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第25話 炎の中

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 森に着いてからの俺がとるべき行動は一つ、鈴でドラゴンを呼び、一度村に帰る。一旦思考をリセットしなければ、俺たちの頭はパンクしてしまうだろう。落下傘を幾つかの情報を手に入れた今、やるべき事も出てきた。


 ブルート村に寄ることも考えたが、この警備の数はえげつない。森からも視認できるほどの警備の人間がアミティエを取り囲んでいる。とてもじゃないけど寄ることなんてできない。


 一旦、家に帰ろう。


 チリンチリン……鈴を鳴らした。


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 ゴオオオオ、ゴオオオオ、と音を立てて燃えている。

 周りの建物は既に炎の中。鎧を着た人間らはあたりかまわず建物に火をつけていく。

 ゆっくりと時間をかけて燃えていく物体もあれば、すぐさま消え去っていく物体もある。


 燃え盛る炎の中で、2人の人間は未来に希望を託した。


 未来は尊く、美しく、儚く。


 モンスターと人間が救われる……その日を願って。


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「くっそ……」

 ここはいつもの木の上。俺もロックもヘイトリッドもドラゴンも無事に”生き着いた”。辺りはすっかり夜、下にいる村人たちはすっかり眠りに入ったかもしれないが、俺たちはそれどころでない。


 ロックやヘイトリッドからしたら、それはもう大事な団員を目の前で失ったのだ。アミティエを後にした俺たちは、直ぐに店が燃えていることに気がついた。しかし為す術もなく、村に帰ることしかできなかった。


 くよくよしている場合ではない。急いで下に戻り、ガイアさんたちを呼び、アミティエであった事を話した。

 落下傘を貰い、情報も貰い、その上アミティエから逃がしてもらい、彼らはそのまま炎の波に呑まれたことを全て話した。


 ヘイトリッド自身も全てを話した。自分がモンスター保護団体の団員であったこと、シアンさんはともかくキミカさんやガイアさんにも黙っていたこと等、ほぼ全てのことを話した。


「ルンフイ村のアイツだったのか」

「まぁ私にはよく分からないけど、スパイとかそういうの?」


 キミカさんとガイアさんは本当かどうか疑いつつも納得した様子だったが、シアンさんのみ自身が記憶喪失なのを受け入れられずにいるため、納得せずに首を横に振り続けた。


「アイが……嘘の名前って意味が分からないよ。アレア・ヘイトリッド? ストラート村でしょ、私の生まれは」と、彼女は自分がルンフイ村で生まれたということを認識しておらず、ずっと困惑している。


 埒が明かないからか、ヘイトリッド自身が口を開いた。


「君のお母さんはモンスターにやられた。ストラート村じゃなくて、ルンフイ村でだ。僕の目の前でゴブリンに痛めつ--」


「いい加減にしろ!」とガイアさんは強い口調で口を挟んだ。彼の顔はドス黒く、血管もはち切れそうなほどに怒りをあらわにしていた。

 シアンの母、彼からすれば自分の妻だ。彼の前で死に様を具体的に説明するのはお門違いなはずだ。


 しかし、記憶喪失の彼女の納得を待っていれば話が進まない。申し訳ないが、彼女を一旦置いておいて話を進めることとなった。


「----ということで、結界が張られているとされるソーラル城に突撃することにした。モンスターに罪はない、モンスターを操る人間が悪だ」

 ロックとヘイトリッドが彼らに説明した。


「突撃すると言っても何をするのか? まさか人を殺す気か?」とガイアさんは質問する。

 その通りだ……とは俺の口からは言えない。実際、俺は何人ばかりか斬り捨てるつもりでいる。アミティエでの出来事があったらか、無くてもこの作戦に至っていただろう。

 

 だとしても……討伐者の彼からすれば、本職はモンスターを倒すことである。人を殺したことなんてないだろう。


「いや、殺す訳では無い。気絶させるだけだ」と一応補足をしておくロック。


 時には人を殺すことにはなるかもしれないが、基本は殺さない。相手は本気で殺しにかかってくるかもしれないが。


「私はこういうの慣れてるから!」とキミカさんが口を挟む。絶対人を殺したことなどなさそうな外見をしている上に、彼女を戦闘に参加させることはできない。もし戦闘能力があるとしても、この村を守ってもらわないと。


「人を殺す殺さないは分かったが、装備はどうするのか?」とまた聞かれる。

 これは正直考えていなかった。俺の装備は、ドラゴンに連れられた塔に残っていた装備や黒ずくめの剣士や門番が着ていた装備を拝借したものだ。塔に装備を拝借してもいいが、4人分の装備が残っているかどうかも微妙である。


 かと言って、どこかの武器屋で購入することも難しいだろう。現状、指名手配されているといっても過言ではない状況だ。レインマークには行けず、アミティエにも行けず……ならどうすればよいのか。


 やはり、有識者であるヤツに聞いてみるしかないか。まだ上に居たはずだ。


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「よお、ドラゴン。話がある」と自分の中では気さくに話しかけたつもりだが、ヤツは怯えたように振り返った。涙を流していたのか、ヤツの目は若干潤っていた。


「塔にはどれくらい装備が残っている?」

 ヤツの目には触れずに聞いた。ヤツも目について触れられたくなかったのか、目を強く瞑ったまま話し始める。


「ダンジョンに来る人間は沢山いた。よって装備も沢山ある。が、もし足りなければ他のドラゴンがいるダンジョンに行けばいい……」


 ん? 他にもドラゴンがいるのか? この目の前にいる、少し腹の出た目の前のドラゴンの他にも、ドラゴンが存在すると言いたいのか?

 なお、ヤツが他のドラゴンの存在を言及したことは1回も無い。


「まぁ、彼らとは色々とあってな……何百年かは会っていないが」


 少し複雑な状態らしいが、俺が訪れたことのあるダンジョンで装備が足りなければ、その他のドラゴンがいるダンジョンにも行くことにしよう。


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「お久しぶりですね」

 声帯も肉も何もないスケルトンが俺に向かって話しかける。ここはダンジョンの頂上、以前装備を拝借するために来たことがある。


「4人分の装備はあるか? 剣と鎧さえあれば何でもいい」と俺は骨野郎に言う。骨野郎は察したのか、急いで下に取りに行く。


 ドラゴンはどこか遠くを見つめている。辺りは真っ暗で何も見えないはずだが、ヤツは目がいいから暗闇でも何が見えるのか。


 シャァァァァァ……


 足元から鳴き声が聞こえる。この声は……白蛇か?

 下を見ると、俺の足元に……白蛇がいた。正確には白蛇の子、以前塔で友情の証の盾を俺に渡したあの生物だ。懐かしい、と言ってもあれからそこまで経っていないが。


「ありましたよ、装備」と骨野郎は息を切らしながら大量の荷物を持って来た。肺も心臓もないのに、どこでどうやって息切れを起こしているのか……本当に本当に分からない。


「あぁ、この子懐いていますね」

 白蛇の子は俺の足元にいたはずだが、いつの間にか肩の上に乗っていた。

 この子の親は俺が殺したあの白蛇である。親を殺した人間に懐くとは……。


 骨野郎にお礼と別れを告げ、村へ戻った。なお、白蛇の子は俺に懐いたままなので、そのまま連れて帰ることにした。


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