108、飛ぶ鳥は灰すら遺さず
「ネ………マレさん、起きましたか」
ライムに連れられてしばらく学院を歩いていくと、目的地らしい空き教室の中心に、縄でぐるぐる巻きにされ、しっかりと拘束されている学園長の姿があった。
その横には、前世の俺と同じくらいの男の子がいる。ローブと制服からして、ここの生徒っぽい。
「無事だったか。案内ありがとう、ライム君」
「はっ」
男子生徒の言葉に、まるで家臣みたいに返事をするライム。
いや、ライムは司貴家だったんだし、位で言うなら大抵の貴族よりライムの方が高いはずだけど………
「ああ、自己紹介がまだだったな。私はミツル。ここの王をやらせてもらっている」
「え、はあ………………え!?」
ってことは、魔王!? 俺と同じくらいの子が!?
いや、それもあるけど、ミツルって名前、もしかして転生者?
まさかの重要人物だったことを知り、その男子生徒をよく見る。
その男子生徒は茶髪に黄色の瞳の、正直に言えばパッとしない顔立ちをしている。身長も高いというわけでも低いわけでもない。
ただ、その余裕から来る強者感は強かった。
「こんな子どもが、と思いましたか?」
学園長が縛られたまま、そう聞いてくる。
正直、確かにそう思ったのでおずおずと頷くと、男子生徒………魔王が小さく笑った。
「年齢的にもおかしくはない。ただ、それはこの身体だけで、中身はそうでもない」
やっぱり、魔王も転生者か? でも黒髪じゃないし、転生者は黒髪説はないか………
「魔王様は、遥か昔から身体を入れ替えて生き続ける、いわば『魂人』です。見た目と実年齢はかなり………いや、何十、何百年もかけ離れているでしょう」
学園長の補足説明で、転生者説も木っ端みじんになった。
ってことは、単純にアマノボリ出身とかかも。あっちは日本の文化があるみたいだし。
「そういうのは最初は伏せて、後から聞かせることでインパクトを大きくしたかったのだが………まあいい。そうだな、もうそこまで言われたんだ、本名を教えよう。私のフルネームは『田長 満』、この世界ではない者だ」
「………え?」
少し不貞腐れたようにつまらなさそうな顔をする魔王の口から、『答え』が語られた。
それを聞いて、ライムと顔を見合わせる。
「………知っているか?」
「ごめんニュース………あの、そういう事件事故は聞いてない。でも名前は明らかに日本だし………」
ライムと小声で会話する。
田長 満、その名前に聞き覚えはない。そもそも異世界転生モノによくあるトラックの人身事故も聞いていない。それを判断材料としていいかは分からないが。
りゅか姉ちゃんと話したとき、その話の内容的に同時にこの世界に来たと思っていたけど、もしかして不定期的に転生者が来てる? それか、単純に魔王が大昔の転生者の生き残りとか?
「どうした、コソコソ話なんかして。私には聞かせられないのか?」
「それは………」
また、ライムと顔を見合わせる。
転生者であることを明かしたのは、ライムとりゅか姉ちゃんだけだ。
ライムは信頼したから話したし、りゅか姉ちゃんはそもそも知り合いだった。
でも、目の前の魔王は転生者というだけであって、信頼もそこまでない。学園長があれだったし。
だから、話していいかどうか………
「魔王様、私から一つ質問させていただいてもよろしいでしょうか」
俺が悩んでいると、痺れを切らしたライムが魔王に質問の許可を求めた。
魔王はむしろそれを喜ぶかのように顔をほころばせて、頷いた。
「私に答えられるものなら、何でも」
「ではお聞きしますが、魔王様は先ほど、この世界ではない者とおっしゃっていました。同郷の者はいないんでしょうか」
「ああ、それか。実は私も気になっているんだ、マレ君」
「………え?」
急に魔王の視線がこっちを向き、目が細められる。
また厄介ごとか………?
