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遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第4章 敵対者の離岸 
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殴り無双

 俺、霧崎アキト十七歳。 

 おそらく、もう少ししたら十八歳だと思う今日この頃。

 現在、杖片手に殴りウィズで無双してます。

 お相手はみなさんご存じ、俺のトラウマであるスケさんです。


「だらっしゃああぁぁぁ!」


 思い切り地面に杖を叩き付けて小規模クレーターをつくる。

 骨格がばらばらになって、吹き飛んでポキポキ骨が砕け散る。

 それでも次から次に地面から骨がでてスケさんが増えてゆく。

 いい加減うざいよ。

 しつこい男は嫌われるのよ。


「クァァァッ!」


 甲高い鳴き声を上げながら空から魔物が下りてくる。

 ライオンヘッドにゴートボディ、そしてスネークテイル。

 キマエラだな。もしくはキメラか。

 周辺のスケさんが距離を開けて一対一タイマン


「今ならやれそうな気がする!」


 スケさんを蹴散らしていい気になっていた俺は無謀にも突っ込んだ。

 キマエラの瞳が妖しく光る。

 体の周りに魔力の蒸気とでもいうべきものが立ち昇って、禍々しい口を開き――


 キュガッ!


 ありえない音を出して破壊光線が放たれた。

 今の俺にかなうもの無し!


「オラァァァ!」


 俺に向かってくるのは光の柱。

 例えるのならば対地衛星群から放たれるサテライトレーザー。

 太陽の中心部分をそのまま放出したような純白の脅威。

 てか、実際にそんなもんがあったらエー○ンベルクでもないとな。


 と、無駄なことを思いつつ俺はそれを迷わず殴りつけた。

 それだけで光の奔流は四方八方に飛び散って、俺の後方に深い亀裂を刻み、消し飛ばす。

 そのうちの一本が真上に飛び上がって曇天の空に穴を穿つ。

 一瞬押されそうになるも、さらに魔力をつぎ込んで押し返す。


「ハァッ!」


 完全に四散した。

 攻撃した後の隙だらけのキマエラに接近して、殴る!

 ドップァァアン!

 肉片と血が飛び散って辺り一帯がグロテスクなモザイク必須な状態に変わる。

 と、同時に再びスケさんたちが戻ってくる。

 今度は剣を持ってるやつが混じってるな。


「せぁっ!」


 近づいてきた最初の一体に手刀を放つ。

 ぼろぼろと崩れるかと思ったが、予想に反して綺麗にスパッと切れてしまった。

 そいつが持っていた剣がカランと音を立てて落ちる。

 俺はそれを拾って軽い気持ちでヒュンと振り下ろした。

 すると――


 ビュオン、ドガァァン!!


 まるで剣の先に見えない刃がついているかのように、剣閃にそって荒野に斬撃が走った。

 そして剣は柄の辺りでぽっきりいっていた。

 こりゃあ……俺は剣は使えないな。

 そんなことを思ってる間にスケルトンが逃走を開始したよ。

 まあ、面倒だから追撃はしないけど……。


 というかね、言いたいことがあるのよ。

 俺たちの一般常識である物理法則はどこにいったの!?

 なんなのさっきの!?

 直接触れてすらないのに剣撃で大地が吹き飛ぶとかなんなの!?


「…………いや、もういいか。この世界で俺の”常識”はどんどん変わっていくな、うん」


 それ言ったら魔法だってねぇ……。

 いや、俺のいた世界にも魔法はあったけどさ……。


「あ、危ないじゃないの!」


 なんて思ってたらフライアが涙目でこっちに来た。


「なにが?」

「さっき私のほうに飛んできたやつよ! 弾けなかったら死んでるわよ!」


 ……あれ?

 さっきのって……あの破壊光線か!?


「すんまんせしたぁぁ!!」


 久々の土下座。

 いやー俺ってさ、最初にプライドなんてないって言ってるし。

 この程度で自尊心が傷つくこと……いや、それすらないな。


「い、いいわよそこまでしなくても……ケガもしてないし」

「ほんとの?」

「ええ」


 許されたようなので立ち上がる。

 さっと周りを見ると、近くに魔物(除・頭の上のスゥ)はいない。


「ほら、行きましょ」


 そう言っていきなり腕をからませてきた。

 柔らかい二つの丘が腕にぷにぷにとあたる。


「い、いきなりどした!?」

「いいじゃないの」

「……」


 これはあれか。


「もしかしてスコールみたいなのと遭遇したら怖いからか」


 俺がそう言った瞬間、ビクッ! と体が震えた。

 図星だな。

 まあいいか。

 悪い気分じゃない。

 というか、俺にピンク色の展開は来るのか?

 いや、いままでも結構あったけどさ……。


 ---


 あれから数日。

 歩けど歩けど街は見えない。

 代わりに切り立った崖が見えてきた。

 まだまだ距離はあるけどはっきりと見える。


「道……あってるよな?」

「あってるわ。あの上に街があるはずよ」

「来たことあるのか?」

「一度だけね」


 てことはあの崖をクライミングする必要があるわけか。

 どうやって登るかな……。


 ---


 ニヴルヘイム南東、荒野のどこかにて。


「あの、クロードさん」

「ん?」

「クロードさんはどうして私を守ってくれるんですか?」

「…………気分」

「気分、ですか……」


 そう、気分だ。

 前にもこうやって気分で一国の軍を相手に、たった一人を助けるために無茶したからな。

 大した関係もないやつのために部隊を壊滅させた。

 それでも、一度でもその理不尽を見てしまったなら、俺は放っておけない。

 敵であるならばそれは例外だが。

 そんなわけで、もし放っておいてそこらで餓死したり、魔物に食い殺されたりしたり、はたまた人攫いに掴まって慰みにされるようなことがあれば……。

 それは最悪の気分だ。


「優しいんですね」


 結局は自己満足。

 自分が嫌な思いをしたくないから勝手にやっているだけのこと。

 だから、


「俺はそんなことを言われる資格はねえよ」


 本当にそれはない。

 かつて一人の同僚を助けるために容赦なく味方を切り捨てたことさえあるのだから。


「それはアキトにでも言ってやれ。あいつは変なところでお人好しが過ぎるからな」

「……はい」


 エアリーの顔に影が落ちた。

 かなりつらいだろうな。

 ここ数日、アキトの偽物ドッペルと遭遇することが多い。

 と言ってもどうせはクソ野郎どもがわざわざ仕向けているんだろうが。

 遭遇するたびに戦って、そのたびにエアリーの攻撃には躊躇いがかなり混じっている。

 まぁ、好いた相手を攻撃するのは引けるか……。


 にしても、ほんと似ているな。

 髪の色がレイアに、魔力もだけど。

 まさかあいつらが何かしやがったか?

 そうだとすれば、ただでさえ低い信頼度がメーターの底を突き破るぞ。


「なあ、お前って――――」

次回更新、およそ一時間後の予定です。

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