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王城へ

「お、お父様とお母様の話は……その――」

「え? ああ話半分に聞いてるから心配しなくていいよ」

「へ? そういえばレノってそういう奴よね」


 謁見を終えて普通に学校の庭を歩きながら会話を続ける二人。

 最初は明らかにうろたえていたティアだがレノは平常運転に戻っていた。


 ――仮に庇護を受けたからって、大問題だったが、なんとかなるだろう。孤児院に来る件は、まあ“両親”は問題ないだろうし、施設としては問題ない。例え王族が調べても“義賊アッシェ”は勿論レノアール・ザフィーア・シュミットについては判らない、そうシュミット家については完全に全ての出来事は闇の中だ。


 そこまで考えてレノはもう落ち着いている。唯一つ予想外だった事。彼が何としても避けたいのは王城への登城というイベントだった。


 ――遊びにお出でではないだろう。そこは一般家庭じゃねえよ。


 彼は心の中で悪態をつくことで心の平静を保っていた。



 そしてティアは……


 ――でも、りょ、両親にレノを紹介出来てしまいました、どうしましょう、お父様もお母様も好印象だったわ、このまま結婚? いえその前に婚約ですわ、騎士じゃなくてもこれなら?


 乙女脳へと突入していた。


 ――そうよ、今度は王城……私の部屋? 部屋に呼ぶの!?


「レノ、楽しみね、ああ良かった」

 いつも以上に上機嫌なティアを見てもレノは優勝した事で鼻が高いのか、両親に会ったことで気を良くしていると勘違いした。

「え? そうだな良かったよ」

「エヘヘ」


 そして翌日。

 一通の招待状を携えた王城からの遣いが孤児院へと訪れレノは頭を抱える事になった。


『これは私的な招待なのだがな、国王とは不自由なので大仰になるのを許して欲しい――』

 そんな言葉から始まった国王陛下からの招待状、其処には『娘から聞いたぞ、楽しみにしていてくれて嬉しく思う』と書いてあり、そして『是非とも来週の休日に遊びにおいで、妻と共に楽しみに待っている』と締めくくられていた。


 レノは膝から崩れ落ち、失意体前屈から暫く立ち直れなかった。

 レノがそこから学んだのはティアには、いや女性には迂闊に生返事してはいけないという事だった。

 一つ間違えば、いやかなり現状でも危ういが、婚約者などにされかねない状態だった。


 ただ、王城へ忍び込むのも難しくはないし、その必要も今は無いが、見学出来るなら何時か役に立つこともありえるかもと考えるようにしてレノは立ち直った。




 訪れた運命の日。

 大層な表現だがレノにとっては虎穴に入るに等しい行為である。

 王妃が気がついたならば他にも気がつく人物がいないとも限らない、さらに王妃がどうする心算なのか、それが全く持って判らない。

 あの場で何も告げなかったと云う事は見て見ぬ振りをするのか、それとも――

 そしてレノがこうして登城する事を快く思っていない人物が二人は確実にいる。

 用心に用心を重ね、レノは城へと赴いた。


 ティアにとって誰か男性を招くという行為は初めてだった。

 茶会やパーティなど多数あれどそれとは意味が違う。親友という立場で遊びにくるとすればクリスぐらいなもの、後は城勤めの者ばかりである。

 ティアにとっての男性の友人はレノだけだった。そしてそれ以上に想っている相手だ。それもかれこれ2年以上だ……

 ティアは朝から10回以上も服を着て鏡の前に立っては違うと着替えを繰り返していた。

 そこで騎士服にならなかったのは侍女が優秀だったからである。


「殿下――失礼ですがその服装は有り得ません」

「え? でもアンネいつもレノとはもっとラフな――」

「はい、ですからこそ、こちらのドレスをお勧めするので御座います」

 侍女アンネの掲げているのは非常にシックな落ち着いたイメージのドレスだった。

 ティアからすればちょっと大人しすぎないかしらという一品である。


「そんなドレスだと動きにくいわ」

「失礼しますね――ティア……貴女レノ様に恋してるのでしょう?」

「え、ええ」

「なら相手を惚れさせる努力をなさい!」

「ハッ!」


 侍女といえど伯爵令嬢だった人物でありたった一度の夜会で現在の夫を捕まえたアンネの指摘は鋭かった。

 普段は侍女として控えているが、ティアの恋愛相談は全て彼女にしていたのである。立場的には侍女だが実際は血の繋がっていない姉といった所。


「そ、そうよね……私に惚れさせる……レノが私に……ウフ、エヘヘ――ッイタァ」

「ほら、トリップしている時間はないわ、もう時間が無いのよ?」

 綺麗なチョップがティアの額に叩き込まれアンネは着替えを即した。


「確かにティアは活発なイメージがあるわ、でもね女性の色んな部分を見せるのは悪くないのよ、少し今日は“王女様”らしい部分を見せてみなさい」

「王女らしさ……判ったわ、やってみる」

「そうよ、殿方には保護欲があるの、それを擽るのも令嬢の術なのよ!」


 その一言に電撃のようなショックを受けるティア――


 如何に考えようと自分は保護欲など誘わないのではないかと。


「大丈夫よ、この世には普段の姿と違う所を見せるという“意外性に惚れる”という方法もあるの」

「そうなのね! 頑張るわ」


 こうしてティアはレノを待ち受ける事となる。

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