新スタイル
図書館から、装備品を売る辺りに向かう。
装備品を見たいと言ったのはレイシスだった。
「剣士に変更?」
「いやいや、違うんだ。」
途中、所々にある露店で買い食いして昼の代わりにする。
ローラはおやつといって、チーズの大きな塊をむしって食べている。
ーんと、それどっから出したの?ー
「マサキチも食べる?」
ー食べないでしょ…ー
もしゃもしゃとかじるマサキチ。
ー食っとるー!ー
「おいしい?」
自分があげたエサをマサキチが食べて満足そうなローラ。
「食べるんだね…。」
ーそんなチャレンジしたことなかったよ…ー
「レイシスも食べる?」
塊をクイッとレイシスの方に動かしてみせるローラ。
「いや、僕はさっき食べたのでお腹一杯だよ。」
ーなんかマサキチにあげる時とトーンが変わんない気がするんだけどー
「そっか、おいしいんだよ?」
そう言うとまた口の中に欠片を放り込む。
通りを歩いていると蹄が地面を蹴る音がどこからか響いてくる。
「なんだ…?」
レイシスが辺りを見回す。
「あっち…。」
ローラが指差す。どうやら後ろからだ。
どうやら先頭を走る馬に音響魔法をかけているようで町の人に馬が通る事を知らせるためのようだ。
「皆さん!騎馬隊が通ります!気をつけてください!」
騎手自体にも魔法はかかっているようだ。
「森の方だよね…。」
ローラがつぶやく。
「まさか…僕のせいで…?」
そう言ったもののレイシスは半信半疑だった。
ー僕が捜索対象になって見つかったらどうなるんだろう…?ー
「いやいや、森に行くかわからないよ。それにあんなに慌てないよきっと。」
レイシスが笑ってごまかそうとする。
「それはそうかも…。」
ローラもそれとなく納得する。
「あんなに慌てるなんて…。」
レイシスが何かいい例はないか空想を始める。
「うん…何?」
まだ不安そうな顔をするローラ。
「ギルドマスターが捕まった!とかね。」
さすがに自分で言って笑ってしまうレイシス。
「そっか…。」
世情に疎いローラにはピンときていない。
「大丈夫だよ、行こう。」
過ぎ去った騎馬隊を見つめるローラの手を引くレイシス。
「うん。」
再び装備品店を目指す。
リベルブルクで流通している装備品はピンキリ。
質と価格を両立した物を探すのは難しい。
「弓が欲しいんだ。」
装備品店の並ぶ通りまでくると、レイシスがやっと目的を白状した。
「え?魔法使いじゃないの?」
不信な顔をするローラ。
「あ、いや…ホントはさ、弓とかスリングとか得意なんだ。お師匠様が僕は魔力の扱いに慣れた方がいいって使わせなくてさ。」
「そうなんだ。」
「森での事があったでしょ…?だからさ、持ってる力を出し惜しみしたくないんだ。」
レイシスは掌を見つめている。
「そっか。」
納得した様子のローラ。
「よし!探そ探そ。」
通りに並ぶ店々の前に並ぶ、装備品やらほぼ冗談で並んでいる超高額装備を見ながらぶらぶらと歩く。
レイシスがその冗談の一つに食いつく。
「ミラーアーマーだって…。」
店の壁面のガラスの奥に立ち尽くす全身鎧。
装飾はシンプルだか、中に立っている札には魔法を反射するとの事。
「どんな魔法でも跳ね返すのかな?」
「さぁ…。」
「回復魔法も跳ね返すのかな?」
「さぁ…。」
「あ、でも魔柱石をセットしないと機能しないんだって。」
「ふぅーん。」
「魔力切れのタイミングわかんないと大変なことになるな…。」
「…。」
「魔法を跳ね返すんだからさ、反射魔法を展開するのかな?鎧に接触感知機能とか持たせてさ、触ったら跳ね返すんじゃ少し規模の大きい魔法じゃダメージうけちゃうよね?リフレクター展開が妥当かな…あ、これ五つも魔柱石セットしないといけないんだ。維持費も大変だな。こんなの使えるくらい稼いでる冒険者ならこれがなくてもそもそも平気じゃないかな…。」
「…。」
「あ、ごめん…。」
「終わった?」
「ホントにごめんなさい…。」
通りを再び歩き出す。
「ローラのさ、魔法を防ぐ術ってなんなの?」
レイシスがふと、また戦闘になった時の事を考えてみる。
「見切る。」
親指を立てるローラ。
