12.こんなイケメン、惚れちゃいますよ!
無事に母が立ち去ることを見送ってから、改めてポールと向き合った。
母があまりに筋肉筋肉連呼するので、自然と上腕二頭筋に視線が言ってしまう。
確かに、色黒の肌に程よく均整の取れた形。
美意識だけは高い母の目にかなうだけあるなと、心の中で観察しながら、
ポールを漸く自宅の中に招き入れた。
恥ずかしながら、自宅に招き入れたとはいっても小さな小屋だ。
扉から入ってすぐが、左手に水道とコンロがある台所。右側には風呂場、その横にはトイレ。
部屋の中央はダイニングテーブル。
その奥には、ベットが一つと物置兼クローゼット。
最初に入った入口の扉も、窓も建付けが悪く締めにくい。
ダイニングテーブルに至っては、ガタガタしている足の部分に、重ねた布を敷き高さを調整してなんとか使えるようにしている。
更にクローゼットは、建付けが悪すぎて最終的に扉を外したため、棚と化していた。
まともなのは、水回り付近とコンロだけというありさまだ。
想像以上の生活っぷりだったのか、ポールが驚きの顔で固まり、すぐに同情的な視線を向けてきた。
(大いに同情してくれ、でもって、直してくれ!)
先ほど謝り倒したばかりで、声高々にお願いできないが、心の中では盛大に要求するアイリだった。
ポールは、すっと職人の顔になり、「ちょっと部屋をみさせてもらっていいかな?」と声をかけてから、部屋の中をチェックし始めた。
床や壁からはじまり、家具の状態まで確認していた。
部屋の中の確認を終えると、今度は外にでて外壁と屋根のチェックをしたいとのことだった。
屋根のチェックをしてもらいたいが、残念ながら我が家には梯子が無いことを告げると、予めもってきているとの事だった。
さすが、プロ!準備にぬかりない。
敷地前に荷台を持ってきているとのことだったので、一緒についていくと、荷台には木材やレンガやらが沢山積み込まれていた。
更には、食料品と思われる物も乗っかっていた。
きっと、この食料品は我が家への寄付だろうと思っていると、案の定「ちょっと困っているかと思って・・・」っと照れながら渡してくれる。
感動で涙が出てきそうだ。
(せっかくの休日を、変態がいる家へ自ら生贄になりに来て、修理を請け負いつつ食料品まで提供してくれるなんて、この人どんだけいい人なんだろう・・・・)
山のレンガを運べと言われても、何日かかってでも運んでやる!そんな意気込みで、
「ポールさん、本当ありがとうございます!私にできることがあれば何でもするので、遠慮なくいってください!」と申し出た。
「・・・・遠慮なく一つ頼んでもいいかな」
「なんなりと!」
「スイリさんの面倒をとってくれると助かるかな」
「・・・・本当に申し訳ないです!!かならず、近寄らせないようにします」
こうして、ポールへのお礼はすんなり決まったのであった。
ーーーーーー
午前中で一通りのチェックを終え、昼の休憩をとる事になった。
昼は、ポールがあらかじめ用意してくれていた。
ソーセージ、ゆで卵に謎の黒い物体だった。
それも、3人分あった。
(この人、母とも昼を共にする覚悟でくるなんて、男気に惚れてしまう・・・)
アイリは、すでにポールのファンになっていた。
それはさておき、この黒物体なんだろう。
直径20cmほどのもので、よく見てみると、黒いのは調理済みっぽい感じがした。
食べ方がわからず、困惑していると、
「アイリちゃんはパンの実って食べたことない?」とポールが問いかけてきた。
(パンの実?パンって、あの食パンとかのパン?!この世界って、パンって小麦から作るものじゃなくて、木になるもだったの??トムじいが手作りパンと自慢していた、あのふわふわパンも、もしかして手作りは手作りでも、植物育てている自作ってことだったの!花師だから、あんなパンを作れるのか!すごいなトムじい・・・)
アイリはこの世界のパン事情に衝撃を受けた。
パンがまさか木になるものだったなんて・・・
そんなことを考えていると、ポールが食料品を入れている袋の中をゴソゴソしだした。
何かを探しているようだ。
そして、緑色の木の実を取り出した。
「これが、生のパンの実だよ」っと教えてくれた。
このパンの実、生では食べれないから火を通してきたものが、この黒い物になると説明をしてくれたのだった。
そこで、アイリは気になっていることを聞いてみることにした。
「パンの実は、この他にもどんな種類のものがあるんですか?」
「この一種類の実で、他はないよ」
「でも、うちでは黒くてかたいパンを食べてて、トムじいの家では、ふわふわの白パンを食べたことがあるんですよ」
嘘は許さない、おいしいパンの木独り占め反対。
そんな気持ちで反論したのだった。
ポールは、一瞬驚いた表情を見せたと思ったら、腹を抱えて笑い出した。
「アイリちゃん、パンとパンの実は別物だよ。固いパンもやわらかいパンも小麦で作っていて、このパンの実は木の実だけど、焼いたらパンに似ているから『パン』とつけられているだけなんだよ」
(・・・・恥ずかしい!!)アイリが顔を赤らめている間、
ポールは笑いながらも、親切に黒い皮の部分を剥いてアイリに差し出してくれた。
黒い部分を剥くと中から白い実が現れた。
それをそのまま、パクリと食べた。
すると、所謂小麦で作ったパンとは違うが、少し甘みのある味のない焼き芋のような感じの物だった。
触感は穀物ににていて、ホクホクしている。
隣をちらりと見ると、慣れた手つきで自分の分パンの実を剥き、上にソーセージをトッピングして食べていた。
アイリもマネをして食べてみると、程よいホクホク触感の上にソーセージの塩っけがまた合う合う。
そこでアイリは閃いた!
パンの実をかじり、ソーセージも少しかじり、最後にゆで卵を少しかじる。
頭と口の中では、まさに某月見バーガーが再現されていた。
(前世では、『月見バーガーはオーロラソースが命』と誰かが言い放っていたが、そんなことはないわ。
このそのまんまの素材の良さ、空腹というスパイスが交じり合えば、某月見バーガーを超える味にしか思えない)
美味しすぎて、気づくとあっという間に完食していた。
アイリは、お腹をポンポンと叩いて気付いたことがあった。
ポールに水も出していないことを・・・。
慌てて、水を差しだし、二人で一息ついたのだった。




