第一話「解雇された聖職者と黒騎士」
ルーツ王国のギルド集会所に一人の女性が入ってきた。彼女の名はマリーナ。聖職者として、とあるパーティーに所属しているが、今日はそのパーティーのリーダーに大事な話があると言われて一足先に集会所に来ていたのだ。
「少し早く来すぎたかしら? 」
マリーナは、集会所の椅子に腰掛けると辺りを見渡す。すると、見慣れた顔が走ってきた。
「マリーナさん!」
「あら、デューク君じゃない。あなたも早めに来たの?」
デュークと呼ばれた、風変わりの装束の若者はマリーナと同じパーティーの呪術師だった。元々沼地の森に居た彼は、偶然沼地に来たパーティーのリーダーに火の呪術を見せると、力を認められてパーティーに加わったのだった。
「はい!大事な話と言うので早めに来たんですが、マリーナさんもですか?」
「ええ。私もよ。」
二人は顔を見合わせると、嬉しそうに微笑んだ。
「それにしても大事な話って何でしょうか?もしかして誰も見つけてない大ボスが潜むダンジョンを見つけたとか!」
「ええ……」
想像してワクワクするデュークとは逆にマリーナは浮かない顔をしていた。
「マリーナさん?」
「あ、ごめんなさい。ただそうだとしてもいきなりそこに行くってならないと良いのだけれど…」
マリーナは二の腕を揉みながら話した。
「私今年で40歳よ?デューク君みたいに速く走れる訳じゃないし、体力は回復できても、昔みたいにスタミナもあるわけじゃないし……」
「大丈夫ですよ!彼は俺たちのことをちゃんと考えてくれますから!」
不安を口にしたマリーナにデュークが笑顔で励ました。
「だとしても年齢的にきついことが増えてきたし、いつ解雇を言い渡されるか不安よ……」
「いやいやマリーナさんに限ってそれはないですって!」
「そんなこと言われたって…」
「マリーナさんは人が生み出したあらゆる聖なる魔法に回復魔法、更には蘇生魔法までも会得している、唯一無二の聖者なんですから!彼もマリーナさんを手放すなんて愚断はしませんよ!」
「そうかしら…?」
「そうですよ!だからそんなに落ち込まないでください!」
「うん…そうよね。ありがとうデューク君。」
マリーナはニッコリ微笑んでいると、集会所の入り口の方が何やら騒がしかった。
「ハイラルドだ!」
「勇者ハイラルドが来たぞ!」
他の冒険者から熱い視線を受けながら入ってきた茶髪の青年が、マリーナのパーティーのリーダーである勇者ハイラルドだった。ハイラルドの後ろには同じメンバーの弓手のムースと知らない冒険者も一人いた。
「ハイラルド!遅い到着だったな。」
デュークがハイラルドに声をかけると、ハイラルドはにっこり笑った。
「ごめん。新しい仲間と彼女を呼びに行くのに手間取っちゃってさ。」
「ねー!」とハイラルドの肩に手を添えるムース。この二人はマリーナが20代の頃から仲が良く、二人は二十歳になった頃から付き合っている。マリーナはそんな二人を優しい目で見ていた。
「ところでハイラルド。そっちの子は?」
「ああ。紹介するよ。新しくパーティーメンバーの聖職者になる、リンデリカだ。」
リンデリカと呼ばれた少女は「よろしくお願いいたします。」と一礼をした。するとデュークが「ちょっと待てよ。」と意見した。
「聖職者なら、マリーナさんが居るだろ?今さら他に必要なのかよ?」
「大丈夫。人数整理も兼ねてだから。」
そう言うとハイラルドはマリーナの方に向いた。
「聖職者マリーナ。あなたを本日限りで、解雇します。」
「……え?」
突然の発言に驚いて固まるマリーナ。いつかは言われるのではないかと思っていたが、まさか今日のこの時だと思ってなかった為、衝撃的だった。
「ちょっ!ちょっと待ってくれよハイラルド!」
真っ先に声をあげたのはデュークだった。
「マリーナさんを追い出すって、どういうことなんだよ⁉ 」
「そのままの意味だよ。彼女の代わりに僕と同い年の聖職者を加入させる」
「けど! 」
「だって考えてみなよ。これからレベルアップの激しいダンジョンへ行くとなると聖職者も強い力を持っていた方がいいだろう?彼女はマリーナさんに近い実力の持ち主なんだ。」
