四十一ノ罪 地天激動大戰㉒ 悪魔の王 爆誕
埒が明かない戦闘に童子はそろそろ嫌気がさしてきていた。
相手は水の天使。
彼が披露する水の攻撃は自分にとって相性は良いものの、吐き出した彼の水を、彼もまた、水の攻撃で打ち消そうとする。
水の掛け合いとなった二人の戦いは、辺りの炎を鎮火し、荒廃した大地は黒焦げたマグマによってコンクリートと土と砂と黒曜石が入り混じった混沌なモノへと変貌を遂げた。
自分一人の力では、この天使を打開する手立てが思いつかないことを悟った童子は、仲間の助けを借りるため他のメンバーの元へとsin僟を動かす。
その姿を見て、ガブリエルもまた童子の後を追いかけるのであった。
後を追いかけるガブリエルは後方から聖水をベルグラに向けて放つが簡単に避けられ、それでも聖水を小出しにベルグラへと放つその姿はまるで、シューティングゲームを楽しむ子供のようでもあった。
そんなガブリエルの攻撃を上手く躱し、童子は辛くも、他のメンバーと合流することが出来た。
しかし、そこにいたのは仲間達の姿だけではなく、初めて傑と共に戦った天使、ミカエルの姿もあった。
以前見た姿とどこか変化しており、その形から漂うオーラはミカエルが本気であることを感じ取るには童子にとって容易なものであった。
「童子!辿り着いたのね!アンタと戦ってた天使は?」
その言葉にハッとし、童子は我に返った。
「そ、そう!自分一人じゃ決着がつきそうになかったからみんなの力を借りようと思ってここに来たんだよ!!」
「すまないが、そういう訳には今はいかないな。」
亜久良が口を開く。
「そう……みたいだね。」
ミカエルの強烈なオーラに、童子の頬に汗が一滴流れる。
そこに、童子の後を追いかけてきたガブリエルがミカエルの元に集合した。
「クッ、天使がもう一体……。」
「ごめん。」
「気にするな!八瀬!神嶌とサタスの状態はどうだ!」
「たぶん、大丈夫だと思う!」
「そうか。」
正気を失っていた傑に変わり、亜久良がリーダーシップを突然発揮し、sin僟隊をまとめる。
その姿に、橋姫と白狐は呆然としていた。
「皆!気合いを入れろ!私達も全力を持って天使共を駆逐するぞ!」
「「「おう!(はい!)」」」
亜久良の呼びかけに、橋姫、白狐、夢魔の三名はD指数を上昇させるため己の中に宿る欲望を呼び起こす。
しかし、童子は前回の出来事がある為、なかなか行動に移せずにいた。
「大丈夫だ。安綱。貴様がもし暴れたとしてもまた私や天宇、大嶽丸に我喜屋、八瀬が全力を持って止めて見せる!だから安心して自分の中の欲望を呼び起こすんだ。」
亜久良の言葉に、童子は決心する。
以前のように、sin僟が暴走しないように、仲間の手を煩わせることの無いように、己の中に潜む暴食という欲望を再び呼び覚ます。
そして今、傑もアストとアスロトの力によって、サタスと共に正気に戻った。
「俺は一体……。」
「神嶌!目を覚ましたか!すまないが、もう一度、貴様のD指数を上昇させてくれ!」
「!」
「もし暴走をしたら、全力で私達が止めて見せる!それとも何か、制御できないのが怖いのか?」
亜久良は続ける。
「貴様は、仲間を守るためにその力を解放したんじゃないのか!だったら、仲間の事を少しは信頼したらどうなんだ!私たちは貴様の足手まといになりたくて戦っているんじゃない!貴様と共に戦う為にここに立っているのだ!」
その言葉に、傑の心は得も言われぬ感情に襲われた。
亜久良が傑に言ったその言葉は、今まで孤独だった傑にとって救いになるものだった。
「神嶌?」
「分かった!!もうどうなっても知らないからな!」
