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遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第4章 敵対者の離岸 
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 閑話 流れでやってしまった大馬鹿

 朝、目が覚める。

 右を見ればレイアが、左を見ればシャルティ(サキュバス)が俺の腕枕で心地よさそうに眠っていた。

 お隣のベッドを伺い見れば道中で遭遇したニワトリ幼女……じゃなかった。

 フェニックスのフェネとかアルルーナのアル。

 さらのそのお隣にはエアリー。


 右のレイアはまだまだ体がアレで合法なろ……言うまい、詳しくは言うまい。

 それと前科のある俺は否定はしない、できない。というか前科というよりもクソ中尉のせいで……。

 左のシャルティは豊満な体。サキュバスなだけあって、さらに魅了とかいうスキルまであって男を誘惑することに長けている。

 変に男を引き付ける甘い匂い(俺やスコールには無効)に紫色のウェーブがかかったロングヘア。

 そこからちょこんと角が生えている。そして背中には蝙蝠のような黒い翼。

 ちなみにこれは半分お飾り。こんな大きさじゃ飛び上がれるほどの揚力は生み出せない。魔法で飛ぶんだ。

 さらに豊かな二つの丘、細い腰に丸みを帯びた尻、脚はしなやかな……、丸っきり変態じゃないか。


 こんなに可愛い美少女&美少女が全裸に薄い毛布というあられもない姿で俺の腕枕で眠っている。

 こんな状況をみて、頭の中に上がってくるのは”疲れた”、ただそれだけだ。

 いい加減に腕が痺れてきた。


 起こさないようにそっと腕を引き抜いて服を着る。

 あぁ……久々に筋肉痛だ。

 十連戦はきつい。


 運悪く戦場に入っての乱戦。

 抜け出した先での遭遇戦。

 逃げる途中の遅滞防御戦。

 その後、休む間もなく山賊相手に殲滅戦。

 終わった後によってきた獣人相手の白兵戦。

 荒野を移動中、魔物との縄張り争奪戦。

 道を間違えてからの睡魔族サキュバスとの一戦。

 その後にテクテク歩いてきたニワトリ、もといフェニックスの復讐戦リベンジマッチ

 なんとか街の宿についてから、押し倒されて(レイプ紛い)の一戦シャルティ

 もうあまり長くないから最後の思い出にと(合意の上で)一戦レイア


 やめてくれ、俺は超人じゃないんだ。

 一日の間に何回戦闘すればいい?

 まあ、過去に一日でスコア千単位でたたき出してるから、殺しについてはどうこう言えないんだけども。


 あぁ、それにしても……。

 すまん! シルフィ、エクリア、ほか沢山!

 俺はどうも流れで押されてやってしまうようです!

 だが君たちのことは決して忘れない。

 それと出会いからゲスことをしてしまったことは忘れてくれ。

 さらにレイズよすまん!