「君はアカウントを持っているか?」
「アカウント、ですか?」
「そう、アカウントだ」
魔王が言っているのはおそらく、ステータスウィンドウに出てきたパーソナルアカウントのこと。
でも、システム自体が俺に敵対しているかどうかが怪しいので、万が一魔王がシステム側だった場合、この場で瞬殺されてもおかしく───
「………?」
いつの間にか、全身が小さく震えているのに気づいた。
それに伴って、いやに冷たい汗が背筋を流れる。
それでようやく、魔王に恐怖していることを自覚した。
そう俺は、俺を殺しうる魔王が、怖い。
「大丈夫か?」
横から、ライムの心配そうな声が聞こえてくる。
けれど、俺は魔王から目を離せなかった。
当然だ。一番の脅威から目を離せるわけがない。本能はすでに、逃げる手段を求めている。
おそらく、『死』を自覚したから、それに対する恐怖も芽生えたのかもしれない。今までがあまりにも薄すぎたのだ。
「………よく分からないが、怖がらせたようだ。もう少し休むといい」
ふいっと、魔王の視線が俺から外れる。
無意識に止めていた呼吸を再開して、薄く早く息を吐く。
ライムが本気で心配し始めたようで、俺の背中をさすりながら顔を覗き込んできた。
「平気か? 戻って休むか?」
「………いや」
魔王の思惑が何であれ、同郷の者には変わりない。
りゅか姉ちゃんみたいに、魔王も孤独を感じているかもしれない。
なら、少なくとも俺も転生者ってことは伝えたい。
「さて学園長、私はまだまだ聞きたいことが───」
「あのっ………!」
尋問を再開しようとした魔王に、声をかける。
魔王はそれに反応し、またこっちを向いた。それだけで、全身の震えもまた始まった。
でも今度はそれを気合いで抑え込んで、魔王と目を合わせる。
「アカウント、持ってます」
「ほう、そうか………」
魔王の目が細まり、ゆっくりと近づいてくる。そこに、さっきのようなおどけた雰囲気はない。
その豹変ぶりに恐怖がさらに増し、助けを求められるか周りをチラッと見ると、学園長は縛られて動けないし、ライムは王様に敬意を払うかのように少し離れたところで跪いていた。
つまり、俺の横に並んでくれる人は、いない。
やがて、魔王が目の前まで歩いてくる。
魔王は、俺より小さい。だけど、魔導にそんなことは関係ない。瞬きしてる間に、無詠唱で首を斬り飛ばされる可能性だってある。
そんな、恐怖の象徴みたいな魔王は………
「………よく、来てくれた」
震えるような声で、片手を差し出してきた。握手をしたいらしい。
別にやらない理由はないので素直にその握手に応えると、魔王は固く握り返してきた。
「300年だ」
「え?」
「300年、同郷は見つけられなかった。転生者らしい話は聞くが、こうして会うことはなかった」
魔王は、笑いながら少し泣いていた。
俺は割とすぐにりゅか姉ちゃんを見つけたので、正直魔王の気持ちは理解することが出来ないが、孤独に苛まれたその震える声は、再会したときのりゅか姉ちゃんの声とよく似ていた。
「………願わくば、向こうの世界の話を聞かせてくれないか? 十分に休んだ後でいい」
「あ、は、はい」
こっちとしても、転生者の先輩に話を聞けるのはありがたい。
しかも、魔王となれば魔導のことも詳しいだろう。浄化されたジバや魔導適性の復活とかの相談もしたい。
「そうだな、少し待て」
何か思い出したように、魔王は懐から一枚の紙を取り出す。
大きな一枚から破られたらしいその紙片は何も書いていなかったけど、魔王がそれをくしゃくしゃに丸めて広げると、なぜか道や建物が描かれた地図になっていた。
その地図の中に一つ、赤丸で囲まれた館のようなものが見える。でも、それは他の建物に比べると館と言うにはかなり小さく、形は館だけど大きさは一戸建てのような感じだ。
「ここが私の家だ。話したいとき、暇なとき、いつでも来い」
「あ、ありがとうございます………」
紙片を受け取ると、魔王はもう泣いていなかった。
300年孤独で、やりたいこと、聞きたいことたくさんあるはずなのに、それら全てを抑え込んだ。
王たる器とは、上に立つ者とは、こういう人を言うのだろう。
「違う。私はただ、見慣れてしまっただけだ。この世界の何もかもを」
思ったことが顔に出てたのか、魔王がそんなことを言う。
そして、その顔に合う、だけど年齢には合わないあどけないウィンクをしてみせた。
「君以外は、だが」
「………………………」
男がやってるかつ300歳以上というのを知ってしまったため、何かキツイものがある。
俺はそっと顔を背けた。
「あの、そうではなく、今この状況を説明する場を設けたため案内してほしいとのことだったのでは………?」
ことの成り行きを見守っていたライムが、おずおずと魔王に話しかける。
魔王は忘れてたみたいな表情になった後、「こいつから説明させよう。おい、説明しろ」と学園長を軽く蹴った。
確かに魔王の方が上だろうけど、蹴るのっていいんか………?