傑は己の中に宿る怒りを解放する。
機体の周りに紅い電撃が走り、機体の軋みは咆哮の様に唸る。
怒りに取り込まれそうな傑に他の面々は、声を掛け続けた。
その時だった。
天使とsin僟を挟んだ中央に大きな物体が流れ落ちた。
激しい土煙が舞い上がり、その中から灼熱の炎が姿を現す。
「嘘だろ……。」
その炎に見覚えがあった白狐は呆然とした。
自分が今持ちうる最大限の力を持って屠った相手。
その相手が今、装いを新たにsin僟隊の前へ姿を現したのだ。
焼け爛れた全身をマグマの鎧が覆い、頑強な肉体へと変化したそれは、先刻白狐が打ち倒したウリエルであった。
その姿の変貌ぶりに、傑を除く面々は気圧され傑の制御どころの騒ぎではなかった。
『〇△※!?♪☆&%#!?。』
ウリエルの自我は失われ、口から発せられるその音は言葉の意味を成していない。
『黄金の果実を食したか。』
ミカエルの言葉にガブリエルは反応した。
『え、ゼウス神が禁止にしていたあの果実を!?』
対する悪魔の使者の面々は、ウリエルの変貌ぶりに驚き未だに反応しきれていなかった。
だが、D指数を上げたことによって暴走状態に再び陥ってしまったサタスは、目の前の天使を狩る為に単独でウリエルの元へと突撃を掛けた。
が、禁断の果実を口にしたウリエルは通常時よりも強力な力を獲得しており、暴走状態のサタスでも子犬同然の扱いを受けてしまう。
「落ち着け!神嶌!意識を取り戻せ!」
亜久良の悲痛な叫びも今の傑には届く筈もない。
悪魔の怒りに飲み込まれた傑の意志は奥深くへと落ちていた。
「ええい!今まであんなに偉そうなことを言っていたのに、貴様が悪魔の意志に飲み込まれてどうする!」
亜久良はルシイドを用いて暴走するサタスの前に立ち塞がった。
だが、背後から迫るウリエルの攻撃に遭い、吹き飛ばされる。
事前にサタスの攻撃を受ける覚悟でいた亜久良はルシイドの防御力を上げていたことが功を奏し、現在のウリエルの攻撃を耐えることが出来たが、それでも内部の機械類や左腕部が起動しなくなるほどのダメージは受けてしまっていた。
それでも、亜久良はウリエルに蹂躙されるサタスを止めるべく自身が駆るルシイドをサタスにぶつける。
「目を覚ませ!貴様はこの世界を救うんじゃなかったのか!生き返るために戦っているんじゃないのか!貴様が仲間を信じないでどうする!少しは俺達を頼れ!貴様がいなくても私たちは相対してきた天使達を撤退させるところまで行けたんだ!私達七人が力を合わせれば、天使達は必ず斃せる!だから、悪魔なんかに飲み込まれるな!貴様の意志はそんなに弱くはない筈だ!目を覚ませ!神嶌傑!!」
亜久良の決死の言葉が傑に届いたのか、突如としてサタスの暴走は止まった。
瞬間、全sin僟のモニターに|S:integration《罪を統合せよ》の文字が浮かび上がり、聞き慣れた人物の声がメンバー全員の耳に届く。
「ようやく、できる様だな!待ちくたびれたぞ!」
「Dr.!一体どういうことだ!」
「君達が乗っているそのsin僟は合体することによって真の力を発揮する!」
「合体!?」
「そう、その名も‘‘ザイガ’’。《《全ての罪と全ての咎を背負った》》、悪魔の最終形態《真の姿》だ。」
「さぁ!清廉潔白なる白き獣達にその真の姿を今こそ見せるのだ!」
七機のsin僟は変形し、胸部、右腕部、左腕部、右脚部、左脚部、背部、頭部に別れ、一つの巨大なロボットが完成した。
それは、人型と呼ぶには歪な形をしており、獣と呼ぶにはどこか人のような姿をした形容しがたい姿をしていた。