「素晴らしいと思う…。」
ー何も言えないや…ー
「もしもの時を考えてさ、そういう装備があった方がいいと思うんだ。」
「うんうん、欲しい!魔法防ぐ服欲しい!」
はしゃぎ出すローラ。
「うん。」
ー服っては言ってないけどー
弓と魔防装備を探して歩く二人。
なかなかコストパフォーマンスの良いものは見つからない。
質に対しての価格がやはり高い。
リベルブルクに売られている装備品の大概はよそから製品で、輸送費にそれにつける護衛の賃金であったり、なんだかんだリベルブルクに着く頃には三割から四割程高い。
リベルブルクで作っていたとしても、材料から素材から各地からかき集めたとしても同じことだ。
「品物見て参考にするぐらいしか出来ないかな…。」
「えー、かわいい服ほしー。」
「んー…。」
ーかわいいが追加されてる…ー
苦笑いを浮かべる。
店先に並ぶ装備品でその店の価格帯をおおよそ示している。
簡単な革鎧なんかは作れるなら自分で作った方が安い。
素材は魔物やらなんやらから剥ぎ取れば戦闘実費だけですむわけである。
結局買うならばそれなりの物になるわけだが、リベルブルクではやはり値が張る。
「お主ら、何かお探しか?」
突然、背後から声をかけられる。
「あ、はい…。」
店先の魔防加工戦闘服の値札を見て肩を落としているところを不意にかけられた声に振り向く。
「高いじゃろな。」
レイシスの見ていた物を見て苦笑いするドワーフの初老程に見える男。
顔はドワーフだが、ドワーフより二頭身程背が高い。
「うちの物を見ていかんかの?」
持っていた皮袋を持ち替えて親指で自分の店であろう先を指す。
「見てく見てく!」
一瞬迷ったレイシスより早くローラが反応する。
「お主もよいか?」
ドワーフの男はレイシスにも返答を求めた。
「あ、はい。」
ー悪い人には見えないからいいかな…ー
路地を二つ通り過ぎ、細い路地に入ったところに男の店はあった。
装備品を扱っているであろう事だけ分かる遠慮がちな看板が下がっている。
通りからでは見つけられないだろう。
「魔防装備と弓だったかの。」
店に入ると男は適当な場所に皮袋を置く。
ズドンと音がする。
鉱石か何か重そうな物が入ってそうだ。
「あ、はい…軽々と持ってましたね。」
なんとなく訊ねてみる。
「こんぐらい持てなくてはな。ちょっと待っててくれ。」
豪快に笑うと奥に入っていく。
店の中は大きな武器と頑丈そうな鎧…ではなく、意外にも様々な色の反物と、完成品のローブやらで色鮮やかな印象をうける。
すぐにローラは反物をいじり始めた。
様々な色の反物と飾られている完成品に目をキラキラと輝かせている。
ーよかった…ー
一瞬疑問が浮かんだ。
ーよかったってなんだよ…ー
「どれどれ。」
男が奥から戻ってきた。
反物をいくつかと箱を抱えている。
ーあれ…服の流れ…ー
「すこし考えたんだがの、やはりワシも鎧や鎧下のようなものに直接、魔防効果がある方がいいと思うぞい。」
「え?」
真面目な顔に面食らったレイシス。
「例えばだな…魔防盾を持つとするな。」
「はい。」
「今嬢ちゃんは盾を持っとらんな。盾を持たせるとなると、戦い方を変える事になるだろう。」
レイシスはああという顔をして頷く。
「魔柱石を仕込むようなもんは恐らく経済的に無理じゃろう?」
「はい…。」
「何か持たせるんでなく。今装備しているものを魔防能力を持った物に変える方がいいと思うのぅ。」
「なるほど…そうですね。」
ー僕は自分が安心したいからって余計な物を押し付けるところだった…ー
「ヘタにモノに頼ると敵に余計な隙を与えかねん。逆にモノに頼ると自分は甘えが出る。」
「そうですね…。」
「しっかり自分の女の事、考えてやるんだぞい。」
肘でレイシスを小突く男。
「いや、違うんですよ僕らは。」
冷静に否定するレイシス。
ー慌てたら負けだー
「そうなのか、まあでも女子供は男が守らんとな。」
ガハハと豪快に笑うと箱から鉛筆を取り出した。
ー一人前になるって決めたのに教えられたり、助けられたりばっかりだなー
あふれた気持ちをため息と共に吐き出した。




