刑事ドラマと石川五右衛門
えっと、
動画配信はどこだ。
俺はスマホを確認する。
おぉこれか。
うちと同じ会社だな。
となると、
視聴履歴は……。
ここか。
なんだこいつ。
随分古い刑事ドラマ見てるな。
昭和だぞ。
まぁいいか。
昭和の刑事ドラマは熱かったからな。
よしこれを一話から見せよう。
しかし、こういう過去から来た男に、テレビなんかを見せると、
箱の中に人がいる。
そういう話になるんだよな。
あぁ面倒くさい。
「富山さん。それはサブスクですな」
加賀がじっと見る。
「サブスク。ずいぶん難しい言葉を知ってるじゃないか」
「相沢殿に教わったでご……、教わりました」
「箱に人が入っておると驚かなかったのか?」
「相沢殿がスマホで俺の動画を撮り、こういう技術があるんだと教えてくれました」
「あぁそうか」
なんだ。
その老人、やけに頭がキレルじゃねぇか。
「じゃあ。特に説明はいらないな」
「たぶん。それは俺本人が見ていた動画ですか?」
「あぁ昭和っていう少し……、いや平成挟んでいるから、結構前か……。
その結構前の刑事ドラマだ」
「なるほど。こいつを見れば、今の世の中がどうなっているかが、わかると」
「そいつは微妙だな。この時代はインターネットもないし、ヤクザもまだ現役だった」
「ヤクザ?」
「ヤクザってのは、暴力団。博徒。ごろつき連中のことだ」
「今はいないので?」
「今もいるよ。ただ暴対法で、かなり大人しくなった」
「それは良い事ですね」
「まぁそれは良い事なんだが、そのあとな……、半グレという連中が出てきてな」
「半グレ」
「あぁ。そいつらが厄介なんだよ。まぁこの昭和のドラマから見て、平成、令和と進んでいくと、わかりやすいかもしれんな」
「わかりました。見てみます」
「あのな。ここに描かれている事の、一部はフィクション。つまり物語を面白くさせる為の演出だ。全部が真実だと思うなよ」
「なんか、ややこしいな」
「しかし、俺が全部教えるわけにもいかないだろ。大丈夫。俺がいるから、間違っている事は指摘する」
「わかった。見てみます」
俺はスマホの説明をして、
署に戻ることにした。
……
俺は署に戻り、
事情を説明した。
幸いな事に、
ちょうど事件もなく、
暇だったので、
いい機会だから、
もう少し後輩に色々教えてやれ、
と時間を貰った。
まぁ、
何かしろと言われたら、
色々と理由をつけて、
加賀の面倒を見ようと思っていたから、
時間を貰ったのは、好都合だった。
しかしどうする。
どう教える。
そう考えた時に、
ふと思い出した。
俺はスマホを確認する。
スマホに奴の電話番号はなかった。
俺は家に戻り、
押し入れの手帳を漁る。
「急にどうしたの?」
妻が不審そうに見ている。
「昔な。知り合った拝み屋がいたんだ。そいつの連絡先」
「拝み屋って、たしか福井さん?」
「そうだ。そうだ。福井だ。お前知ってるか?」
「知らないわよ。でもあなた……、
福井は行方不明になったとか、言ってなかった?」
「えっ。そんな事言ってたかな?」
「あれ何年くらいだった?」
「たしか……、タマちゃん。タマちゃんよ」
「タマちゃん?あぁあの猫の事か?どっかの駅長かなんかしてる」
「それ和歌山の。違うわよ。多摩川のあざらし」
「あぁそうか。あれ何年だ」
「ちょっと待ってね。
えっと……、
2002年」
「2002年か……、おぉあったあった。ちょっと待てよ。あぁあった福井。ありがとうな。電話してみる」
(ぷるるるる。ぷるるるる)
「はい」
「あぁ。福井さん?俺だ。富山だ。刑事の」
「新手の詐欺か?」
「いやいや。違う。本物だ」
「詐欺師が偽者だと言うか。電話切るぞ」
「ちょっと待ってくれ。ほら2002年。俺と知り合っただろ」
「2002年?」
「そうだ。たまちゃんが有名になった年だ?」
「たまちゃんって、全日本スナック連盟会の?」
「そっちじゃない。多摩川のあざらし」
「あぁ、あのたまちゃん」
「そうそう」
「そのたまちゃんがどうした?事故にあったから金払えとか言うのか?」
「いや違うんだ。お前拝み屋だろう」
「なぜ俺の仕事を知っている。しかも、それは影でやってる仕事だぞ」
「そうなのか?
お前、俺は拝み屋だ。刑事さん。悪霊か何かに祟られたら、視てやるぞとか言ってただろう」
「あぁあの時の、でもお前、越中って名前じゃなかったっけ」
「違うよ。富山だよ」
「それで悪霊かなんかに憑りつかれたか?」
「いや違うんだ。一つ聞きたい」
「なんだ?」
「昔の人の霊が今の人間に憑りつく事ってあるか?」
「そりゃあるよ」
「それで人格がまるで違うようになる事は?」
「ひどい場合な」
「ただ普通に会話できるんだ。自分が乗り移ったとも自覚している」
「それ珍しいな」
「そうなのか。それで」
俺はふと思った。
俺は福井に何を求めているのかと……。
……
俺は刑事ドラマを見ていた。
音を出していると、
看護師から、
イヤホンで聞いてくださいと言われ困った。
しかし、それを言うと、すぐに教えてくれた。
病院というところは、ずいぶんと親切だ。
刑事ドラマを見ていて驚いた。
刑事は拳銃という武器を持つらしい。
相沢殿が遊びに来ていたので、
話を聞いてみたら、
昔の武士という身分はなく、
公務員という立場が役人で、
刀を持っている者はおらず、
刑事だけが、拳銃を持つことを許されている。
そういう話だった。
「昔は試し切りだの、辻斬りなどがあったが、刑事が試し撃ちとか、辻撃ちなどはせぬのか?」
そう尋ねると、
「そんな事はしないよ。弾が一発無くなっただけで大騒ぎすると聞いたよ」
と笑った。
「まぁでも、こういう銃撃戦とやらには、なるのだろう。ずいぶん物騒だな」
「それもドラマの中だけの話。そんな銃撃戦にはならんよ」
「なるほど。これが物語を面白くさせる為の演出か」
「そうじゃよ」




