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三頁目
……そこまで読んで、探偵のTは本から顔を上げた。Tが読んでいるのは、推理作家Hの新作ミステリだった。ミステリを読むのが、仕事の合間の、楽しみの一つであった。
「劇中劇殺人事件……か」
Tは思わず笑みを零した。動機やトリックは「また次回!」と何だか投げやりに書かれてあるが、中々入り組んだ構成の事件ではある。
Tは安楽椅子を揺らし、ゆったりとパイプを燻らした。
しばらく仕事の依頼はない。探偵らしく、読みながら事件を推理してみる。劇中劇殺人事件。どこまでが劇で、どこからが現実なのか。その線引きは一体どこに? もし作中に一つだけ、真実があるとすれば……そ
れは一体、何頁目だろうか?