「こほん、説明を任されましたので、やらせていただきます」
「簡潔かつ正確にだぞ」
「分かっています。まずは、私がマレさんになぜあんなことをしたかを説明しますね。まあ、これはそう複雑ではなく、ただ単に月の魔術障壁を破りうる『騎士ノ遺剣』が欲しかったのと、私がしくじった後の保険として居てほしかったのです」
「マレが石化させた相手を助けると思っていたんですか?」
ライムが真っ当な疑問を学園長に投げかける。
俺もそこは気になった。結果的に俺は必要だったけど、あのときはそんなこと分からないはず。それどころか、隙を突いて攻撃する可能性だってあるはずなのに………
「そんなもの、簡単ですよ。マレさん、あなたは優しいでしょう?」
ニチャアと、学園長が不気味に笑う。
それは俺を信頼しているようでどこか馬鹿にしているような、嘲笑うかのような笑み。
それは前世でも見た、失敗した俺を見る人々の表情と、よく似ていた。
やっぱり失敗したという負の信頼の的中による優越感と、やっぱりできないのかという小馬鹿にするような微笑みを湛えた表情。
俺はそれが、怖かった。
それは変えようがなくまぎれようもない、事実なのだから。
「そんなことはないと思いますが」
ライムが俺の前に出て、庇うようにそう言う。
でも、学園長が言っていることは当たっている。
だって、月の中にいたとき、俺の思考の中に『学園長を攻撃する』という選択肢はなかった。それどころか、学園長と繋がりのありそうな天使の頼みを聞き入れて、身体を貸し出していた。
甘いにも程がある。いや、学園長の言葉で言えば、これが『優しい』ということなのだ。
「まあ、そういうことにしておきましょうか。そして次ですが、夜がなくなったことですかね。これはマレさんも少し聞いてるんじゃないですか?」
さっきの雰囲気はどこへやら、学園長は軽い感じで話し始める。
一応、学園長の言葉通りに思い返してみると、少しどころか大体のことは学園長本人と天使から聞いたことを思い出した。
「えっと多分、月が無くなったから、ですか?」
「ええ、その通りです。夜は月の、いえネル・ラリウスの魔力を使って存在していましたから、その月が無くなれば夜も消えるのは必然です。では、月が無くなった理由は分かりますか?」
それはあの天使がいなくなった、亡くなったからだろうけど、直接的な場面は何も見てない。
ということで、首を横に振る。
「なるほど………………実は私も、よく分かっていないんですよね」
「おい」
魔王がまた、学園長を蹴る。
だけど学園長は本気のようで、言葉を覆したりはしなかった。
「あのとき、堕天したネルの対処で精一杯でした。ネル自身もマレさんの身体を借りて制圧に協力してくれましたが、それでもなお及ばず………そのとき、ネルが何かしたんです」
「何かとは、何だ?」
「それは………何かとしか。私が最後に見たのは右手に何か囁きかけるネルの姿で、直後に凄まじい衝撃が起き、気絶してしまいました」
「凄まじい衝撃、か」
「あれほどの爆発を起こすのは白陽の力で間違いないのですが、一体それをどれだけ使ってしまったのか………」
右手………そういえば、右手の薬指に指輪つけてたっけ。
多分これが………あれ、なくなってる。その『凄まじい衝撃』とやらの媒体に使ったのかな?
