわがよる。
「呼ばない方が良いのではないか?アマリーが嫌がるのではないだろうか。」
すると、ハンスがにやりとした笑みを浮かべた。
「あえて、呼ぶんだよ。」
「何のために?アマリーが、傷つく様子は見たくない。」
その言葉に、ハンスは毒気を抜かれたようにテイラーに言った。
「テイラー。我々に足りないのは、ルルドのこういう所もだと思う。」
テイラーも頷いた。
「本当だなぁ、、、はぁ。ルルド、、、お前、かっこいいよ。」
「何だか、ルルドに負けた気がして悔しい。とにかく、アマリー嬢にとっては美しくなったお披露目みたいなもんだ。せっかくだから元婚約者にも盛大に悔しがっていただこう。」
「そうだそうだ!俺と同じようなバカな男に、気づかせてやろう!」
二人はみじめな気分を払しょくさせたいのか、それとも自分と同じような仲間を作りたいのかそう言った。
ルルドは変なテンションの二人にわざとらしく大きくため息をついた。
「お前達は本当に。とにかく、もし呼ぶのであれば、アマリーが傷つかないように配慮しておくことが大前提だ。」
「もちろんだ。アマリーには特別勲章も授与するからな。元婚約者殿はさぞかし悔しがるだろう。」
「そりゃ楽しみだ!」
元婚約者を呼ぶことで、アマリーが傷つかなければいいがとルルドは思い、もしも元婚約者と話をするようであれば絶対に一緒にいて守らねばと、心に誓うのであった。




