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16.ポールにかかればイチコロです!

『コケーーコッコーーー!!』

突然の大音量にベットからころがり落ちる、アイリとスイリ。

寝ぼけ眼をこすりつつ、ベットを見てみると、なぜか堂々と中心部に君臨している鶏の姿がそこにはあった。

昨晩ベットの支柱に括り付けていた手綱をどうほどいたのかわかならいが、器用にほどいた鶏は、するりとアイリとスイリの間に入り込み、ご丁寧に耳元で早すぎる朝を告げてきたのだった。


窓を開けると、まだ夜明け前。

あまりの早朝すぎる目覚ましに、5歳児の身体は自然と瞼が落ちていく。

だが、鶏は何の恨みをもっているのか、パタパタとベットから飛び降り、爪とくちばしでアイリだけをつついてくる。

振り払っても、執拗に『コッコ、コッコ』と鳴いては突くを繰り返してくる。

(この鶏!丸焼きにしてやる!!)

寝不足も相まって、どう調理しようか本気で考え始めたその時、母が不意にポンと手を叩いた。

何かと思い視線を向けると

「コッコちゃん、お腹がすいているのよ」と。

母が言った言葉がわかったのか、鶏は頷くように首を縦に激しく振った。


思い返してみれば、昨晩ご飯あげていない。

それは、夕方に連れて帰ってきたため、すでに夕飯のエサは与えられているかと思っていた。

なんせ銀貨2枚する鶏だ。

てっきりある程度大切に育てられたのだろうと思っていたが、改めて触ってみると、羽はふわっとしているが、身というか体部分は痩せこけている。

よく考えたら詐欺を働く売り主から、碌な世話を受けれるわけがないのだ。

きっとこの鶏も苦労してきたのだろう・・・。

そこは、つい先日まで苦境を生きていた、同士として共感できる。


(まぁ、この貧相な鶏を銀貨2枚で買い取った母も訳がわからないけど・・・)


ちょっぴり、失礼なことを思いつつ、飢えのひもじさは、動物も人間も変わらない。

イソイソと、昨日の残りのパンの実を鶏のために用意し、鶏の目の前に置いた。


その瞬間、ものすごい勢いで突いて食べていく。

(昨日から突いてきたのは、ご飯をくれという意味だったのね。なんだか、悪い事しちゃったなぁ・・・でも、何故母には攻撃しないのだろうか?)


ちょっと腑に落ちないアイリをよそに、パンの実を完食し終えた鶏は、またアイリをつついてくる。

何気に痛い・・・。

今度は何だと思っていると、母が「今度はお水ちょうだいって」と。

お水を食べ終えたお皿に注ぐと、チロチロと飲みだした。


(え?!今自然に母はコッコの代弁をしていたけど、もしかして、動物と会話できるの?!この世界、シビアなくせにファンタジーな面もあったの?!)


ファンタジーな世界観に驚くしかない。


アイリは、抑えきれない高揚感をそのままに、母に尋ねた。

「もしかして・・・ママって動物と会話できるの?」

「アイリちゃんっ!!本当に、可愛いわねー!ママも小さい頃は、いつか動物さん達と会話できるようになるかなって思ってたこともあったの。新しい家族になったコッコちゃんと話したい気持ちはわかるけど、残念なことに人間は動物と会話できないのよ。」


そう言うと、アイリの頭をヨシヨシと撫でてきた。


冷静に考えると質問の内容が、まんま5歳児で壮絶に恥ずかしい。

恥ずかしくて真っ赤になってしまった。

すると、母はいきなり、強烈なハグをしてきた。

「アイリちゃん、ごめんね!現実を知るのはもっと先でよかったのに、私ったら・・・夢を砕いちゃって・・・本当ダメなママよね」っと謝ってきた。

「・・・ちがうの、そうじゃないの」

(恥ずかしいから、謝ってこないで、やめてー!!)