まあ貰い物だし、自由にしていいって言われてるから問題はないけど………
「その後、私は程なくして目覚め、月が消え始めていることに気づき、その場の皆様を回収、転移にて学院に戻りました。そのときにはもう、月と同じように夜も消え始めており、さながらそれは夜明けのようでしたね」
「まさかこの国にいながら夜明けを見れるとは思わなかったが。して、説明は終わりか?」
「いえ、まだです」
少し感慨に耽っていた学園長はまたこっちに向き直る。
まだって言っても、今回の件はほとんど説明されて………
「そもそも、なぜこのようなことが起きたか、それを説明します。と言っても、ネルからの説明は聞くことができなかったので、推測も混ざりますが」
「構わない。私はそれが一番気になっている」
「まず、月の核となっている天使、魔導師ネル・ラリウスが堕天し始めてしまい、その影響で黒い雨が降りました。ただ、これはおおよその原因を見つけています」
「なら、それは?」
「マレさんですよ」
「………え?」
俺? 俺が原因?
「いや、マレさんというより、様々な要因が重なった上での結果になると思います。一つ、お聞きしますが、マレさんは『神格』という言葉に聞き覚えは?」
神格。TRPGとかで時々聞くけど、いわゆる神に相当する存在、もしくは神そのものって思ってる。
でも、それがどう俺と関係するのか………
「おそらくですが、マレさんは神格と『同調』できる、稀有な体質の持ち主と思われます」
「同調、ですか?」
「ええ、何度か神の空間、古い言葉では『閨』と呼ぶそうですが、そのような空間に入った覚えはありませんか?」
「それは………」
ある。めっちゃある。
どころかそこで戦ったし、会話もした。
というか、その閨ってところじゃなくても、この学院で会ったことがある。
ゲーム以上にポンポン上位存在が出てくると思ってたけど、もしかしてそういうのを惹きやすい体質ってこと?
「………心当たりがあるようですね。それは、ネルも例外ではなかった。そして、種火の魔術を使われるだとか」
「まあ、はい、結構改造しちゃいましたけど………」
「ネルの生涯の目的は、火種になる者を探すことです。例え長い年月の間眠っていたとしても、その者が種火の魔術を使えば、簡単に特定できるでしょう」
その火種になる者って、エンガラスさん達が言ってたやつ?
でも、火種にするのは種火の魔術って言ってた気がする。あっちも推測だったし、普通に違ってたわけか。
んで、俺がその火種になるやつだったと。
あれ? でも天使は燃やし尽くしたって………いや、あれは戦闘後か。
天使が俺を見つけた方法が、俺の体質と種火の魔術が使われたのを感知すること、だったのか。
「そして、これも推測、もはや妄想と言っても過言ではないのですが………」
「構わない。全て話せ」
「マレさんとサイルガ家兄弟との決闘時、マレさんはネルを一時的にその身に宿しました。残念ながら魔王様は公務で忙しく見ていないかと思いますが、ライムさんは見たでしょう? あの白い炎を」
「もしかして、あれが………?」
白い、炎? 俺知らないんだけど。
もしかして、俺が気絶してる間に色々やってた? というか、教えてくれてもいいのになんで黙ってた?
