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11.安心安全の環境を提供します!

今日は土曜日ということもあり、アイリはぐっすり寝ていた。

もうそれは豪快に、ぐぅぐぅと憂いなく、惰眠を貪っていた。

いつもの習慣で、早朝に一度起きたのだが、起き上がったことに気づいた隣に寝ていた母が、「休日はまだ寝てていいのよ」っとささやいた。

もとから、眠くて眠くてたまらなかったアイリは、そのまま夢の世界へ旅立ってしまった。


そう、母の悲鳴が聞こえるまでは・・・


「きゃぁーー!」けたたましい叫び声が、急に外から聞こえてきた。

何事かと思い、布団を蹴り飛ばし、はだしのまま扉を開けると、ポールが敷地柵のところに立っていた。

母は、家の扉の前にいた。

私は無意識に、母の前に立ち、両手を大きく広げポールを睨みつけた。

「ポールさん!いったい、母になにしたんですか!」

「ア・・アイリちゃん、誤解なんだ!」

「何が誤解って言うんですか!私はっきり悲鳴が聞こえたんですよ。いったい何をやらかしたんですか!」

「いや、だから、誤解だって」

「ふん!やっぱり最初から母に気が合ったんですね。私の警戒心を解いて、うちに上がり込もうとしたんですね、本当最低!」アイリは怒り心頭だった。

確かに、昨日は面白い展開になる期待したが、ポールの人柄から、まさか母が嫌な目に合うようなことはないだろうと踏んでいたからだった。


ただ、なんだか様子がおかしい。

弱弱しく、「誤解だよ・・・」と言っているポールの顔色は悪く、若干震えている感じがする。

疑問に思っていると、母が口をはさんできた。


「ポールさん、ごめんなさいね。アイリちゃん、貴女誤解しているわよ!」

「だって、ママ悲鳴・・・」

「あれは、違うのよ!私、ポールさんの・・・ゴニョニョ・・・」

「えっ?なに聞き取れなかったんだけど」

「ポールさんの上腕二頭筋が好きなのよ!」


そのあとは、母の赤裸々な筋肉トークが始まった。


要約すると、ポールの筋肉が好きすぎて、一時期ストーカーまがいの追っかけをやていた。

すると、その視線に気づいたポールから避けられるように・・・・。

そこで、普通ならあきらめるはずだが、筋肉フェチな母は、それでも、こそっと本人にばれないようにポールがお屋敷に来た際に、盗み見をしていたら、本人にばれてしまった。

その後、ポールをお屋敷の近くで見かけなくなり、尚且つメイドがあのレンガの建物に寄り付くと目立つため、ポールの筋肉を見ることがかなわなくなってしまったとのことだった。

今日、この家に憧れの上腕二頭筋がやってきものだから、黄色い歓声を上げてしまったとのことだった。


母は告白を終えたあと、素早くポールに近づいた。

「ほら、アイリちゃん、ここよ!ここ!太陽に照らされて輝くこの上腕二頭筋の盛り上がり具合。それに付け加え、背中の逆三角形、理想形をしているのよ、もう美しすぎるわ!ポールさん、ほらそのまま肘まげて、筋肉むきってポーズして」


母は舐め回すように、ポールの薄いシャツ越しを視て、さりげなく筋肉をさわり、ポージングも要求していた。


もはや、やってることは、セクハラだった。


片やポールはというと・・・・

母の変態的な視線にさらされ、触れられ、小刻みに小動物化の如く震えていた。


慌てて母をポールから引っぺがし、今度はポールの前に立ちふさがった。

(この変態から、ポールを守る!)

そんな正義感にかられた。


母はポールに触れなくなり、とても不満そうだ。

ポールをみると、母と少し距離ができたおかげか、ちょっと震えが収まっている。


そして私は、ポールに全身全霊を込めた90度の角度で頭を下げた。

そのまま頭を沈ませて、土下座までしようとしたら、慌ててポールに止められた。

『アイリちゃんは悪くないのだから、謝罪はいらないよ』と青白い顔で言われると、更に罪悪感だけが募っていく。


それなのに、母の視線は未だポールの上腕二頭筋だ。

(ちょっとは、反省しなさいよ!)


子の心、親知らずだ。


ここに母がいては、いろんな意味で危険すぎると感じたため、アイリはひと仕事することにした。


「ママ、そういえば私作業着のズボンが欲しいの」

「??」

「トムじいの所で作業するのにスカートだと、足が出てて怪我しやすいんだ。すぐ欲しいから町に買い物行ってきてよ。昨日お給料でたんだよね?」

「えっ!!でも、アイリちゃんを一人にするわけにはいかないわ」

「大丈夫ポールさんと一緒にいるから、ポールさん信用できる人でしょ」

「ずるいわ!ポールさんと一緒なんて、ひとりで筋肉堪能するつもり?」

「・・・・ママは、私が庭の所で作業する時にケガしてもいいんだね。あんなに日頃大好きって言ってくれるのに・・・嘘だったの?」

いつも母がやることのマネをしてみる。

ポールも追い打ちをかけるように、

「女の子の足が傷だらけになったら、可哀そうだな」とアシストした。

「そんなことないわ!私はアイリちゃんのこと、大切にしてます!だれよりも」

「ありがとうママ、じゃぁ買い物行ってくれるよね。いってらっしゃい!」強制的にお財布と帽子を持たせて、扉の外へと押し出した。


こうして、安全安心な環境をポールに提供することができたのであった。

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