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第六十話

「起きたのかユウ。」

「ん。確かに起きた。ねえ、蓮私多分すごい経験したんだと思うんだけど。それも夢の中で。」

「ああ、安心しろ私もだ。」

その一言に、ユウは目を見張った。なぜなら、一貫して自分が女であることを口に出してこなかった蓮が自ら一人称を変更したのだから。

(試練の中で、心境の変化でもあったの?まあそれはいいか。)

「とりあえず、酒呑の前ではいつも通りにした方がいいと思うよ。酒呑って、超鈍感だから。」

「ああ、安心しとけ。私だってそう思っているよ。なにせ、あいつ一週間近く一緒に旅してたのに全然気づきもしなかったからな!」

その言葉に、蓮は憤慨する。鈍感野郎は、全世界の女の敵なのだ。

「まあそんなことはどうでもいいけど、とりあえず外に行こう。多分、今の私たちだったら酒呑の手助けもできるだろうし。」

「ああ、そうだな。とりあえず急いで向かうとしよう。」

そうして蓮たちが向かった先で見たのは、双頭の竜とその竜が放った咆哮(ブレス)を酒呑が手にしていた巨大な武器で相殺し終えた姿であった。次の瞬間、双頭の竜が次なる咆哮を放たんとしたその時誰よりも早く動いたのは、蓮であった。

蓮は自らが作り出した魔法を使用し、相当の竜の周囲半径100メートル圏内の上空に渡りチャレンジャー海淵すなわち()()()()()()()()()()の圧力を再現した。その圧力たるや、小指の先に約一トンの重さがかかるほどの圧力。しかしながら、さすがはオーディンの落とし子その竜が地に落ちることはあれど、決して首を垂れることはなかった。そして、その竜は羽ばたき先ほどまでの高度からさらに上空にあがろうと画策する。だが、かつての竜の王の力を手にした少女はそれを許さない。

「そんなことを許すと思っているの?」

『チャキ』

その刹那、竜の身体が一刀両断された。

「遅すぎる。」

「ギャオーーーー!」

だが、通り抜けた瞬間再生した。

「驚いたなあ。流石に全力は出してないといえ、私の刃で傷残らないなんて。ねえ、蓮はどんな感じ?勝てそう?」

「悪いがちょっと難しい感じだな。正直言ってこいつ何が何だかわけわかんねえ。なんかとりあえず体の構造見てみたが、こうして生きていること自体奇跡みたいなもんだぞ。なにせ、心臓が七つ肺が六つ脳が九つそれだけだ。身体構成する上で最低限のものは揃ってるみたいだが、正直言ってまず普通の人間だと生まれた瞬間即死だな。」

「ふーんやっぱりそうなんだ。ねえ、蓮?私今からとんでもない技ぶっ飛ばすからさ、酒呑の周り重力場みたいなもんで守ってもらえる?」

「いや、それに関してはもうとっくに終わってるよ。」

「え?蓮の能力って一度に並列行使は不可能じゃないの?」

「ああやっぱお前も、先祖の記憶持ってんのか。まあ、ちょっとばかし先祖に対して一矢むくいてやったからか新たに神業手にしちまったんだよな。」

「何それ、ズルくない?」

「ズルくねえよ、当然の権利だ。とりあえず、同時に攻撃するぞ。」

「私も手を貸そう。」

すると、坑道の奥からクラウシアが歩いてきた。

「あれ、あんた手を貸してくれんのか?」

「ああ彼には借りがあるからな。私も手を貸そう。」

「それはありがとう。お礼に、捕まえようとしたことは帳消しにしてあげる。」

「それはありがたい。正直言っていかに私とて、あなた方と相打ちになるのがやっとといったところだからな。では、『異能発動・パエトーン』」

その瞬間、クラウシアの目の前に黄金でできた戦車が出現した。

「さて、とりあえず陽動は任せるわ。」

「うん、頼んだよ。」

「承知致した。」

そういうと、クラウシアは戦車の手綱を引き駆け抜け出した。

「せいっ!」

竜の周囲を旋回しながら、斬撃を喰らわせ続ける。そしてその間に、蓮は自らの能力を解放するための詠唱を始めた。

「これなるは、汝死神が如く汝豊穣神が如くその責務を果たそう。そして、我は望む。友が安寧に暮らすことを我は望む。友が夢を果たすことを。ゆえに、我が力を友がために振るうことをここに誓う。『神業・解放ベルセポネ』」

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