「たけどそれじゃ解雇の理由には……!」
「それに何よりも彼女は若い。つまりまだ成長する伸び代があるということ。これからを期待できる人材をパーティーに入れたいんだ。」
「なっ……! 」
自分勝手過ぎるハイラルドの発言にデュークは呆れて言葉が出てこなかった。
「そう……私はもう要らないのね……」
マリーナは俯きながらポツリと呟いた。
「あなたの実力や最初の頃からお世話に考えると凄く悩んだ。だけど、これから高難易度のダンジョンにも行くとなると、やっぱり同じくらい同等の実力で元気な人材が欲しくて……」
「何より辛気臭いおばさんは要らなから。ねー!」
ムースはハイラルドに引っ付いていた。
「お前ら!」
デュークは抗議しようとしたものの、マリーナはそれを止めた。
「分かったわ。勇者のあなたが決めた事なのなら、私はそれを受け入れる。」
マリーナはゆっくり立ち上がり、一度皆の顔を見る。ハイラルドは真っ直ぐな目をしている。ムースは相変わらずいたずら気質なにやけ顔をしていた。唯一デュークだけが、納得できない顔をしていた。
「俺は……こんなの納得できません。」
悔しさを押し殺すように拳を握り締める。
「あなたは今まで何度も俺たちの命を救ってくれたのに。そんな人を年齢だけで切り捨てるなんて……」
「デューク君。」
マリーナは静かに首を横へ振った。
「あなたはまだ若いもの。私なんかのために、自分の未来を捨てる必要はないわ。」
マリーナはいつもの優しい笑みを浮かべた。
「私は大丈夫。だからあなたは、あなたの道を歩んで。」
デュークは唇を噛み締めたまま俯く。だがその笑顔を見てしまうと、何も言えなかった。そして自分の荷物を持つと、マリーナは「長い間ありがとう。」と言って微笑み集会所を後にした。
「デュークもあんなおばさんに気にかける必要ないんだよ?辛気臭いのが移るから!」
馬鹿にするように笑うムースを、デュークは冷ややかな目で見る。だがハイラルドが二人の間に入った。
「ま、まぁとにかくこれで新体制のパーティーになったんだ!これからも頑張ろう!」
「「オー!!」」
ハイラルドの意気込みに声を上げるデューク以外のパーティーメンバー。こうして勇者パーティーから最強の聖職者が抜けたのだった。
◇
「はあ…これからどうしましょう?」
集会所を出て、城下町の街道のベンチにマリーナは座っていた。
「こんなあっさりとした形で別れることになるなんて思わなかったわ……」
マリーナがハイラルド達とパーティーを組んだのはマリーナが25歳の時だった。その頃のハイラルドは冒険者になったばかりの10代の少年で、怖がりでいつもマリーナの背中から離れなかった。しかし段々と成長していくにつれて全線に立つようになり、気づけば勇者として人々から尊敬される人間にまでなった。それまでの過程もマリーナはずっと見守ってきた。それだけに急に解雇されたのが、今でも信じられなかった。
「あの子達を支えてきたこの15年間は、一体何だったのかしら……」
思わず涙が出てしまうマリーナ。通行人からの「良い歳してこの人は何泣いてるんだ?」という冷たい目線が通りすぎていたが、今のマリーナは悲しみでいっぱいだった。しかしいつまでも悲しんでいてもしょうがないという自分もいた。
(このまま町に居ても仕方ないわよね。)
気持ちを切り替えたマリーナはベンチから立ち上がる。
「久しぶりに、教会の皆に会いに行こうかしら?」
かつてハイラルド達と旅立つ前に住んでいた教会を思い出したマリーナは、久しぶりに寄るのも悪くはないと思い、街道を歩き始めた。そして向かった先は馬車を手配してくれる事務所。そこで北の街行きの馬車を頼んだ。ところが、主任も他の店番も浮かない顔をしていた。
「主任、どうしましょう?」
店番が聞くと、主任がマリーナの前に出てきた。
「北の街に行くのであればレベル50以上の人をあと一人連れてきてください。あの街に行く為に通る森には、最近強力な魔物が出現するようになっていて、一人で行くことをギルドが禁じているんですよ。」