 過去の仲間たちに詫びていると空いたドアの隙間からレイズが覗いていた。

 どうやら来いといいたいらしい。


 軽く身支度を整えてから部屋を後にする。

 あちこちにナイフを隠し持つのがすでにクセになってるな。

 ベルト、靴裏、靴下、ズボンのポケット、生地の裏、袖の内側。

 いつぞや「お前、ナイフ屋か?」なんて言われもした。


 レイズについていく。

 宿の外のテーブル席まで歩く。


「……わるい」

「別に浮気だなんだとは思ってないさ」


 そこには朝食と葡萄酒ヴィーノ

 サラダに魚のスープ、それとスライスされたバゲット。


「食いながらでいいから答えろ。これからどうする?」


 相変わらず露出過多のウェディングドレスの格好だ。

 体型もあのまんま。

 どうやっても脱げないし、魔法での体型変化もできないとのこと。


「どうするったって、まずの俺の目的は後回し。レイアの寿命についてとエアリーをアキトのところまで送ることが優先事項だ」

「寿命……あいつは特殊召喚だから寿命はないはずだが。ついでに言うとアッチの機能もしっかりとついてるし」

「でもなんか言ってたぞ?」


 パンを運ぶ手が止まった。


「……まさか、ゼロがなにかしたか? もしかして体に痣みたいなのがなかったか?」

「ゼロについては何かしてやがる。それに、さっき毛布がずれたとき、腹に内出血のような箇所がいくつかあった」

「そうか、後で治すとしよう。んでもって帰りに説教しに行ってやるか」

「よろしく頼むわ」


 パンやらサラダやらを口に押し込んでスープで流し込む。

 やることがあるから食事に時間はかけられない。


「それにしても、ハーレム野郎だな」

「うぐっ……」

「まあ、悪いとは言わん。強いやつには自然と寄ってくるからな」

「……そういやお前もだったな」

「ま、いんじゃねえの? 女同士で諍いを起こすこともないし……まあ、ハーレム作ってるやつ見ると胸糞悪くとかはあるが」

「……」

「まあ、作った以上は全員平等且つ、周りに文句言わせないほどに力はつけろよ」

「はぁ……つまりそれは主の失敗談からってことか」

「そういうことだ。こっちはまあ、なんだ、力はあったが平等じゃないが故に、な?」

「なるほど、これ以上痴情のもつれは聞かないことにしよう」

「そうしてくれると助かる」


 そこでボトルごと葡萄酒をあおった。

 レッドのほうだからそれなりに辛口だし、飲みすぎはよくない。


「ゲホッ、ゲホッ……」


 ほら、言わんこっちゃない。


「と、とりあえずだ。フィーアのことはお前に任せる」

「フィーア?」

「レイアの……お前と一緒にいたクローンの名前だ」

「あぁなるほど、識別名がないと同じだから分からないってこと。それにしても4(フィーア)か、意味は?」

「世界4に配置していたから、それだけだ」


 食べ終えた食器はそのままに席を立つ。

 後は宿の人たちが片づけるのだろう。

 腹ごなしの運動と人気のない場所への移動を兼ねて歩く。

 十分も歩けば宿から、さらに言えば街から離れた川べりにたどり着く。


「で、昨日言ってた”用事”ってなんだ?」

「まずはこれだ。”オレ”が使う概念魔術のダウングレードバージョン」


 そう言って無色透明の珠を渡して来る。

 どう見てもガラス玉にしか見えない代物だ。


「……あのな、俺は魔法使えねえの」

「だから魔術だ。これならお前の能力で魔力を組むだけで発動できる」

「はっ? 結局魔力を使うなら……」

「大丈夫だ。発動プロセスを真似するだけでちゃんと使える」

「なんだそりゃ……魔法って先天的な素質でどうこう言ってなっかたっけ?」

「ああ、魔力を操れるかどうかってところだ。別にどういう手段でもいいから魔力を制御できれば使える」


 んなムチャクチャな……。

 ほんとにそうだったら剣士とか盗賊とかの非魔法職だって使えるってことじゃないか。


「そもそも魔力とかいう訳分からん変なエネルギー体を物質だのそれに作用するエネルギーだのに相互変換して現象を引き起こすのも魔法の一つだ……オレやレイアみたいな情報を書き換えるって例外はあるけど。

