第108話
禁断の云々についての種明かしです。
勇者(笑)が降伏した事もあり、必要性が無くなった変身?を解除して、何時もの姿に戻っておく。
すると、俺直下の部隊以外からは、安堵の物と思わしき吐息と共に、
「良かった……」
「助かった……」
「チビるかと思った……」
「魔王様ハァハァ……」
と言った呟きが漏れ聞こえる一方で、俺直下の部隊とメフィスト、そして婚約者ズ達からは、残念そうな溜め息と共に、
「もう戻ってしまうのでありますか?」
「せっかく格好良かったのに……」
「素敵でした~」
「流石旦那様♪」
「あれが本気なのですね!」
「……あの状態での戦闘は御免ですねぇ」
「「「流石我等が主!!」」」
と言った風な、割と肯定的な呟きが聞こえて来たのだった。
……どないしろと?
そんな両極端な反応に頭を悩ませていたのだが、今だに爆笑の発作から復帰出来ていなかったレオンに、意趣返しの意味も込めて、少々強目に腹パンを決めて静かにさせてから、勇者(笑)と愉快な仲間達を、浄化魔法を掛けた上で拘束する様に指示しておく。
……色々と垂れ流していたし、そのままだと少々バッチイからね。
……腹パンかましたレオン?
まぁ、生きてんでしょ?……多分。
白目剥いた上で、腹を抑えながら蹲って泡吹いている様にも見えるけど、ちゃんと動いているから大丈夫大丈夫。痙攣している訳ではないから。……多分。
そうして、勇者(笑)御一行を拘束している者達と、レオンのアホを介抱しているウォルターさんを除いた全軍へと号令を下す。
「さて、では諸君。目標は眼前の統一国首都。全軍、目標を蹂躙せよ!」
多分切り札的な戦力として期待されていた、と思われる勇者(笑)はもう既に無力化してあるので、後はもう大した事は無いだろう、と判断したので、本格的に攻め込んでしまうとしますかね。
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取り敢えず、俺が先頭に立って、正面門へと近付いてみたのだが、意外な事態が発生する事となった。
遠目に見ていても、何のためにここまででかい門作ったの?と、製作者に突っ込みを入れたくなる程に巨大なソレを、ほんの出来心程度の企みで、物の試しに、と軽い気持ちで押してみた処、何と大した抵抗や重みも無く、アッサリと開いてしまったのだ。
咄嗟に、罠か何かか?と考えた事もあり、俺一人で開けられる限界程度(腕の長さの限界)まで観音開きの両扉を押し開けて、俺に続いて進軍してきていたアンデッド部隊を何体か送り込み、中の様子を探らせる事にしたのだ。
……まぁ、結果から言えば、罠でも何でも無かったのだけどね。
元々、この正面門自体は、門両サイドにある管理塔にて、扉自体のロックや開閉を操作する仕組みになっていたらしい。
その為、少し前に出てきた勇者(笑)達を通すために、扉のロックを解除し、扉自体も開閉が行われたのだが、どうもその時に、どうせ直ぐに戻ってくる事になるのだから、わざわざ施錠する必要は有るまい、と言うことでロックされず、また、魔王を討ち取った勇者様を待たせるわけにはいかない!と言うことで、直ぐに開けられる様に準備しつつ、戦闘終了を確認するために、塔から外を覗いていたらしいのだ。
そして、その時運悪く、俺の変身シーンを見てしまった為、あまりの恐怖にショック死した様なのだ。
……まぁ、それも、現場に残っていた状況(極端に軽かった扉、塔の窓、恐怖を顔面に張り付けて死んでいた操作技師)からの推測だが、そこまで的外れな予想では無いと思われる。
……そんなに恐かったのか?なぁ、オイ。
そう呟きながら、ショック死している誰とも知らない死体を突つくが、誰からも返事を受け取る事は出来ないのであった。……解せぬ。
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そんなこんなで、門には罠が無い事が確定したため、管理塔にて扉を操作し、全開にしてまだ外にいた各軍勢を中へと導いてやり、本格的な蹂躙を開始した。
まず最初に、入って直ぐ位の処に広がる『平民街』で、レオン率いるアニマリア軍を一旦分離させ、別行動をお願いする。
彼等が一番人数が多いので、一番外周に当たり、最も範囲の広い平民街を担当して貰った方が都合が良いと言うのもそうだったのだが、アニマリア軍を主に構成している人獣族は、嗅覚や聴覚が鋭いので、その鋭敏な感覚を駆使して、奴隷として捕らえられているであろう亜人族の人々を解放し、保護して貰う様に要請したのだ。
当然の様に、レオンはそれを快諾。
「むしろ、ソレを言い出さなければ、我が勝手にやっておったぞ?」
と言い残し、自らの軍勢を率いて、首都内部の蹂躙を開始し出した。
もちろん、途中で見掛けた人族は皆殺しにする様に言ってあるので、討ち漏らしはそうそう出ないだろう。
レオン達と別れてから、目抜通りを城目掛けて真っ直ぐに進んでいると、外壁までとはいかないまでも、それなりに立派な壁に囲まれ、入るには門を潜る必要が有る『貴族街』と呼ばれる区域に到達する。
門の所には、おそらく温存していたのであろう戦力が展開されていたのだが、それも俺達魔王軍とユグドラシル軍とでアッサリと踏み潰し、閉ざされていた門も、力ずくで強引に突破させて貰った。
……少々やり過ぎた感は有るけれど、まぁ、しょうがないよね?
