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第1話 別に怒っていませんよ。(笑顔だけどすごく怒りながら)

 怒っているの? 麒麟姫。

 

 別に怒っていませんよ。(笑顔だけどすごく怒りながら)


 麒麟姫は怒っていた。むすーとした顔をして、腰に手を当てて、両足を少し広げるようにして、じっと目の前にある大きな大きな岩を睨みつけていた。

 とても濃い湯気があたりを包んでいるので、その『神世界』でも一番と言われている美しい麒麟姫の体は濃い湯気に隠れてよく見えなかったのだけど、麒麟姫は『裸』だった。

 長くて美しい艶々としている黒髪はまだ濡れていて、その黒髪を頭の後ろで丸めてお団子にしている。

 その綺麗な凛とした顔は火照っていて、そのつんとした大きな瑠璃色の瞳は明らかにすごく怒っていた。

 なんで麒麟姫は裸なのかというと、ここが『温泉』だったからだった。

 神世界にある神湯と呼ばれている温泉で、その温泉につかって麒麟姫はその疲れた心と体をあっためていた。

 神湯は本当に気持ちよくて、湯気の中で火照った顔をしている麒麟姫はずっとにこにこと笑っていて笑顔だった。

 だから神湯から出て、服を着ようと思ったときに『自分の服が全部なくなっている』ことに気がついて麒麟姫はすごくびっくりした。

 しかも、それだけではなくて、神湯の唯一の出入り口(のぞきをさせないために神湯の出入り口は強い結界が貼られていて、一つだけのつくりになっていた)である大きな谷のところにさっきまでなかった大きな大きな岩があって、神湯から出ることができなくなっていたのだった。

 まさに極楽から地獄みたいな気持ちになった。

 こんないたずらをしたのは、間違いなくさっきまで麒麟姫と一緒に神湯に入っていた友達の鳳凰姫の仕業に違いなかった。

 その証拠にさっきまで神湯につかっていて、楽しそうに仲良く麒麟姫とおしゃべりをしていた鳳凰姫はいつの間にかにどこにもいなくなっていた。

 こっそりと麒麟姫が気がつかないうちに神湯を出て、自分の服を着てから、麒麟姫の服を盗んで、そして神湯の出入り口のところに大きな大きな岩を置いて塞いで、麒麟姫が神湯から出られないようにしたのだと思った。(まず間違い無いだろう。麒麟姫にはいたずらが上手くいってとっても楽しそうにくすくすと笑っている鳳凰姫の可愛らしい顔をありありと思い浮かべることができた。なんだかまたすごく腹が立ってきた)

 さて。怒っていてもしょうがない。(怒っているけど)

 まずはどうにかしないといけないな。

 そう思って麒麟姫はきょろきょろとあたりを見渡してみた。

 すると神湯の沸いている岩場の端っこのところに大きな木が生えているのが見えて、その木には『大きめの葉っぱ』がたくさん生い茂っていた。

 それをみて、うーん、とすごく悩んでから、まあ仕方ないかな、と諦めて、麒麟姫はその大きな木のところに葉っぱをとりに歩いて行った。もちろん、『大きな葉っぱを服の代わりにするため』だった。

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