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sin僟・ザイガ  作者: HEiTO
第三章 地天激動大戰篇
34/40

三十四ノ罪 地天激動大戰⑮ 怠惰な過去

 ドンドンドン!!ドンドンドン!!




 暗闇の奥から何かを叩く音が、衝撃がこちらに伝わってくる。


 その音はやむことなく、幅450mm、奥行き500mm、高さ1700mmの空間に響き渡る。


 少年が何度も‘‘やめて!!’’と声を荒げようともその声をかき消すかのように扉を殴る音が続く。




 少年の精神はすり減り、時間は5分、10分と流れ、それは少年にとって永遠と言えるほど長く感じるものだった。


 


 怠惰のパイロットである八瀬三吉はいじめられっ子だった。




 小学校三年生から彼はいじめの標的となり、毎日毎日学校に来るたびに掃除用具入れの中に閉じ込められては、箱ごと殴られる日々を送っていた。


 その為、後天的に閉所恐怖症クロストロフォビア、並びに暗所恐怖症ニクトフォビアを発症してしまった。




 それでも、sin僟のパイロットとしてあの狭い空間で戦うことが出来たのは、学校という隔離された密室から脱却し、自分の部屋という自由な空間で過ごしてきたことで、その記憶も薄まってきたからであり、モニターの画面に映し出される外の光景を見ることで、密室である感覚を忘れさせてくれたからでもあった。




 しかし、そんな彼だったが、今再び天使によって生み出された化け物によってその過去が掘り返された。


 


 迫りくる天獸の進化態である神獸。




 ソレに囲まれた三吉は蹲り、耳を塞ぐ。




「やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて」




 奴らの楽しそうな顔が、声が耳を塞いでも尚、聴こえてくる気がした。


 忘れたはずの顔、消えかかっていた感触、その全てが、霧が晴れるように鮮明に蘇る。


 三吉の表情はいつものクールなモノとは違い、そこにいるのは、年相応の幼さを残した当時の虐められていた少年を彷彿とさせるようなものだった。




 呼吸は荒れ、必死に目を閉じようとするが栓が外れたように一気に涙が溢れだす。


 涎は垂れ、鼻水も治まることを知らない。




 もうそこには、皆が知っている三吉の面影はどこにもなかった。




***




「おい、八瀬!お前次の時間、こん中入ってろよ」




「え?」




「え?じゃねぇよ。テメーは黙って入ってりゃいいんだよ」




 元々、陰険な顔つきであったが故に目を付けられクラスのカースト上位の男子グループによって虐められていた。


 担任も、わざとなのか存在感の薄い生徒であったが故に気づかなかったのか、丸々一時間、いや一日狭い箱に入れられていた三吉に気づくことなどなかった。


 彼が「死にたい」などの言葉を口癖のように言い始めたのもこの時期からであった。




 やがて、三吉は学校に通うことは少なくなり、そのまま自分の部屋で過ごすこととなる。


 その時に初めてゲームの楽しさを知り、彼のこれまでの人生が生まれ変わるように変わった。


 TVという狭い箱庭で自由にキャラクターが移動し、暴れまわる。


 自分が操作するキャラクターは強く、皆から信頼され世界は自分中心に動く。




 それは、これまで彼が今まで成し得なかったその全てが詰まっていた。


 夢のような作品たちに彼は胸を躍らせ、朝昼晩と寝る暇も惜しみゲームをする日々に空き暮れた。




 家族はそんな彼を学校に行かせるべきではないのかと心配してはいたが、通っていた頃との顔つきの違いに言い出せず、彼が欲するモノ全てを買い与えていた。


 一年が経ち、二年が経ち、気が付けば周りの同級生は高校一年生、三吉は学校に通うことも無く16歳を迎えていた。


 ゲームの腕前は既にプロ級に達し、初見のゲームでも一度もGAMEOVERになることなくクリアする程の実力を有していた。


 


 しかし、彼はそれでもプロゲーマーという道には行かず、狭い箱庭で自分のキャラクターを自由気ままに動かし、生活していた。


 


 そんなある日、当時大人気だったゲームソフトが入っていることに期待して、家電量販店に向かいガジェットの福袋を買い求め、渋谷を訪れた年の瀬。


 彼は出会ってしまう。


 あの残酷な日に。




 たまたま、気分転換も兼ねて外の空気を吸おうと買い物に出かけた三吉を待ち受けていたのは天使による虐殺であった。


 


 眼を開けると蠢く肉壁にどす黒い空間。


 周りには見知らぬ人々が困惑した表情で群がり、自分も自身の身に何が起こったのかを必死で考える。


 その中で思わず向けた視線の先に一つの影が映る。


 それは老婆のような姿をした異形であった。




 異形な姿をした者は言った。


 


「私の名はDr.アンフェール。この地獄の住人にして研究者だ。とりあえず、これを見てほしい。」




 アンフェールと名乗る悪魔は、肉壁に東京の悲惨な現状を映し出す。


 そこに映るのは天獸と呼ばれる化け物が街を破壊しつくす映像であった。


 当然、そんな映像を見たところで三吉にここが地獄で、自分は死んだなんて自覚は無かった。




 早く夢から目覚めないか、もしくは早く家に帰りたいなというような思考しか浮かんでいなかった。


 悪魔の説明はうわの空で、一人、ずっとどうやって家に帰るかということしか彼は考えていなかった。




 アンフェールと一人の青年が闇の奥へ消えて行こうが、彼はその場で動かず、四人組の男女がその後を追いかけようがそれでも彼は動かなかった。


 彼がその場に着いたのはただのまぐれ。


 変わらない空間に飽き飽きし、別の場所を探して辿り着いた先がそこであった。




 そこに居たのは、五人の男女と一人の悪魔。


 彼は決意する。


 この退屈な空間から抜け出すため。


 自身の安寧の地へと還るため。


 この鬱屈した世界とおさらばするために。



三十四話読了ありがとうございます!

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