第38話
新編スタートです。
どうも皆さん、ジョン・ドウです。
仲間達にこの身を蹂躙されたあの時から、一夜が明けて次の日になりました。
皆さんがご想像の通り、寄って集って『物凄いコト』をされました。
こちらは、拘束されたままだった事もあり、一方的に弄ばれてしまった為、皆が落ち着いた時に、半ば仕返しやある意味嫌みとして、イタズラ?を仕掛けてみました。
それは、ベッドに横たわったままシーツを胸元まで引き上げ、皆に背を向けた状態で
「汚された……弄ばれた……もうお婿に行けない~!」
と言いながら「ヨヨヨ~」と泣き崩れる、フリをしてみました。
これで、少しは反省?をして、今回みたいに無理矢理に、って言うのは止めてくれると良いな~なんて思ってやったのです。
やったのですが、どうやら皆の琴線に触れたらしく、背後から再度襲われ、もうワンラウンド致す事になりました。……解せぬ。
ついでに言うと、途中で一人増えたような気がしたのですが、実際にファイト(意味深)したのは四人だけだったので、私の気のせい……ですかね?何か知ってますか?
さて、そんな訳で、一晩中辱しめを受け、太陽光を黄色く感じながら諸々の処理を終え、順番にシャワー(この世界にも有りました)を浴びて、身だしなみを整え終えた頃に、それはやって来たのです。
爽やかな朝をぶち壊しにしたのは、ギルドからの使者でした。
******
「……で?ギルドから、わざわざこっちまで来て、何の用件で?」
早朝に襲撃されたので、多少機嫌が悪いです、と言うのが分かりすぎる位に分かる態度で『わざと』対応する俺。
理由など一つしか無い。
わざわざこちらに人を寄越すって事は、『ギルドは厄介事を抱えています』と大声で宣伝しているようなものだし、大概の場合はそうであると相場が決まっている。
高危険度の魔物が出たとかなら、まだ食い付いても良いが、そうではあるまい。
何せ、そんなものをこっちに持ってくる理由が無いからな。
俺達のパーティー『ヘルヘイム』は、パーティーランクはまだ最低だし、俺とガルムはEランク。
実績の有るウカさんやシルフィ、SSランクのウシュムさんが居るとしても、それならば、そちらへと個人で話が行くハズなのだ。
そう、今回の話は、パーティー『ヘルヘイム』と俺に対しての話……らしい。
ココへと来たのも、『ヘルヘイム』の拠点として登録されていたから、まず来てみたとの話だったし、どちらかと言えば、やはり俺個人に対する話なのだろう。
……なのだろうが、使者殿は口を閉ざしたまま、一向に喋ろうとしない。
話が有るから来ているのだろうに、何故黙りを決め込むのかね?
……仕方ない、ちょっと強引だけど、帰るか話すかの二択を迫ってみるか。
俺は、使者殿に対し、早朝に突然来られて不機嫌だ、と言う感情と少しばかりの殺気を混ぜて、ぶつけながら声をかけた。
「……もう一度、問わせて頂く。一体何用か?何もない、または話す気がないならば、お帰りを。出口は彼方だ」
ついでに挑発もしておいた。さぁ、これで話すか帰るかの二択だ。どっちを選ぶ?
……黙りか。
なら仕方ない、叩き返すか。
ガルムに指示して追い出そうとした時、それまで最低限の事しか話さなかった使者殿が、漸く重い口を開いた。
「……今回、こちらに来たのは他でもない。ギルドマスターが、パーティー『ヘルヘイム』ひいては貴方に話が有るとの事で、迎えに参りました。
同行願えますか?ジョン・ドウ殿?」
……ガチで俺目当てでしたか……。
******
「そう言えば、あのスキルのコンボは反則よね~?」
突然にそんな事を言い出したシルフィへと目を向ける。
現在、俺達は全員でギルドへと向かっている。
あの使者殿には、『ギルドマスターとは会うが、それはパーティー全員で、一時間程してから、こちらが出向く』と条件を出し、半ば伝令としてギルドマスターへと伝えさせた。……まぁ、そうでなければ断ると脅したのだけれど。
そんな訳で、ギルドへと移動中なのだが、そのタイミングで、先程のシルフィの発言である。
……一体何のコトだろうか?
