表彰
そして優勝者としてレノは表彰される事となるのだが、何時もの制服に着替えたレノは学院長から賞状と武具一式という余分な景品まで受け取る羽目になる。
そしてその様子を見て悔しげに睥睨する男性と、微妙な視線を送るものがいたのだが、レノは一切気にしないでこの先の面倒を考えて憂鬱に浸っていた。
そしてティアはまたもや一人妄想の世界へと旅立っていたのだが、貴賓席の様子は他からは見え無かった為に、彼女の両親だけがその様子を見る事になる、そして二人は笑って見て見ぬ振りをする他無かった。
「では最後にご観覧された国王陛下、妃殿下よりお言葉を頂きます」
国王ヘルマンが貴賓席より立ち上がり静寂が広がる、そして良く通る声で試合をした全ての学院生徒に向けて労いの言葉を語りかけた。
「――若き才能が多く育っており非常に嬉しく思う。今後も切磋琢磨し己を磨き騎士として恥じない振る舞いを期待したい、今日は貴族だけではなく、我が王国の国民の優秀なる事が示された日でもあり非常に素晴らしい事である。優勝者には是非騎士の道をという声も上がろうが、聞き及ぶところでは本人はその意思は無いと聞いた。良いか皆の者、人の進む道とは誰かが強要すべきではない、よって我が名において命じておこう、決して強要する無かれ望む事は自由である、が其れを不服に思い害してはならぬぞ。そして騎士を目指すもの達よ、彼に負ける事なきよう己を高めよ、それが騎士と言うものである」
ティアから話を聞いた国王は惜しいと思いつつも釘を刺した。出来れば騎士となりティアの望みが叶う事を願いながら――
そして、王妃アレクシアも同じく娘の幸せを願っていた。
「優勝者にはたった今国王陛下からのお話の通りに――そう彼の望む道を進ませるように我が名においても明言しておきましょう。ですが同時に私は彼のように有望な若者がより多くの者の目標になる事を喜びます。騎士ともなれば必ずや国王陛下の庇護が彼に与えられるでしょうから、私は、彼がもしも騎士の道を望む事があろうとなかろうと――私の名の下に庇護を授けましょう。優勝者に祝福を――」
王妃アレクシアの言葉は一般の市民に対するには十二分に影響力のあるものだった。国王からの擁護だけでなく王妃からは進路の有無を問わず庇護まで与えられたのだ。
幸せを願う故であると言えば其れまでだが、それにしても一学生に与えるには大きすぎる栄誉である。
会場は多くのどよめきと拍手と賞賛、そして羨望とそして一部の嫉妬の眼差しで埋め尽くされた。
王妃は一瞬だけ少し戸惑いの表情を顕にしたが、気が付いたのはレノだけだった、何故なら明らかにレノの顔を見ながら彼女が戸惑ったからだ。
父の愛した女性――そして、政略結婚の為に叶わぬ恋に嘆いた一人。
だがレノは己の中の動揺を表に出す事は無かった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「お疲れー、って程でもないか」
「いや、それなりに疲れたさ」
「ハッハ、流石学院最強」
閉会式が終わりレノは控え室でヨアヒムと話し合う。勿論、ただお祝いに来ただけではない。
ヨアヒムはレノに頼まれた調べものをしていたのだ。
「で、どうだった」
「全く、こう言う時は少しは話題に乗っかれ、ま、想像通りヘルツの家が圧力を掛けて仕組んだ事だね。それと甲冑に細工した男は“部隊”が捕まえて別件で締め上げたよ」
「そうか……証拠はどうだ」
「そっちは駄目だな……証言なんかじゃ無理だろう」
「ああ、そんな物だと握りつぶされるか消されて終わりだろうからな」
――こんな大会如きで証拠は残さないだろうと思っていたがやはり難しいか。
そうレノが明らかに落胆したところで部屋をノックする音がして話はそこで切り上げられた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「レノ?」
ドアの外から聞こえたのはティアの声だった、両親の相手を一時的に抜け出して此処までやってきたティアはまだレノが中にいるのか不明だが居ればと期待を込めて問いかけた。
「どうぞ、開いてるよ」
中からレノの返事がありホッとしつつも今回の面倒ごとに巻き込んだのが自分である事を理解しているだけに――
「おめでとう――で良いのかしら」
少し申し訳なさそうな表情でティアは優勝のお祝いを述べた。
「あの、それで、その迷惑なのは十分判っているのだけど――」
そして、俯きながら更に爆弾を投下する。
レノが今一番聞きたくなかった台詞を――
「お母様とお父様が会いたいと仰ってるの……」
そう告げた。




