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12 冒険者ごっこ

「ソフィは将来なりたい職業とかあるのか?」

 特に意味もなくソフィに聞いてみたところ、

「冒険者になりたい」

 って即座に返ってきた。

「冒険者とか知ってるんだ」

「グレゴワールとここまで来る途中でちょっとだけ一緒だったの。旅の商人のキャラバンの護衛とかしてたよ」

 旅の商人と一緒なら迷子にならないからな。方向音痴のグレゴワールがよく使う手だ。


「お父さんも若い頃、冒険者してたことがあるぞ」

「本当? すごーい」

 ソフィがキラキラと目を輝かせてるけど、それほどすごいことでもない。

 冒険者とか誰でもなれる、ある意味底辺の職業だ。

 ソフィに勧めたい職業とは思えないが、将来どうしてもなりたいと言うのならその時は反対するつもりもない。


「よーし、それなら冒険者のまねっこしてみるか?」

「するするー」

「よし、冒険者の最初の仕事の定番といったら、薬草採集だ」

「お父さんも薬草採集したの?」

「俺はしなかったような気がする。最初からゴブリン討伐とかしてたかな?」

「わたしもそっちがいい」

「ゴブリン討伐はまだ危ないからダメだ。いろいろ勉強してからだな」

「はーい」

「それじゃ、薬草採集行くか?」

「行くー」


「ちょっと待って」

 二人で出かけようとしたらルシールから待ったがかかった。

「ジェラルドにまかせたら、また毒草とか雑草混ざってるからわたしも行くわ。

 どうせなら、お弁当持って三人で行きましょ」

「わーい、お弁当お弁当」

 ソフィも嬉しそうなので、そうするか。

 でも、間違えて毒草とか採ったのは結婚最初の頃だけで、ルシールにちゃんと教わってからは、ちゃんと普通に採集できるようになってたぞ。


「お父さん、質問!」

 ルシールがお弁当を用意してくれるのを待ってたら、何かソフィが質問があるようだ。

「どうして、薬草採集は冒険者のお仕事なの?

 草を取ってくるお仕事なら普通の人でもできるよね」

 はて? そう言われてみるとそうだよな。

 どうして、なんだろう?

「それはね、ソフィ」

 俺が困っているとルシールが答えをしっているようだ。

「普通の森とかにも薬草は生えるけど、魔力のある土地には薬草は生えやすいの。

 だから、たくさん薬草を集めたかったら、魔力のある土地に行ったほうがいいのよ。

 でも、魔力のある土地にはよくモンスターもいるからね。

 だから、薬草採集は冒険者のお仕事になるのよ」

 そういうことだったのか、知らなかったよ。


「この森には魔力があるの?」

「割りと魔力が高い土地だよ」

「なら、モンスターも出るの?」

「昔はこのあたりにもいっぱい出たけど、お父さんが見つけるたびに倒してたら、いつの間にか家のまわりにはいなくなっちゃったわね。

 モンスターも知恵があるから、あそこに近づいたら危ないってわかったんでしょうね」

「ほほぉぉ、お父さんすごい!」

 おぉ、なんか知らないうちにソフィに褒められたぞ。


「それじゃ、お弁当の準備もできたから、森へ行きましょうか」

「はーい」

 ソフィを真ん中にして俺たち三人は手を繋いで森へと出発した。


「薬草はね、日の当たらない暗いところに生えやすいの。

 だから、背の低い木が集まってるところとかに多いわ」

 ルシールはそう言うと、目星をつけた木のあたりへ行ってしゃがみこんだ。

「ソフィ、ここを見てごらん。

 これが薬草、濃い緑色で葉っぱがギザギザ」

 葉っぱを裏返して見せて、

「そして葉っぱの裏側が白いの。

 白くないのは毒草だったりするから、気をつけてね。

 毒草は毒草で使い道もあるんだけど、今日はなしね」

「はーい」

 よく裏が白くないのも集めて、ルシールに怒られた記憶があるな。


「お母さん、これも薬草?」

 ソフィが薬草を見つけたようだ。

「そう、正解よ」

 ルシールが確認してOKを出した。

「やったー」

「じゃ、根っこごとむしっちゃうのがいいわ」

「はーい」

 ソフィは薬草をむしって俺が持っている籠に入れていく。

 俺はむかしどおりに籠を持ってついていく役割のようだ。

 当然、お弁当も俺が持っている。


「この先にお花が綺麗な丘があるから、そこでお弁当にしましょう」

 ルシールの提案した場所でお弁当。

 ピクニック気分ですね。こういうのもいいものです。


 昼食後も引き続き薬草採集。

「また、みーつけた」

 どうやら、ソフィは薬草採集の要領が完全にわかったようでどんどん薬草を見つけていく。

 よく考えてみると視線が低いソフィにはもってこいのお仕事だったようだ。


 すぐに俺の持っていた籠もいっぱいになった。

「籠がいっぱいになったから、このあたりで終わりにしよう」

 俺の呼びかけに、

「「はーい」」

 ルシールとソフィからいい返事が帰ってきた。


 帰り道もソフィを真ん中に三人手を繋いで家路へ。


 帰宅してテーブルの上に俺は籠を置いた。

「ほら、ソフィ。

 ギルド依頼の報告をしないと」

「えっ誰にすればいいのかな?」

「お母さんにすればいいと思うよ」

「はーい」


「お母さん、薬草採集完了しました」

「はい、お疲れ様。報酬のお菓子ですよ」

「わーい」

 ソフィにお菓子を分けてもらって、いっしょにおやつにした。

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