「……突然にどうした?とうとう一部だけでなく、頭の中身が全て残念になったかね?」
「違うっての!そうじゃなくて、あの【連鎖進化】だったっけ?あれの事よ。ぶっちゃけアレこそがチートでしょう?」
フム、それは確かに。
「アレ単体だと意味が無いが、噛み合うスキルが有れば極悪だからな……」
「『自身の進化時に契約・テイム関係にあるモノを進化させる』でしたっけ?確かに強力ですね。特に、旦那様の目的と照らし合わせると凄まじい事になりますからね」
「配下の強化もそうですが~、そのスキルの恐ろしさは別に有りますよ~?」
「?どう言う事でありますか?」
……分かって無いのかこいつ?流石アホの娘……。
「……それは、私やウカみたいな、本来進化しない『人間』まで進化させている事よ」
「本来は進化するのは魔物だけ。余程の例外を除けば、ってか?」
俺は、別件でヘルプ機能に聞いていたので、知っていた。
この世界のシステム上、魔物にはレベル上限が存在し進化する。人間は進化しない代わりにレベル上限が無い。
まぁ、と言っても、一度も進化しない魔物も居るし、人間だって、レベルは上がっても百何十代程度が限界らしい。上がらない事はないが、そこまで行くと、基本的に上がらなくなるのだそうな。たまに二百まで行くのがいるらしいが、そんなのは例外だ。
そんな話をしていると、冒険者ギルドへと到着する。
全員に視線を向け、油断が無いことを確認する。
……警戒し過ぎ?確かにそうかも知れないが、既に襲われた実績(チンピラ等)が有るため、今回の呼び出しがそいつらと違う、とは言い切れない。
なので、全員がフル装備だ。俺も含めて。
改めて、自分の装備に視線を送る。
左手には、それまでの指環が変化したと思われる、装飾品?が嵌まっている。
全ての指の節ごとに指環が嵌まり、それらが指ごとに鎖で繋がり、その鎖が手首の所でバングルに繋がっている。パッと見は、某狩猟マンガの鎖使いの武器みたいな感じだ。……アレよりも、指環ごとに紫黒色の石が嵌め込まれているので、その分派手かもしれないけど。
そのまま左腰に視線を落とす。
すると、そこにはやはり、愛用の長剣が下がっている。
こいつの場合はあまり外見の変化は見られないが、魔力を流すと二本に増えたり、切れ味が上昇していたりする。あと微妙に重くなった気がする。
まぁ、今の方がよりしっくり来るから、良いのだけど。
もちろん鎧も変化している。
これまでは、板金鎧一式で、常時フルフェイスの兜を被っていたが、それもなくなっている。
と言うよりも、鎧自体が無い。
上は黒い革のロングコートに肩当てやら胸当てやらの鎧のパーツを足した感じに成っている。
下半身に関しては、腰回りに付ける装甲が少々と、腿半ばまでの装甲板?鎧の足?みたいなのを付けている。意外と動きやすい。
「……よし!全員武装は良いな?作戦は一つ!『襲って来たらぶち殺せ!』それだけだ!良いな?」
「「「「了解!」」」」
うん、良い返事だ。
「じゃあ、行くか」
と一声かけて、俺は入り口のドアを押し開けた。
******
結果から言えば、どうやら心配のし過ぎだったらしい。
別段、入ると同時に魔法が飛んでくる訳でもなく。
高位の冒険者が槍襖を作って待ち構えている訳でもなく。
ごくごく平和に入って行く事が出来たよ。
まぁ、まだ勘違いして突っ掛かって来たバカが居たので、見せしめに死んで貰ったけどね?
以前と同じく、俺が素材を持っていると信じ、更に今まで人死にを出していなかった為、完璧に嘗めてかかって来ていた、なので丁度良い見せしめとして、首を跳ねて晒しておく事にした。
もちろん、『次からは殺す』と俺直筆の文を添えて、だけど。
もちろん、何の対処もしようとしなかったギルドの前でだ。
しかし、俺の顔を知らないハズなのに、何で俺だと判断できたんだろうか?と思ったが、仲間といれば、それが『俺』か……と思い至る。
そんな事を考えていたら、漸く奥からギルドマスターが出てきた。多分。
……アレがそうだよな?
