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第8話 ゴブリンの巣には面倒事の香り

面倒事(意味深)

あ、R18的な内容ではないのでご安心を?

「暗いな。これなら、明かりになるものを確保してからでも、入ればよかったかな」


 ゴブリンたちの巣へと侵入してから、俺の口からは愚痴しかこぼれない。

 緊張しているのだろうか。恐怖しているのだろうか。

 どれでもない。俺の心にあるのはただ一つ。この先に強い敵がいる、そいつと戦える。これだけだ。


『明かりはないが、暗視程度なら自力でどうにかなるだろ』


「言うほど簡単じゃ……ない、はずなんだけどなぁ」


 ゼキエーレの言葉通り、目が暗闇に慣れて来た。

 ただ、よく見えるのではなく、微かに見える程度。

 結局のところ暗いことに変わりはなく、素早く何かが動いたとしたらきっと見えない。


『……おい』


「あぁ、分かってる」


 巣穴を進んでいたらいつの間にか囲まれていた。

 ゴブリンたちの迅速な動きに少し驚いていて、対応するのを忘れていたよ。


 まぁ、それでも負ける要素はない。上で勝ったんだ。下で負ける道理がない。


「ファイアーボール」


 ゴブリン戦での正攻法が火魔法による遠距離攻撃になっている。俺の中では楽に倒せるので、この方法が気に入っている。たった二回しか使ってないけど。


 火の玉をつくり、ゴブリンに向けて発射する。

 そして、火の玉はゴブリンにぶつかり次第爆発。

 その爆発で完璧にゴブリンは絶命。

 ここまでテンプレ。


 しっかし、数が多い。かれこれ数十回はファイアーボールを使っている。

 このままだとMPが切れるのも時間の問題だ。

 ここは一旦退くべきか?


 火魔法でゴブリンを倒しながらそんなことを考えていると、背後にとてつもない気配が!


「何奴!」


『口調がおかしいが……あれは、ホブゴブリンか』


 振る向けば、そこには右手に大きな剣を持った巨大なゴブリンが立っていた。

 ホブゴブリンと呼ばれたそのゴブリンは、明らかに俺へ殺気を放っている。足がガクブルしてしまう程に恐ろしい殺気。


 これがあの、ホブゴブリンと言うヤツなのか。

 か、勝てるのかこんな魔物。戦うだけ無駄なような。


『来るぞ、構えろ!』


 ゼキエーレの言葉でハッとなり、何とかホブゴブリンの剣を避けた。

 バックステップで避けたせいか、狭い巣穴のせいで壁に背中を強打してしまう。

 痛みに耐えつつホブゴブリンの追撃に注意しつつ、剣を構えて間合いを取る。


 暗い巣穴で、巨大な相手。

 状況的には最悪だし、逃げ道を塞がれている。

 さて、どうしようか。


 俺がホブゴブリンが塞いでいる出入り口へと繋がる通路へ視線を送ると、油断大敵とばかりに剣が右隣に突き刺さった。

 ホブゴブリンは再び剣を振りかぶる。剣が去った後の地面は抉れていて、もし体に当たったら即死は免れない。


 盾で受け止め……られないだろあんなの!?

 避けるにしても、スペースがない、狭すぎる。


 そんな俺に無慈悲な剣が迫りくる。

 右から入って俺の体を真っ二つにしようとホブゴブリンが剣を振り下ろした。

 スキルによって視界に補正が掛かっている俺は余計にそれが見えている。


「死ぬくらいならっ……ファイアーボール!!」


 剣を避けられないと悟った俺は、体の横に火の玉を5つ出し盾代わりに使った。

 火の玉は何かに当たると爆発する。それを利用するのだ。


 すぐそこへと近付いていた剣が火の玉にぶつかる。もちろん、火の玉が爆発。

 俺を巻き込みながらも、剣を爆風で押し返せた。

 その代り、右腕の殆どを火傷してしまった。これじゃあ剣を振ることはできないかもしれない。


「……痛ぅ。厳しいな」


 盾をしまい、左手で右腕を支えながら逃げるようにして奥へと駆け出す。

 このままだと普通に殺されてしまう。抵抗する間もなく、あっさりと。


 一目散に逃げ出し、少し走るとある部屋へとたどり着いた。

 ゴブリンが2匹とその後ろに檻がある。

 檻の中には人の姿うっすらと見えた。


 俺の存在に気付いたのか、檻の中から助けを求める声が聞こえ始める。

 全てが女性の声であり、若々しい女性ばかりだ。


「まさか、ここって!」


『面倒な事になったな……』


 面倒事ってこれかよ。

 確かに面倒事ではあるが、まだ大丈夫そうだ。

 皆元気はないけど、大丈夫。うん、大丈夫だ。


『どうする?』


 決まっている。


「助ける!」


『なら、檻の鍵は壊すなよ。護りながら戦える程、お前は強くない』


「いや、檻は壊してしまおう。もしも俺が倒れても、自力で逃げるチャンスを作るんだ」


 ゼキエーレの忠告とは反対に、俺は鍵を壊そうと近付いた。

 しかし、見張りと思われるゴブリンが威嚇しながら道を阻んだ。

 俺はそんなゴブリン達へ無慈悲に魔法を使い、見事に爆発四散。


 爆発音を聞き、囚われている人たちが悲鳴を上げる。

 怖がらせるつもりはなかったが、暗く狭い場所で突然何かが爆発したら普通に考えて怖いよな。


 俺はなるべく音を出さないようにと、剣で檻の鍵を壊した。

 しかしまぁ、当然のようにガキンッと金属音が鳴り響いてしまう。


 だが、囚われていた人たちはそれが助けだと感じ取ったのか、扉を開けると直ぐに外へと出て来た。


 そして、出てくるや否や俺に礼を言った。頭を下げ、涙を流して喜び、感謝してくれた。


「逃げるのは待って。ここで待機してください。道を塞いでいるデカ物が、まだ残ってるんで」


 今にも出入り口へ走り出そうとしていた女性を呼び止め、そう言った。

 この先には俺を殺し損ねたホブゴブリンがいる。もしも、彼女たちを行かせてしまったら……控えめに言ってもミンチは確定だろう。


 逃げ切り勝ち、なんてのは考えてなかった。やる時はやらなければならないからだ。

 けど、心のどこかでは戦いを避けていたのかもしれない。戦わずに済めば、それでもいいやってな。


 でも違った。

 やっぱり、戦いたい。今の俺の力を試したい。

 ホブゴブリンとの戦い、一瞬だったがあの戦闘に、胸を熱くさせる何かがあった。


 戦おう。

 彼女たちのためでも、魔物だから討伐するのでもない。

 俺が、俺のために、俺のしたいことをする。


「よぉ、ホブゴブリン。死ぬ準備はできたか?」


 ゴブリンの統率者、ホブゴブリンの討伐開始だ。

なんだかガッカリだよ、と思われたら方ごめんなさいです。

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