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11 レンデルの村

 気づいてしまった事実に思わず叫んで、小さく頭を抱えた。


 「………うぅ………以前の一人旅の時に気付いて治したのに…………これも独り言……………」


 虚しい事実に(しば)し、(もだ)える。



 どのくらいそうしていたのか、小さなノック音で正気に戻る。頭を抱えた姿勢のままドアに視線を向けると、もう一度小さく二回鳴った。

 覚えのある気配に誰が来たのか分かったので、立ち上がりフードを目深に被りながらドアに向かい返事をする。すると外から、若い女性の声がした。

 ドアを開けると、二十代前半の女性が立っていた。


 「あっ、起きられていましたか?」

 「………少し前には」

 「良かった。なかなかお見えにならないからどうしたのかと。申し遅れました。私は村長の娘のニーノです」


 人懐っこい笑顔でペコリと頭を下げて挨拶をする彼女に、瑠華もつられて挨拶を返す。


 「僕はルカといいます。大分疲れていたみたいで、こんな時間になってしまって。これから挨拶に行きたいんだけど、村長は家にいます?」

 「はい、ご案内しますね」

 「少し待って下さい。着替えてきます」


 ドアを閉めて、アイテムボックスから簡素な黒いシャツとズボンを取り出し着替える。昨日着ていたローブを仕舞って、淡い藍色のローブを取り出し羽織る。

 可笑しなところがないか確認してから、フードを目深に被り空き家を出て、ドアの前で待っていてくれたニーノに会釈をした。


 「すみません、お待たせしました」

 「いいえ、それでは行きましょう」


 彼女の案内で、村の奥に向かっていく。道すがら見かける村人は、少し警戒心を含む視線を向けてくる。村の位置的に旅人が余り寄らないせいもあってよそ者が珍しいし、この国の人間の価値観がこんな感じだ。

 以前と変わらない様子に苦笑が漏れる。


 「どうかなさいましたか?」

 「いや…………」


 笑ったのが不思議だったのだろう。ニーノが肩越しに振り返り聞いてきた。


 「そういえば僕が言うのもどうかと思うけれど、男の元に女性一人で来るのは危ないと思うよ?」

 「あっ、それもそうですね。ふふふ」


 危機感が全くない笑みに脱力したくなった。楽しそうに笑う彼女を見ながら歩いていくと、他よりは比較的大きい家に辿り着く。

 そのままドアを開け入っていく彼女に続く。入ってすぐの部屋の中央にある机に、初老にさしかかった男性が穏やかな笑みを浮かべ座っていた。ニーノは彼の後ろに控えるように立った。

 その人は瑠華を見て笑みを深める。


 「ようこそ、レンデルの村へ。旅人殿」

 「村長さんですね。申し訳ない。本来こちらから出向かなければならなかったのに、寝過ごしてしまって」

 「構いませんよ、夜遅くに来たのは聞いていたので。この村にはなにもありませんが、どうぞゆっくりしていって下さい」

 「ありがとうございます。お言葉に甘えて後一日だけ休ませて頂きます」


 失礼だと思うが、フードを被ったまま頭を下げて礼をする。


 「ねぇねぇ、旅人さん!旅人さんはいろんなところを旅してきたの⁉お話聞かせて!」

 「これ!ニーノ!」


 ニーノが先程までのおしとやかさはどこへやら、好奇心が抑えきれない様子で、机に手を置き前のめりになって聞いてきた。村長が咎めるように名を呼ぶが、聞いていない。

 その様子に思わず口元が緩む。




 レンデルには、【カイン】であった頃、二度ほど来たことがある。その時と村も、歳を重ねた村長も大人になっていたニーノもあまり変わっていない。

 ニーノは村の外に出たことがないから、外の世界に興味があり、たまに旅人や冒険者が来ると外の世界の話を聞こうとする。以前来た時も、少しだけ話をしていた。


 ここはとても素朴な村だ。この国の首都とは大違いである。

 この国では、平民の命は軽く見られがちだ。身分と権力がはっきりしていて、貴族に逆らって殺されたなんてよくある話。

 平民でそうなのだから、旅人や冒険者はもっと悪い。遠まきに見られたり陰口を叩かれたり、店では冷たくあしらわれたりなど。首都を中心に扱いは酷いものだった。

 けれど地方、隣の国との国境近くの村などはその定かではない。この村のように、普通に受け入れてくれる場合がある。この国では村長やニーノのような人は、変わり者の部類に入ってしまうが。

