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魔導師レイシス、神と悪  作者: tommy
1章 一人前になるという事
12/29

自由都市の朝

部屋の窓から指す光でレイシスは目を覚ました。

「ん…。」

ーあー

起きたと同時にローラがいない事に気付く。

ベッドの上に座ってボケっとした顔をする。

ーもう起きたんだー

寝ぼけた顔で何と無くテーブルの方に目をやる。

ーマサキチ確かテーブルで寝てたなー

今はテーブルの上に何も無い。


ーどこ行ったかなー

また何と無くベッドの脇に立ち上がる。


レイシスが立ち上がってあくびするとローラが入ってくる。

「朝ごはーん!」


ーまさかマサキチをッ…!!!ー


ローラの頭上の緑の四足歩行を見つける。


ーんなわけないかー


「どしたの?」

右手の手のひらに分厚いキッチンミトンして鍋を乗せて左手でパンが二本突き出た紙袋を抱えている。


ーん〜こっちが言いたいかも…ー

「いいや、なんでもないよ。ありがとう。」

テーブルの椅子をひいてローラの鍋をとる。

紙袋を置いてローラが先に座る。

鍋を置いてレイシスも座る。


「あ、器がないね。僕がとってくるよ。」

すぐに立ち上がろうとしたレイシスをローラが止める。


「ふふふ…。」

自分の懐をまさぐり始めるローラ。


ーなにやってんだこの娘は…ー


「やぁー!」

左右の手に一つずつ食器を出したローラ。


「ちょうど二つだったからさ。」


「そっか、おめでとう…。」

ーなんて言えば正解なんだー


ローラはニコニコしている。


ー嬉しそうだからいいやー


「頂きます。」

ローラがよそってくれた食器に口をつけてスープを飲む。


「うまい。」


「ありがと。」


「料理するときまで剣持ってたの?」

料理を持って現れたとき剣を腰にさげていた。


「包丁にしてた。」

へへっと笑うローラ。


「へ?」


「ほら。」

剣を抜いて形を変えて見せるローラ。


「どうなってるの?」

レイシスの持つ知識を総動員してもイマイチ腑に落ちる結論にいたらない。


「あたしにもよくわからないの。」


「そうなんだ。」

ーどうなってるんだろう…南の伝統技術なのかな?それにしても体積が変わったり、森での時なんか二つになってたし…ー


「本当はあんまり人に言ったり、見せたりしちゃいけないんだ。」


「そっか教えてくれてありがとう。」

ー確かにこんな事、帝国が知ったら放って置かないだろうなー


「ううん、これねあたしの思った形になってくれるんだ。」


「なるほどねぇ…。」

ー便利な事…しかしほんとに肌身離さず持ってるんだなー


「もしこれから人に見せるかも知れない時は僕に相談してね?」

ー気をつけないとローラとローラの故郷が帝国に追い回される事になるー


「うん。」

こくんと大きく頷く。


「そういえばさ、食材買ってきてくれたの?」

もう一口のスープと具を少し口に入れてから少し前から思ってた事を聞いてみる。


「市場に行ったらみんなくれた。」

スープをすすって紙袋の中の食べ物を広げるとローラは答えた。


「なんで…?」


「粋?」


「は?」


「らしいよ。」


「そうなんだ…。」

ローラから思わぬ言葉を聞いて思わず大きな声で聞き直してしまったレイシス。


「僕も行きたかったなぁ。」

なんとなしにレイシスがつぶやく。


「明日行こうよ!」

パンをかじろうとした口を止めて言う。


「うん、案内頼むよ。」


「了解!」



食事を済ませるとレイシス達は出かける事にした。まずは図書館。

レイシスの読みたかった魔術書やら、サバイバル本やらもあり何よりマサキチのことを調べたいらしい。

ローラはあまり興味はないが、ついていくらしい。

「ローラは本とか読まない?」

道中レイシスが訊ねる。


「うん。」

こくりと首を縦に振る。


「そっか…。」

ー会話おわったー


「ぼ、僕はさ、もっと凄い魔法使ったり出来たらいいなって思っててさ。」

手のひらを突き出して言うレイシス。


「うんうん、いいね。」


「…。」

レイシスが自分の手をじっと見つめる。


「どしたの?」


「いや、なんでも…。」


そのうちギルド管理の大図書館が見えてくる。

「あれだ。」


「おっきいね。」


「だね。」


入り口衛兵に

「お疲れ様です。」

と軽く声をかけて中に入っていく。

衛兵は敬礼で返してくれた。


