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悪役にされた冷徹令嬢は王太子を守りたい~やり直し人生で我慢をやめたら溺愛され始めた様子~  作者: 阿井りいあ
学園の始まり

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穏やか護衛とあと一人


 いつまでも話していたらオリエンテーションが進まなくなってしまう、とジェイルが場を仕切ってくれたことで、それぞれがようやく同じ番号の人物を探し始めた。


 レセリカはすでにフィンレイと同じことがわかっているため、あと一人を一緒に探すことに。そんな二人にセオフィラスの鋭い視線が突き刺さっているのだが、レセリカは気付いていないようだ。


「本当に、困った人です」

「? どうかしたのですか?」

「いえ、幼馴染ゆえの悪ふざけみたいなものです。お気になさらず」


 フィンレイの呟きを拾ってレセリカが首を傾げるが、彼は苦笑しながら肩をすくめてみせただけだった。そのような気安い関係に憧れるレセリカは、自然と目が輝いてしまう。


「本当に仲が良いのですね。羨ましいです」

「幼い頃からの付き合いですからね。ですがレセリカ様こそ、セオフィラスとは仲が良いではないですか」


 フィンレイが穏やかに、それでいて少し意外そうに告げるのでレセリカも少し戸惑ったように頬を染めた。


「え、えっと。こんなことを言うと笑われてしまうかもしれないのですが……」


 告げるかどうか迷いつつも、もしかしたら何かいいアドバイスがもらえるかもしれないという期待を込めてレセリカは思い切って口を開いた。


「友達がいるのが羨ましいのです。気心知れた仲というものに、その……憧れていて」


 驚いたのはフィンレイだった。彼の中でレセリカは、なんでも持っている完璧な公爵令嬢だったのだから。それがまさか友達がほしいと恥ずかしそうに告げるとは。まるで普通の少女のようだ、と。

 いや、これが彼女の素である。フィンレイは一度、自分の中のレセリカ像を全て忘れ去ることにした。


 目の前にいる彼女を見て話し、そこから判断すべきだと気付いたのだ。


「……そうですね。レセリカ様にとってセオフィラスは婚約者ですから、友達とは違いますしね?」

「あっ、そう、なりますね……」


 フィンレイの言葉に、一気に耳まで顔を赤くするレセリカを見て、フィンレイは慌てて顔を逸らす。

 普段とのギャップの破壊力にここで気付いたのだ。セオフィラスが彼女を可愛いと言っていた理由が初めてわかったのである。


「なるほど、これは確かに可愛いはずです……」


 思わず小声で呟いてしまうほどに。


 もちろん、可愛さに気付きはすれど恋に落ちることはない。ただ今後、セオフィラスの無茶ぶりに疲れた時は彼女を見て癒されようと心に決めたフィンレイであった。


「フィンレイ、様?」

「ごほん。失礼いたしました。あ、どうぞフィンレイと。ここでは確かに僕が先輩ですが、立場は弁えたいので」


 なるほど、とレセリカは納得した。

 正直なところ、どの辺りで線引きをすればいいのかわかっていなかったので、こうして明確に示されるのはとてもありがたかった。


 基本的に立場が上の者は下の者を呼び捨てにするか、家名を呼ぶことが多い。ただ、学園のルールにどこまで従えばいいのか、そのさじ加減が難しいと感じていたのだ。

 立場はあまり気にせず、態度も出来るだけ楽に、それでいて呼び方などの個人的なことには線引きを。レセリカは心の中にメモをしておいた。


 後は、時と場合によっては立場を意識することも必要だろう。レセリカは適応力も高かった。


「先ほどの話ですが……焦ることはないと思いますよ?」


 フィンレイは、きちんとレセリカの質問も覚えていた。のんびりとした口調で柔らかく目を細めている。


「付き合いの長さが関係の深さとは限りませんから。学園生活は始まったばかりですし、これから少しずつ気の合う友達を作っていけば良いのでは?」

「少しずつ……。ええ、そうですね。焦ってはいけませんでした。ありがとうございます、フィンレイ」

「いえ、あまりお力になれず」


 そんな彼の雰囲気はレセリカを穏やかな気持ちにさせてくれた。癒しのオーラを感じる彼に、ますます好感度が上がる。

 自分もセオフィラスの友人と少しでも仲良くなれたらと願ったが、それをセオフィラスが許すかどうかは別の話である。心を広く持ってもらいたい。


「あ、見付けました。レセリカ様、僕たちと同じ番号の方があちらに」


 二人もただ話をしていたわけではない。同じチームのあと一人をさり気なく探しており、先にフィンレイがその人物を見付けたようだった。

 示した先の人物に視線を向けると、そこにはくすんだ金髪を持つ少し背の高い男子生徒が立っていた。相手もまた、同じタイミングでこちらに気付いたようで目を丸くしている。


 しかしレセリカはその姿を確認し、ヒュッと息を呑んだ。


 いつかは見かけるとは思っていたが、まさかここで出会ってしまうとは。心の準備が出来ていなかったからか、レセリカの心拍数が上がっていく。


「貴女は、ベッドフォード家の……」


 男子生徒はレセリカたちと同じ十八と書かれた紙を手にしたまま目の前まで近付いてくる。その間、レセリカはその場から一歩も動けずに硬直してしまった。なぜなら。


 その男子生徒の名はリファレット・アディントン。最も警戒すべき人物の息子であり、前の人生でレセリカを糾弾した人物だったのだから。


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