 それに、最初に対応した男の言葉は少し意外だった。他の街なら普通に“殺す”って言われるのに、“捕らえる”って言われたから。


 そしてこの国の最大の特徴は、実力主義だということ。強者は厚待遇される。だから自分の力に自信のある者はこの国に来て名を上げるのだ。

 力さえ示せばどんな欲望も叶えられる、ここはそんな国。



 閑話休題。



 「すまない、まだ休みたいから話はまたいつか」


 ニーノには悪いが、今回は諦めてもらおう。ステータスとアイテムボックスの確認をしたいし。


 正直、激しく面倒くさいし…………。


 「では失礼します。明日の朝には村を出ますので」

 「娘が失礼しました。なにも出来ませんが、せめてゆっくりしていって下さいね」


 軽く会釈をし、村長宅を後にした。



 遠巻きに見られながら空き家に戻り、換気のために窓を開けてからベッドに腰かける。古くさいテーブルがあるが、力を入れたら壊れそうだったからベッドを選んだ。

 昨日は夜だったし疲れていたから気にしなかったが、この家外から見ても相当ボロかった。もう何年も人は住んでいないのだろう。



 まぁそれは置いといて、先ずはステータスから。


 ちなみに、ステータスは魔力が無くても見られる。生まれながらの能力(スキル)と言えばいいか、“ステータスオープン”と唱えると目の前に自分しか見えない半透明の四角い画面が表れる。決して人には見えない。

 人に見せる場合などは、身分証とかギルドカードにステータスが写し出せるからそれを見せる。滅多にやる者はいないけれど。

 ステータスは己にとって、命と同じものだから。

 どんなに信用がある相手にも、ステータスは見せない。両親や愛する人にも。

 この世界で“ステータスを見せる”ということは、とても大事な意味を持つ。だから常識ある者は、軽々しく「見せて」なんて言わない。そんなことを言えば、相手に不快感と不信感を与えるだけだ。「自分は愚かだ」と言っているのも同意。

 だからステータスを見せるのは、本当に心から信頼している相手でなければ、見せることはない。


 【カイン】は勇者と聖女には自らのステータスを見せ、また二人のステータスを見せてもらっていた。時折お互いに見せ合いっこしていたくらいだ。






 なにもない(くう)を見つめ、静かに呟く。


 「ステータスオープン」



 名前 ルカ・ロッカザキ

 年齢 17

 レベル 278

 職業 無職(笑)

 HP SSS(緑)  MP SSS(緑)

 筋力 SSS(緑)

 体力 SSS(緑)

 知性 SSS(緑)

 精神 SSS(緑)

 敏捷 SSS(緑)

 器用 SSS(緑)

 属性 全属性 無(重力、空間、結界、召喚、隷、生活)

 固有魔法 浄化と再生の光―ディパインハーモニー―

 魔眼 魔導の魔眼 能力 魔力を吸収、蓄積、譲渡、干渉する


 スキル 共通言語理解 完全解析 完全隠蔽 剣技 格闘技 気技 武功技 戦闘技 神託 完全状態異常耐性 調合 限界突破 料理 貴族作法 


 称号 『異世界の者』『世界に絶望を抱く者』『英雄と呼ばれる者』『勇者(爆笑)』『世界の救世主・英雄篇』『神々の寵児』『唯一無二の勇者の友』『創造神の神官』『剣神』『剣憐(けんれん)』『気を操る者』『格闘術超越者』『調合を極めし者』『あらゆる武器の申し子』『魔眼覚醒者』『魔と契約せし者』『冷酷な鬼畜英雄』『冒険者を極めし者』『ダンジョン攻略者』『“無”のダンジョンに名を刻みし者』『魔法殺し』『天然たらし(対象なんでもあり)』『ハーレム野郎(願望)』『家事・料理篇』『血狂い』


 加護 創造神セラフィミリムの加護

    一三柱の神の加護

    風の精霊王の加護

    雷の精霊王の加護


 状態 良好













 「待てぇぇぇぇぇぇぇい‼」


 英雄の、心からの叫びが空き家に響いた。







   

読んで頂いてありがとうございました。

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