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リオウはレンが目を閉じたと同時に流れた涙を人差し指で掬い、そっと口づけた。涙の味は――苦しいほどに哀しかった。
レンの両手を腹の上で組ませてやり、リオウは立ち上がる。そのまま研究室を出て緑色の光が溢れる標本室に戻り、人魚の姿にされた少女を見つめて静かに別れを告げた。
リオウは地下七階の研究室に火を放ち、地上まで脱出した。見張りは眠りこけ、地下が火事になっていることなど知らない。
やがて様々な生物の入っていた硝子の筒内の液体に火が付き、爆発した。巨大な爆音と共に地上の建物も炎上する。見張りが慌てて避難し、大声で救援を呼びに足音荒く去って行った。
リオウは炎に包まれ燃える<ブルー=ムーン>の建物を見上げながら此処に囚われていた生命が救われることを、柄にもなく願い、祈った。
――あのね、言いたかったことが……あるの……。
古びた窓硝子がパリン、と割れる音がする。リオウはレンの最期の言葉を思い出していた。
――私、昔も今も、リオウのことをね……。
リオウは炎上する建物から更に上を見て静かに地上を見下ろす月を見つめた。何処にいても、レンを思わせるその月は今夜も美しかった。
「……俺も、だったんだ……レン……」
レンの最期の言葉を胸に大切に仕舞い込んで、リオウはその場から去るために踵を返す。
遠くからは消火活動を行うために駆り出された人々のざわめきが近づこうとしていた。
深い深い闇の中にリオウは消えていく。その様子を見ていたのは前日より少しばかり欠けた丸みを帯びた月のみ。
ただ、今夜の月だけはリオウの悲しみを表してか、青白く輝いていた――。
Fin.