チラッと、何か知ってそうなライムを見る。
すると、ライムは安心したような、それでもどこか不安そうな表情をしていた。
それを見るに、何かしら事情があって黙ってたっぽいけど………まあ、もう終わったことだし、気にすることでもないか。
「その決闘のとき、ネルは種火の魔術で人を攻撃してしまいました。悪人相手にすら攻撃するのに躊躇する子です。反射的にとはいえ誰かを傷つけたあの子は深く長く、自責したでしょう。それこそ、堕天してしまうほどに」
「あの黒い雨もその影響、というわけか」
「その通りです、魔王様。私はあれを獄油と読んでいますが、あれは天使が堕ちる際に開くという地獄、あるいは魔界と言うべき世界から溢れ出す液体です。今回はすぐに門が閉じたため比較的少量で済み、現在はすでに全て蒸発して悪影響はありませんでしたが、門を閉じれなかった場合、獄油はその質量をもってして地上のあらゆるものを押し潰したでしょう」
あれ、汚染とかじゃなくて、単純に量が問題になるタイプのやつだったんか。
いやそれより、門って言ってるってことは、あのとき、あの鎖でグルグル巻きにされたネル・ラリウスもとい天使がいたあの黒い湖。もしかしてあれが門だったってこと?
「少し脱線してしまいましたが、要は罪悪感でネルは堕ちかけたということです。もちろん、それだけの理由ではないと思いますが………きっかけだったことは間違いないでしょう。しかし、再びマレさんに入った彼女の様子を見る限り、本人は持ち直しているようでした。ですが、天使という本質は変わらず、身体の方は堕ち続け………やむを得ず、破壊することとなりました」
「それがあの大爆発に繋がるのか?」
「はい、その通りです。それが、ネルが右手に何かを囁きかけ、何らかの魔導を行使した故に起きた爆発です」
それが、俺の指輪と魔導適性を燃やし尽くした魔導か? それで堕天しかけてた天使の身体を止めれたと。
学園長にも止められなかった堕天使を一発KOするくらいの魔導なら………そりゃあ俺の魔導適性も焼き切れるか。そういう物理的なもんかは知らんけど。
「なるほど。おおまかなことは分かった。マレ君も理解できたか?」
「あ、は、はい」
多分、理解できてる。そもそも疑問も少なかったし。
俺的にはもう、なんかそこにいただけだったから、真相を知りたいとかもないし、説明はこれで十分。
「そうか、それならよかった」
魔王は少し微笑んだ後、学園長を縛るロープに手をかけて、そのままズルズルと引きずっていく。
学園長は抵抗することなく、どこか面倒くさそうな顔をしていた。
「では、家で待っているからな」
魔王はまたウィンクして、学園長を引きずりながらドアの向こうに消える。
すぐに解放しなかった辺り、まだ魔王には聞くことがあるっぽい。出てったってことは、俺達には聞かせられないものらしい。
「さて、次は学生寮に行くぞ」
「え、あ、分かった」
ライムに手を引かれて、俺達も教室を出る。
今更ながら気づいたけど、この学院は夜が基本だったせいで蝋燭やら光る石やらの照明がいっぱいだったのに、今はそのどれもが点いてない。
風の少ないこの国で少しでも風を取り込むためか、いくつも設置されている窓から差し込む陽の光だけが、この学院内を明るく照らしていた。
微風も絶え間なく吹き込んでくるので、ライムの足取りが軽い。そのせいで早足になってもう小走りみたいな速度だけど。
「子ども達が心配してたぞ」
ふいに、前を歩くライムがそう言った。
「もう少し周りを見たらどうだ」
少し考えて、その言葉の意味を理解する。
物理的な話じゃなくて、周りの人をちゃんと見ろって言いたいんだろうけど、俺なりに見てるつもりだし、付き合い方も考えてる。
これ以上どうしろと………
「聞いたことはないか? 他人は己を映す鏡だと」
………聞いたことはある。でも、共感したことはない。
だって、本当にその言葉通りなら、俺はこんな面倒臭い奴になっていない。
「………覚えておくだけでいい」
俺の方を少しだけ振り向いたライムはそれっきり、何も喋らなくなった。