「あらまあ……」
困ってしまった。よりにもよってクビになって一人になった矢先にその規制のタイミングで行こうとするとは……
「もし他に同行者が見つからなければ出発は無理ですね。」
「分かりました」
そしてマリーナは城下町へと引き返した。
「レベル50以上かぁ…この町は冒険者達の入門とも言える所だからそんな人が居るかどうか……」
マリーナがボヤいているとある事を思い出した。
「そうだ。ギルドに何かクエストとか…」
無差別にパーティーが組めるギルドのクエストに、森の魔物討伐が無いか、マリーナは早速集会所へと向かうのだった。
◇
「……」
集会所内の酒場で一人麦酒を飲む男が居た。黒く堅牢な鎧に身を包み、胴鎧には勲章が付けられており、その風貌は騎士団に居そうな感じだが、本人はどこかやるせなさが滲み出ていた。それもそのはずこの男、今日の朝に騎士団の長からお役目御免を告げられてしまったのだ。彼が無能だっからとか何かしらの全科が付いたわけではない。彼が叱った若い騎士が彼からパワハラを受けたと騎士団長に報告したのだ。彼の同期や先輩騎士はそんなことは無かったと抗議してくれたが、なぜかそれも揉み消され、結果解雇を言い渡されたのだ。解雇理由に納得が出来なかった騎士は騎士になってから飲むことが無かった酒を飲んでいたのだ。
(こんなことしてても虚しいだけなのは分かっている。しばらくはクエストを受けながら違う生き方を探そう……)
騎士は酒場を後にすると集会所のクエスト受付口に向かった。
「あら、レオン様!」
受付係のミーロが明るく挨拶してきた。
「今日は騎士団の皆さんは居られないんですか?」
「……俺一人だ」
「あ、あれ……?レオン様が一人ですか?」
騎士団専用のクエスト依頼をする時も一人で受け付けに来てはいるが、いつも数人の騎士団員と行動していた。しかし今日はここに来る前から解雇になっているので、騎士は他に居なかった。
「簡単な話、クビになった。」
「え⁉ 」
ショックを隠しきれないミーロ。彼女はレオンが騎士団最高クラスの騎士だとよく知っているだけあって、彼がクビになるとは思いもしなかった。
「レオン様がですか……?」
「俺がクビになって意外か?」
「いえそういうわけでは……」
「まあいい。とりあえず生活費を稼がなきゃいけないからな。何かクエストはあるか?」
「なるほど。でもタイミングが悪かったですねぇ…」
そう言うとミーロはクエスト票を見せてきた。
「騎士団の皆さんが午前中の内に近辺のクエストをほとんど達成してしまって、今すぐ受けれるもので残ってるのはこれだけなんですよ。」
そう言ってミーロが見せてきたのは森の魔物討伐だった。内容は北の街に繋がる森に強力な魔物が住み着いて、その魔物が原因で行商人や冒険者などが被害に遭っているので駆除をしてほしいというものだった。
「推奨レベルは50以上か。それにしても騎士団はよくこのクエストを受けなかったな。俺がクビになる前はこういうのもどんどん引き受けてたぞ。」
「人の暮らしにかなり影響が出ますから私も紹介したのですが、騎士団は方針が変わったのか依頼者が貴族や王家のクエストしか受けてくれなくなったんですよ。」
(あいつ、そこまでわがままを通してるのかよ…)
自分が叱った若い騎士を思い出したレオンは心の中で呆れていた。
「分かった。そのクエストを引き受けよう。」
「ありがとうございます。レベル80もあるレオン様が引き受けてくれるなら周辺の人々も安心でしょう。」
受注書類にサインをし終えたレオンは受注者の項目が目に入った。
「一人分の印が付いているが、俺以外にも誰か受けたのか?」
「はい。このクエストは最低でもレベル50以上の方二人で行くことが条件で、聖職者が一人受けて今、待合所に居ると思いますよ。」
「分かった。」
そして正式にクエストを受注したレオンは待合所へと向かった。
(聖職者ねぇ……聖職者の人間とは何回か一緒に仕事したことがあるが、その大体が聖職とは裏腹の性根が腐った連中ばっかりだったからなぁ……)