「凄いな…。」


「ひろーい。」


まず一階にはびっしりと本棚が詰められていて、しっかりジャンルごとに区画されている。

「サバイバル本の所に冒険家の小説…。」

たまにイレギュラーはあるようだが。


他の利用者はまばらだ。みな闘技場で訓練か、武器防具でもウィンドウショッピングした方がたのしいのか。やはりどこか魔法使いか、神官を思わせる格好の人が多い。

「僕はサバイバル本の所をしばらく見るよ。ローラはどうする?」

適当な本を手にとってローラに訊ねる。


「あたしもみる。」

少し意地を張ったような態度で本を取るローラ。


レイシスが新知識は何かないかと、パラパラと本をめくっては戻しを繰り返しているといつの間にかローラはいなくなっていた。

「あ、どこいったろう…。」

本棚の間をしばし探すが見つからなかったため

ーまあ、みつからない事はないだろうー

と、魔術書コーナーへ向かう。


魔術書の並ぶ辺りは他と比べると人が多い。

武器を手に持ち戦う剣士達とは一転、読書で知識を蓄えたり瞑想して訓練する事がやはり大事なのだろうから当たり前といえばそうなのかも知れない。

レイシスもその群れの中に混じっていく。

ー僕も少し上級の魔法を覚えておきたいなー

レイシスは一つ体の変化に気付いた。

ローラにはあえて言わなかったが、魔力が少し練り出しやすくなっていることに道中気づいた。手を突き出したときに、今までなら集まる事のない程意識の低い集中で手に若干魔力が集まるのを感じた。

少し上級の戦闘用の実用的な魔法を漁るレイシス。

一通り見たかなという所で足元に違和感を感じたレイシス。

「ん?」

足元を見てみる。


「どうした?」

裾をマサキチが口で引っ張っていた。


ーこんな事してきたの始めてだなー

「ローラはどうした?」

肩に乗せてから答えはないだろうが訊ねてみる。


[…]

ぼーっとするマサキチ。


「まあ、そうだよね…。」


そのままそこから少し離れるレイシス。

もう一つしたいことを思い出した。


「お前のことを調べようと思ってたんだよ。」

資料関係フロアに行ってみる。

階段もあるが物珍しいので転送陣テレポサークルで。


魔物図鑑、生物百科事典やらみてもマサキチの正体はわからなかった。

似たトカゲはいるものの、治癒能力があるなんて書いていないし、そもそも魔法のような力を持つ生き物なんて魔物図鑑にしかのっていなかった。


ーお前は何なんだ?ー

肩に乗せたマサキチの頭をチョンチョンとつつく。


気付けば昼時を過ぎた。

「ローラに合流しよう。」

歩きながら返事はないトカゲにいうレイシス。

ー案内出来ないかなこいつー

取り敢えず別れた一階に行ってみる。

一階にて少し歩くとマサキチが肩から飛び降りてサササッと行ってしまう。

「おいおい、踏まれたら大変だぞ。」

いくらなんでも追いつけない速さではないので追いかけて行く。

一階にはどうやら絵本のエリアがあったらしく、その中にマサキチは入っていく。

本棚に囲まれるようにテーブルが並んでいる。

その一つにローラが本を持ったまま、椅子にのけぞってすやすやと寝てしまっている。

マサキチはいつの間にやらテーブルの上まで登っている。

「おいおい…。」

ーん、でも少し可愛いかも知れない…ー


「じゃなくて…ローラ?」

肩を少しゆする。


「あ、レイシス…。」

寝ぼけているのか、椅子から身を乗り出してレイシスの腰にしがみつくローラ。


「ど、どうしたの…ッ?」

ー反応しちゃうからやめて…ー


「ううん、なんでもないんだけどね。」

そう言うと立ち上がり、マサキチを頭にのせる。


「マサキチの事なんか分かった?」

頭のマサキチを両手でおさえながら訊ねる。


「いいや、なんにも。」

お手上げというポーズをとる。

ふとローラの持っていた絵本をみる。

ー竜騎士の英雄…ー


「あ、これ?」

レイシスの視線の先を見て、ローラがいったんテーブルに置いた本を取ってレイシスにわたす。


「こんなマサキチの正体がこんな竜だったらいいのにな。」

笑いながらレイシスがパラパラと絵本をめくる。


「そうだよきっと!こんなおっきい図書館で調べても正体不明なんだよ?!」

ローラは真剣そうだ。


「だといいな。」

笑いながら本をローラにぽんと渡す。


「うんうん。」

素早く本棚に絵本を戻すと

「いこっ。」

とレイシスより先を行くローラ。



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