「……さて、そんな訳で、こうして貴族街まで来たのだけど、ここの掃除はお前達魔王軍にお願いしたいんだが、大丈夫かね?」
『お任せを。むしろ、こう言う時は、「やっておけ」と命令するべき場面かと思われますよ?『お願い』では無く、ね』
そう答えながら、頭を下げてくるのは、アンデッド部隊の指揮を丸投げしておいたジャックだ。
こちらにも、アニマリア軍と同じ様に、奴隷達の解放も念押ししておいたのだが、大丈夫だろうか?
……まぁ、大丈夫だろう。
そうして、道中の邪魔な連中を排除して、俺達は城へと到着したのだった。
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「……んで?コレが例の『召喚』に使われた魔法陣、って事で良いのかね?」
解・ええ、その様です。
そんなやり取りをしながら、俺は眼前に広がる魔法陣……のようなナニかを見ながら、ヘルプ機能どの会話を続ける。
そんな俺達が今居るのは、統一国首都の城の更に地下に有る、通称『禁断の間』とか呼ばれていた部屋だ。
ジャック達に貴族街での掃除を任せてから、魔法関連に強いユグドラシル軍を連れて城へとカチコミをかけ、中にいた人族を、手当たり次第に皆殺しにしながら進んでいたのだが、その時偶々発見したのが、この部屋だ。
んで、それっぽいモノを見つけた為、ヘルプ機能に解析してもらっていて、現在絶賛暇をもて余している魔王様なのである。
……城に残っていた戦力?
基本的に大した奴は居なかったよ?
まぁ、一人だけ強そうなのがいたけど、幹部達のオモチャにされていたっぽいから、詳しい事は分からん。
解・……解析、終了しました。
おお!んでんで?何か分かったかね?
解・はい。その前に主様。この部屋に来る前に遭遇した人族がわめき散らしていた事を、覚えていますか?
ん?なんだっけ?
確か、『その先は王祖様によって定められた禁断の~』みたいな事を言っていた、アレの事かね?
解・はい。その『禁断の~』の部分が気になったので、こうして解析してみたのですが、驚くべき事実が判明致しました。
ほうほう?何が分かったってか?
解・実は、この魔法陣、本来の目的が、『召喚』では無くて『送還』だった模様です。
……はい?
何ですと?
解・おそらく、これを作ったのは、あの話に出てきた『王祖』で間違いは無いと思われます。そして、その『王祖』が、女神様が異世界から転生させた『転生者』である事も、ほぼ確定であると思われます。
……うん。そこは既に分かっていた事だと思うけど?
解・はい。そして、ここからは、陣に使われている術式や、製作の際の工夫等からの推測が混じりますが、おそらくはその『王祖』は、元の世界に帰りたかったのでは無いでしょうか?
……だから、『送還』?
解・おそらくは。そして、どうにかして、陣の製作自体には成功したものの、魔力を貯めて、いざ使うぞ!と言ったタイミングで、『送還』では無く『召喚』の魔法陣だったことに気付いて使用を中止し、この部屋自体を封印したのでは無い事がでしょうか?
成る程ねぇ……。
しかし、もしそうだったとしたら、何で『禁断の~』なんて言い残したんだろうか?
解・……多分ですが、恥ずかしかったのでは無いでしょうか?
……え?マジ?
解・記録によれば、その王祖とやらは、基本的に何でも出来たらしいのですが、唯一今回の魔法陣だけが、狙った効果を出せていません。
なので、それがバレない様に、かつ万が一の時は、コレを使用出来るように、と『禁断の~』とか言い残したのでは無いでしょうか?
……それで召喚されたあいつらは、良い迷惑だな、オイ。
解・それと、解析結果に関係ないのですが、お知らせすべきインフォが、主様宛に届いております。
マジで?何処から?てか何から?
解・コレは……女神様からですね。
マジかぁ……。
んで?なんだって?
解・今回来たのは全二通。
一つは、今回の侵攻で、人族の総人口の八割を駆除することが出来たので、女神様からの依頼は達成したと考えても良いとの事です。また、それに伴い、女神様の方で止めていたレベルアップも成されているハズ……との事です。
やっぱり、あの駄女神が関わっていやがったか!
会うことが有ったらぶん殴ってやろうか、まったく!
……んで?もう一通は?
解・もう一通なのですが……こちらは、依頼達成の報酬として、主様を、神域に……招待するとの、事です……。
……え?マジ?
解・……マジらしいです。
……ちなみに、何時?
解・私が、これを伝えてから、十秒後……と。
ゑ?
それってもうなんじゃ……、とヘルプ機能に返そうとしたのだが、ソレを思考に乗せる前に、突然俺の身体が光に包まれる。
某大佐の様に「目が~!!」だとかふざける間もなく浮遊感に教われた俺が、恐る恐る瞼を開いた時には、既に目の前の光景は、先程までいた広大な地下室のソレとは、かけ離れたものとなっていた。
……解せぬ。
流石に、この展開は予想外……ですよね?