レオンは過去にクエストに行った時に何回か聖職者と同行することがあった。しかしその大半が献金を集る聖職者ばかりで正直ウンザリしていた。
(まあ今回も似たような奴だろうなぁ)
半分諦めていたレオンの予想を覆す人物が今回の同行者だった。
「すまない。このクエストを共に受注している聖職者が居ると聞いたのだが。」
レオンは待合所に入ると同行者であろう人物に声を掛けた。声をかけられた金髪の女性はレオンの方を振り返った。
「あら。あなたもあのクエストを受注なさったの?」
振り返ってレオンを目にすると女性はすぐに立ち上がった。
「ああ。レオンだ。」
「レオン様ですね。よろしくお願いいたします。私は聖職者のマリーナと言います」
マリーナは恭しく礼をした。
「準備が出来次第出発するが、大丈夫か?」
「はい。問題ありませんわ。」
そしてレオンとマリーナの二人は町の外にある北の街への道に繋がる森へと向かった。
◇
「そういえばレオン様はどうしてこのクエストに?」
道中でマリーナが質問してきた。
「ああ。昨日クビを言い渡されてな。生活費を稼ぐために受けた。」
「そうなんですね……」
何やら深刻そうに聞いているマリーナ。
「そう言うあんたは?」
今度はレオンから尋ねた。するとマリーナは寂しそうに微笑んだ。
「私もある事情からパーティーをクビになってしまって……」
マリーナは自分の事情を包み隠さずに説明するとレオンは同情した。自分と歳が近いというのもあってなおさらだった。
「災難だったな。」
「良いんです。いつかは来るかもしれない覚悟はしていたので。それにこれは神が与えた試練だと思って今度は私の力だけで生きてみようと決めたんです。それで一度故郷に戻ろうと思ったら、一人では通過出来ないと言われてこのクエストを……」
(噂で聞いていたあの勇者がな……やっぱどこも事情は似たようなものか。)
レオンは彼女の芯の強さと健気さに感心した。レオンが今まで見てきた聖職者の中でここまで自分に対してしっかり向き合い、真面目に取り組んでいる人は初めて見た。そんなレオンの表情を察してかマリーナが申し訳なく思ったのか謝罪した。
「すみません。暗い話を聞かせてしまって……」
「いや。気にするな。」
お互いに自己紹介を済ませた二人は森の中へと入って行った。奥へと進んでいくにつれて森は薄暗くなり不気味な雰囲気を醸し出してきた。
「変ですね。いつもはこんなに暗くなかったですのに……」
「出現した例の魔物の仕業かもな。警戒を解くんじゃないぞ。」
「ええ。」
レオンに念押しされたマリーナは神経を研ぎ澄ました。
すると近くで微かに動く音がした。
(誰か居る……)
感知魔法を使用していたマリーナは木々の間を何かが駆けている気配を感知した。
「レオン殿。魔物はおそらく獣です。茂や木の間を注意してください。」
マリーナはレオンに警告した。
「心得た。」
レオンはマリーナに指示に従い魔物が飛びかかってくる方向を予測した。
「グオォォォ!」
鋭い爪を持った四足獣がレオン目掛けて飛びかかってきた。瞬時に鎧の右肩を前に突き出し防御態勢に入ったレオンは魔物の攻撃を防いだ。爪の一撃が重く鎧の肩に傷跡を付けるとレオンは隙をついてハンマーで魔物を殴り飛ばした。吹き飛ばされた魔物は木にぶつかって倒れた。魔物は狼のような見た目をしていたが、通常の狼よりも大きく毛も少し赤い色をしていた。また爪や牙も通常種とは違って非常に大きくて凶暴に見えている。
「これが例の……」
レオンが驚愕しているとマリーナが魔物を見て言った。
「アラミッドウルフ……!」
「知ってるのか?」
「はい。かつて私が勇者達と共に倒した魔物です。けど勇者達と倒したのはもっと体格がありました。これはきっとあのアラミッドウルフの近くに居た幼体かと!」
「大きくなったから親の縄張りを離れて、ここに居着いたわけか。」
「おそらく。」
話しているとアラミッドウルフが起き上がり雄叫びを上げた。
「ウォーン!!」
「マリーナ!」
