第26話 飛んで火に入る夏の虫
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ここにある装備はちょうど俺含めて4人分。剣も鎧も盾もあるのだが、装備の大半がボロボロで、このまま城に突撃するとなると、城の門の時点で鎧も剣も粉々に破壊されてしまうだろう。
かと言って贅沢を言っている暇もない。この装備で行くしかないのだ。
そして、落下傘の1つを使って試すことにした。本番で失敗しては落下傘の意味が無い。
結果は散々だった。
実験に使ったは軽く50mはある。ドラゴンの助けも借りつつ頂上から飛び降りてみたが、教わった通りにやっても傘が開かない。30m、20m、と地面への距離が近づいていっても開かない。
結局開いたのは、地面スレスレ。危うく死ぬところだったが……本当に使い方は合っているのか。
「まぁ、持っていかないよりはいいだろう」というロックの意見の元、持っていくこととなった。本当に使えるのか? そもそも使い方は合っているのか?
「作戦は、まずドラゴンの背中から飛び降りた後に落下傘を開いて着地する。城の中に入り、国の主を探し出す。その主を説得できたら説得する、できなくとも何か行動を起こす」とヘイトリッドは念入りに説明する。
俺はよく分からなかったが、この国の主の名前は”リアーノン・マキシミ”というらしい。こいつをどうにかすれば、モンスター共々救われるはずだ。
薄暗い森の中、村の外れで杯を持ちロックが言う。
「モンスターと人間のために」
俺も含めた4人は、黒い液体の入った杯を上に掲げた後、そのまま口にした。この液体は、アミティエの店で飲んだものと同じ液体らしい。色々な出来事が思い出される。
今まで色々とあったな。全く知らない土地で記憶喪失となった俺は、白蛇も倒してドラゴンと出会い、黒ずくめの剣士を倒しロックにも出会い、ヘイトリッドたちと共にアミティエの店に行く。色んなことがあった。
にしても、黒ずくめの剣士。絶対にどこかで見たことがある。これは気の所為なんかではない。確実にだ。
後、俺とガイアさんは戦闘経験があるが、ヘイトリッドとロックはどうなんだろうか。ロックは何でもこなせそうな強者感が見て感じ取れるが、ヘイトリッドに至っては過去を全く知らない。彼も立派な戦力になるといいな。
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2日経って、朝。
巨大な木の頂上に4人と1匹。これからライムートの中心部にある城を襲撃する。普通に考えれば負けてしまうだろう。情報によれば結界まで張られているらしい。が、俺がいる。俺は自信に満ち溢れている。今なら何でもできそうな気がする。
やるしかない。白蛇を倒し、ヴィエラ城の中心部まで侵入することのできた男だ。今回は3人の仲間がいる、大丈夫。
楽しみだ。
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俺たちが現在暮らす村からライムートまでの距離はとてつもなく離れている。普通に徒歩や馬で行けば……3日はかかるだろう。
だが、俺たちは違う。ドラゴンがいる。ヤツのおかげで、4時間弱で到着することができるらしい。城に結界が張られているのであれば、ヤツは戦闘面では役に立たない。故に移動で活用するしかない。
結界は人間の目には見えるらしいが、モンスターからしたら透明の壁にしか見えないとのこと。ロックは何でも知っている。彼のお陰でここまで来れたというのもある。
「見えた、ソーラル城だ」
ヤツは飛びながら俺たちに伝える。
レインマークのヴィエラ城は街のど真ん中にあった訳だが、この城は周りに建物がない。草原にポツンとこの城だけが建っている。不思議だな。
結界を視認できるのは俺たち人間だけ。結界スレスレで着地できれば……使用方法がよく分からない落下傘を使わなくて済む。
が、その結界が俺には見えない。
「結界が見えないのか?」とヘイトリッドは俺に尋ねた。逆に彼らには見えているのか?
ヘイトリッドもロックもガイアさんも、緑色の結界を視認しているらしく、ドラゴンと共に着地位置を調整している。
俺には見えない。見えないというよりかは、ぼやけて見える。
薄っぺらい緑色のモヤが城にかかっているが、それが結界だと言うのか。ならもう少し認識しやすい結界を開発してほしいものだ。それとも俺の視力の問題か?
「行くぞ!」
ロックの掛け声と共にドラゴンの背中から飛び降りる。城の屋上との距離、わずか……3m?
急いで受け身を取ることで無事に身体を痛めることもなく着地することができた。
結界は思った以上にギリギリに張られていた。落下傘を使う必要もなく、ドラゴンもここまで近づくことができた。ある意味ありがたいが、これでは結界の意味が無いのでは、と俺は疑問に思った。
さて、空から4人。剣を持つ者もいれば、盾や鎧を有する者もいる。これを見た警備の人間が何と言うか、俺は容易に予想ができる。
「侵入者、4名!」
警備の人間は6人ほど屋上にいる。
彼らは俺たちに向かって剣を構え始めた。
彼らは侵入者である俺たちを倒すのが目的、逆に俺たちはマキシミに会うことが目的だ。ここで戦っている場合ではない。
「先に行け!」
ヘイトリッドが大声でそう言い放つ。彼はここに残ろうとしている。警備の人間は厄介だ。できるならここで潰しておきたい気持ちは分かる。が、1人で大丈夫なのか?
「いや、私もここに残る」とロックが言うが、それは彼に断られた。彼は逆にガイアさんをここに残そうとしていた。
「シアンの件、誠に申し訳ございません。が、今はやるしかないので……お願いします」
彼の表情と言葉には誠意が籠っていた。
「シアンが楽しい時間を過ごせていたのならそれで満足だが、危険な目には遭わすなよ」
ガイアさんはそう答えた。
シアンさんの記憶喪失の下りの、あのピリピリした状況から一転した空気。彼らなら厄介なヤツらを蹴散らしてくれるだろう。
「行こう」
彼らにやりとりを黙って見ている場合ではない。ここは彼らに任せて、俺とロックでケリをつけに行こう。
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「来たか……。飛んで火に入る夏の虫、待っていたぞ……」
薄暗い部屋の中で、紫色の服を着た奇妙な男は嘲笑う。身長も高く、鋭い牙を持つ男。彼は本当に人なのか。
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