 そしてそれを思い通りに制御するためのプロセスを詠唱、イメージ、魔法陣とかで行う。

 ならそれと同じプロセスを頭の中で再現すれば、同等の結果が現れる」

「もっと簡単に頼む」

「そうさな……データを表す文字の羅列(バイナリコード)を頭の中で再構築して、そのデータを再現するようなもんか?」

「それ人がすることじゃねえ」

「もっと言えば、機械語をリアルタイムで翻訳するようなもんだな」


 無理だとしか言いようがない。

 人間の演算速度はそこまで早くない。

 それに無理やりにしようものならば脳がオーバーヒートして焼け付くだろうな。


「ま、そんなわけで魔法は無理。だから魔術だ」

「どう違うんだよ……」

「魔法は詠唱なりなんなりで自動化されている。対して魔術はプログラムを一から作るのと同じで、自分で組み立てて発動させるもんだ。例えばこんな感じで」


 レイズが腕を振るうと、追従するように光の粒子が舞い始める。

 腕を回して円を描く。

 その軌跡に光の線が描かれ、魔法陣の枠のようなものが出来上がる。

 そして円の中心で手を広げて意識を集中させ細かな模様が描かれると同時、唐突に消えた。

 瞬間、俺に向かって水弾が撃ちだされる。


「うわっ!」

「こんな感じだ」


 躱した”砲弾”は遥か後方にクレーターを出現させていた。

 当たれば上半身が消えていただろう。

 たかが水、されど水。


「魔力自体でプログラムを創るんだ。自分だけのオリジンマジック、ここから派生させて他人に真似できないものを――」

「まず謝れ! 殺す気か!?」


 超高速で水を撃ちだせば金属だって切断できる。

 それを面積を増大させ、尚且つ威力も相当分増大させたものを撃ってきた。

 俺やレイズじゃなきゃ回避はおろか見ることすらできないものだ。


「別にいいだろー、お前はオレの爆裂岩砲弾を受けてなおかすり傷だったんだから」

「昔のことを掘り返すな」


 ほんとにさらっと言ってくれるな。

 あのときは自称雑用係を名乗ってた意味不明な奴が高ランクの魔法を連発してきたんだ。

 いきなりで驚いたよ。


「まあやってみ?」


 レイズが俺の頭に手を当て、さっきの透明な球が体に吸い込まれる。

 何かの図が記憶領域に刷り込まれる。

 恐らくこれが『魔術の設計図』なのだろう。


『特殊技能、概念魔術・基礎を取得 神話魔術・基礎を取得』


 そして変な声が頭の中に響く。

 この世界に来てからというもの、最初のうちは電波受信状態になったかと思ったよ。

 でもだんだんと聞こえなくなって今また聞こえた。

 この声の正体はなんだ?


「とりあえず、最初はゆっくりやっていけ。算数と同じでやってるうちに慣れる」

「小学生じゃあるまいし、せめて数学と言え」

「いいんだよ。それ基礎だから」


---


 こうして俺、クロード・クライスの魔術練習が始まった。

 ついでにエアリーの魔法練習も兼ねての簡単な撃ち合いを同時に行う。

 俺が火球ファイアボールを撃ち出して、エアリーが水球ウォーターボールで打ち消すという簡単なものだ。

 お互いに無詠唱。

 レイズが言うには高等テクニックらしい。


 火球は命中寸前に消滅するように組む。

 しかしエアリーの水球はそのまま飛んでくる。

 魔術の構築中にやられると反応できずにもろに食らうという事が多発中だ。


 センスはあるらしい……エアリーには。

 俺はなんかちょっとしっくりこないという評価をもらった。

 いままで職業で言うならば似非魔法使いだったもんで変なクセがあるらしいのだ。


 俺の能力を使って、

 酸素高圧縮で火属性、

 水分子のみに作用させた能力で水属性、

 分子の摩擦で雷属性、

 気体を操って風属性、

 空間を捻じ曲げてそのまま空属性、さらに時属性、

 などなど重力操作(引力と斥力)の応用で色々できていた。

 どうもそのクセが抜けきっていないらしい。


---


 夜半。

 皆が寝静まったころ。


「クロード、フィーアの”治療”は済ませておいた。オレはいったん帰るが、ほかにやっておいて欲しいことはあるか?」

「とくにねえ……いや、一つ」

「なんだ?」

「俺が帰れるようにしてくれ」

「……出来なくもないが、かなり時間がかかる」

「それでも構わない」

「分かった」


 パチンッと指を鳴らす。

 瞬間、レイズの体が赤と白の炎に包まれ始める。


「あ、そうそう。お前にこいつらを預けておく。好きに使ってくれ」


 俺のほうに向かって、赤、青、黄、緑の何かが近寄ってきた。

 この色は……基本の四属性?


「イフリート、ウンディーネ、ノーム、シルフ。オレの専属契約だから魔力消費はない」

「分かった、使わせてもらう」


 レイズの姿が完全に消え去った。

 俺は絶対にもとの世界に帰る。

 決戦の場所はあそこしかないのだから。

次回更新は5月4日の予定です。

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