雄叫びを上げたアラミッドウルフは真っ先にマリーナに突進してきた。距離的に避けるのは困難だったが、マリーナは瞬時にアラミッドウルフの背後に瞬間移動した。アラミッドウルフはマリーナを探していたがレオンは好機と見て動き出した。
「はあぁぁぁ!」
ハンマーを振りかざしたレオンはアラミッドウルフの頭に叩き込んだ。重い一撃にアラミッドウルフは苦悶の表情を浮かべた。続けてレオンはハンマーを縦に回してかち上げを連発したが、アラミッドウルフはそれでも倒れる様子を見せなかった。
「くそっ、火力が足りねえのか?」
「レオン殿!強化は任せてください!」
マリーナは詠唱を始めていた。
「レオン殿に神のご加護を!ウエポン・エンハンス!」
マリーナが唱えるとレオンのハンマーが光輝き始めた。それは以前勇者達に使用していた武器を限界まで強化のする魔法だ。
「力が漲ってくる……!」
「今のうちに!」
「おう!」
強化の効果でレオンはハンマーを大きく振りかぶるとアラミッドウルフ目掛けて振り下ろした。
「おおおぉぉぉ!!」
レオンの一撃が決まるとアラミッドウルフは絶命して横たわった。
「ふぅ……!」
緊張を解いて安堵したレオン。そこにマリーナが駆けつけた。
「お疲れ様でした。」
「ああ。あんたのおかげだ。」
マリーナの援護にレオンはお礼を言った。
◇
城下町に戻ったレオンとマリーナは集会所に行き、クエスト達成報酬を受け取った後、酒場にてお互いの功績を労った。
「乾杯。」
グラスを当てて一口飲み干したレオンとマリーナ。その後レオンはマリーナに感謝を述べた。
「改めて礼を言う。今日は助かった。」
「こちらこそありがとうございます。これで明日安心して北の街に行くことが出来ます。」
マリーナは微笑みながらお礼を述べるとレオンは照れて頭を掻いた。
(本当にこの人は、性格の良いな。)
レオンは今まで出会ってきた聖職者と違って素直に礼を述べたりするマリーナに感心していた。
「レオン殿はこれからどうやって過ごすか決めていらっしゃるのですか?」
マリーナが質問してきた。レオンは少し考えていた。
「もう騎士ではないからな。しばらくは冒険者として日銭を稼ぎながら次の生き方を探すつもりだったが、この調子ならばこのまま冒険者を生業にしてもいいかもしれないな。」
「そうですか……」
何やら寂しそうにマリーナは俯いた。
「どうかしたか?」
「あ、いえ……あの!」
急にマリーナは席を立ち上がった。レオンは何事かと思い少し動揺しているとマリーナは緊張しながらレオンに提案した。
「私と……パーティーを組んでくれませんか?」
「……は?」
突然の言葉にレオンは目を丸くした。相手も強敵だったが、レオンの騎士の実力とマリーナの強力な補助魔法によって見事に討伐できた。それは互いに感じていたことであり、レオン自身は特に気にしていなかった。しかしどういうわけかマリーナはレオンに共に戦う仲間になって欲しいとお願いしたのだった。普通は今日あった人とすぐにパーティーを組むことなんてありえない。しかし酒で酔っているのかマリーナは話を続けた。
「今日ご一緒して思いました。レオン殿となら上手くやっていけると思うんです!ですから……!」
「ふむ……」
マリーナの提案を聞いてレオンは顎を擦った。
(正直言って悪い話ではない。元騎士としては今後の参考にもなるし、それにマリーナとは一緒に仕事が出来ると感じている。けどこんな初対面の人に言ってもいいものなのか?)
「は!」
レオンは考える素振りをしていると、酔いが覚めてハッとしたマリーナは恐縮した。
「も、申し訳ありません!急に言われても戸惑いますよね⁉ すみませんつい酔った勢いで……!」
何度もレオンに謝るマリーナだったがレオンは冷静にマリーナの言った意味を考えた。
「あんたの気持ちはよく分かる。あんたも突然解雇されて不安だったんだろう。俺も同じだ。だが今はお互いにクエストをこなせる仲間が必要なことも確かだ。」
レオンはマリーナに握手を求めた。
「俺で良ければ、共にやっていこう。」
「レ、レオン殿……」
マリーナはレオンの提案に喜んで応じた。
「はい!」
こうして実力者二人のパーティーが結成された。