「うん、うん、そうよね。アイリちゃん優しいから、ママを慰めてくれるのね、でも本当ごめんなさい」

「本当にそういうのじゃないから」

「優しい子に育ってくれて、ママ嬉しいわ、でもコッコちゃんとお話ししたかったわよね。ママがコッコちゃんのアフレコしてあげるってこともできたのに、なんで本当の事言ってしまっちゃったんだろうね」


アイリの心の叫びは、母に届かなかった。


一旦話題を変えようと、「そういえば、コッコちゃんって?」と母に投げかけた。

急に別の話を振られた母は、すかさず

「コッコ、コッコって鳴くから決めたの!かわいい名前でしょ」と今度はご機嫌なテンションで話しにのってきた。


(何もひねりがない・・・)

そう思いながら、頬を引きつらせつつ「可愛い名前だね」としか返せないアイリであった。


外はようやく太陽が昇りはじめ、窓から光が差し込んできた。

朝焼けが眩しい。

眩しすぎる光が、部屋の悲惨な状態を照らし出していた。


コッコがウロウロした床は、鶏の泥に汚れた足跡がくっきりついており、小さい羽毛が散乱していた。

よじ登られたベットの掛布団にも、泥の他にも細かな羽毛が散らばり、なにやら白い固まりがこびりついている。

このままだと、今晩この鳥小屋臭漂う部屋で寝ることになる!


部屋の絶望的な状態が、二人の頭を一気に覚醒させた。


アイリとスイリは、素早くコッコを捕まえ、首に首輪代わりに手綱をつけた。

暴れるコッコも何のその、一切躊躇の無い捕まえっぷりと連携ぶりに、遂にコッコもあきらめ最終的にはおとなしく、庭にある木の幹につながれることになった。


(よりによって、今日は我が家のアイドル、ポールがやってくる日なのに。

ボロボロだけど、清潔感で少し好感度アップしていたはずの我が家がこんな状態だと、きっとポールもドン引きしてしまう・・・)

そう思い、バット顔を上げてると、母と目があった。


そこには、言葉は不要だった。

大急ぎで家の中にはいり、大掃除を敢行するのであった。


ーーーーーーーーーーーーーー

早朝の大掃除を終え、二人はくたくたになっていた。

(もう動きたくない・・・寝てたい・・・)

アイリとスイリが机に突っ伏していると、扉を叩く音が聞こえた。


(ま・・・まさか、こんな早朝からくるもの?!)


日が昇ったとはいえ、まだ朝の6時台。

休日の朝だとこの時間大抵の家では、まだ夢の世界だ。


(こんな朝っぱらからくるなんて・・。いくらポールとはいえ、常識は守ってほしい!)


ちょっと、プリプリ怒ったまま扉をあけるアイリであった。


扉を開けると、そこには爽やか笑顔のポールがたっていた。

早朝の日光をレフ版にしたのか、二カッと笑う白い歯が際立って光っていた。

一言クレームを言おうと、勢いよく扉を開けたものの、その爽やかさにイチコロにされたアイリだった。

固まっているアイリをよそに、ポールはすっと袋を取り出した。

「朝早くにごめんね。まだゆっくりしててくれていいから、これ良かったらどうぞ」っと調理済みのパンの実とハムを渡すと、ポールは素早く扉をしめたのだった。


(朝食まで用意してくれるなんて、もう、好き!!)

アイリの中でのポールの好感度は、一層バク上がりをするのであった。


かたや、スイリはというと扉がしまるその瞬間まで、じっとポールの上腕二頭筋を瞬きもせず見続けていたのだった・・・。



(あ~相変わらず、あの視線は怖すぎる!!・・・鳥肌が収まらない・・・)

ポールは扉を閉めたことで、変態的視線から逃れられほっとしていたのであった。

気の抜いたまま、アイリ家の庭に回ると、急に『コケ~コッコ!コッコ!』威嚇してくる鶏が見えた。

首元には手綱がまかれており、木の根元にきっちり括り付けられていた。

近寄ってみると、鶏は、果敢に爪キックを繰り出そうと近寄ってくる。


なかなか、やんちゃな鶏だ。


事情は分からないが、おそらくアイリがくたびれていた理由はきっとこの子のことだろうと目星をつけ、ポールはしゃがみこみ、鶏に視線をあわせた。

鶏は『なんだ、こいつ』とばかりに首をかしげてくる。

そのまま、ひたすら見ていると『・・・しょうがないな』とばかりに、なぜかお腹を見せてきた。

よくわからないが、ポールがそのままお腹を撫でてやると、鶏は嬉しそうに『グルグル』っと喉をならしたのであった。


感覚的に好かれた気がしたポールは、「これからちょこちょこくるから、よろしくな」と声をかけ、

作業の準備に取り掛かるのであった。


そのころ、ポールに貰った朝食を母と食べていたアイリは、外から聞こえていたコッコの威嚇声がパタリと聞こえなくなったので、驚いた。

そのあと、すぐにどこか甘えを含んだ喉を鳴らす声が聞こえてきたので、悟った。


この家の女性は、好みが全員同じなんてことを・・・。

そして、ポールの魅力に、畏怖の念を覚えるアイリであった。

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