なんか強そうで偉そうだし。
「……こちらが言う事では無いかもしれませんが、事を大きくし過ぎではないですか?」
……エルフ族の美人さんで、誰かとは違ってスタイルが良いが、ココはちょっと優しくは出来んな。
「大きくも何も、そちらに火消ししていただけない様子だったので、こちらで勝手に消すことにしただけです。それに何か問題でも?」
視線に殺気を混ぜつつ、『そちらがしなかったからこうなったんだが?』と嫌みを言っておく。
流石にギルマスだけあって、俺の言いたい事を理解した様子だが、していない者も居るらしく、辺りが少々騒がしくなる。
「それで?わざわざ呼びつけて、一体何の用で?」
意訳すれば『さっさと話せ』だが、それを理解しているハズのギルマスは、こちらに背を向け歩き出す。
「……こちらは騒がしい上に耳が多すぎます。どうぞ、こちらの部屋でお話致しましょう」
そう言って、受付ブース奥のドアを開けると、俺達を招き入れた。
ソファーと机とが揃っている事から、応接室の類いであると判断出来る。
ギルマスは一人掛けのソファーに座ると、対面のソファーの方に座るように促してきた。
俺は、話をする関係で促されるままに席に付くが、仲間は防衛の関係上立ったままだ。……一応警戒しないとね?
こちらが席に付き、俺の前に茶が出された段階でギルマスが話し出した。
「今回は呼び出に応じて貰えて感謝しています。正直、断られるかと思っていたのですが?」
「……この手の呼び出しは断ると面倒になるのがお決まりだ。それに、今までの『騒ぎ』について言っているのなら、丁度良かったからな」
「丁度良い、とは?」
「いや?あの騒ぎにギルドが関わっていたのなら、潰してしまおうかと思ってね?冒険者を守らない冒険者ギルドなんていらないだろう?」
あまりに過激な発言に、ギルマスも怒りを覚えた様だが、俺の殺気と怒気、そして、俺の言い分とギルドの対応を思い出して、口から出掛けた言葉を飲み込んだ。
「……それに関しては、こちらは関与していません。貴方に対する対応が御座なりになっていたならば、ギルドマスターとして謝罪します」
「謝罪なんぞいらないから、今後の火消しの約束と、呼び出した要件を伝えてくれないか?暇と言えば暇だけど、無為に時間を浪費する趣味は無いぞ?」
……完全に相手を舐め腐った態度で挑発を仕掛けてみるが、多少顔が強ばった程度で終わってしまった。
意外と手強いな……。
「……分かりました。噂の件はこちらでも対処しておきます。今回の件は、とある方から貴方当てに指名依頼が入っています。受けられますよね?」
何故か既に断定形。となると、余程上の方からの指令で、俺が断るとは考えもしていない、って所か?
フム。
「……ちなみに、断っても?」
「いえ、この依頼は『強制依頼』になりますので、断る事は出来ません」
……何が何でも受けさせたい訳か。
「……俺達が指名された理由と、誰が指名してきたかだけ教えて貰えますね?でないと、ギルドカード返上して帰らせていただきますが?」
……ついでに暴れていきますよ?
言葉の外側のセリフに気付いたらしいギルマスが、少々顔を青ざめさせながら、慌ててこちらに返事する。
「い、依頼主は、この郡の貴族です!それしか知りません!
依頼の内容も、危険性は少なく、時間がかかるだけのモノなので、貴方を害する為のモノでは無いハズです!少なくとも、ドラゴンを撃退出来た人がどうこうなるようなモノではありません!」
ちょっと虐め過ぎたかな?
こちらも殺気を抑えて更に聞く。
「……それで?その貴族様は、何で俺達にそんな事をさせたいんで?ぶっちゃけ、貴族と関わりになった覚えは無いのだけど?」
「……その点に関しては、こちらでも聞きたい位です。私は貴方を一定期間この街付近に滞在させる事しか指示されていません。一体何をしたのですか?」
知らねぇよ……。
まぁ、良い。
まだ、この段階で騒ぎを起こしても面倒なだけだ。
とりあえず、大人しく受けておくか。
「はぁ、んで?依頼の内容は?」
この言葉で、俺が受けても良いと考えていると分かったらしく、あからさまに顔色が良くなるギルマス。
そんな彼女の口から、こんなセリフが吐き出された。
「では、これが依頼の内容です。この街の近くに、比較的新しいダンジョンが有る事が分かりましたので、そこを調査して来て下さい」
……なんですと?
ダンジョン編(仮)または陰謀編(仮)ですかね?




