冬空
晴れた空を見て、少し嬉しくなった。
関東の冬はよく晴れるものだが、昨夜の雪で多少の不安感は拭いきれていなかったのだ。名目は課せられたレポートのためであるが、彼女自身今日のバイトも講義も入れていないほど楽しみにしていたのだった。
昼の間には用のない銀の円筒を念入りに確認し、すぐにでも持ち出せるよう玄関側に置いておく。バランスウエイトがあるせいか、望遠鏡とは思いの外ずっしりとした重量感があり、分解してまとめても彼女にはまるでダンベルのように感じられる。
待つこともできずに外へ踏み出した。
昨夜の残雪は未だ道路に山を作り、雪かきの痕跡をそこに置いてきている。今日の昼の気温は高めだったから、夜の前にある程度溶けるだろう。
こうして街に住んでいると、人は皆積もった雪を嫌う。邪魔なのは理解できるが、もう少しばかり風情があっても良いのに、と彼女は常々思っていた。
することもなく時間を潰し、ゆったりとした時の流れに流されて、太陽は沈んだ。
彼女は待っていたとばかり、例の円筒と三脚の収まった箱を車に詰め込んで発車する。行き先は近場の丘の上。そこで晴れた空を見上げるのだ。
目的地には雪かきのされない溶けかけた残雪が所々に散っている。そして、見上げれば満天に煌めく星々が雪をそっと青白く照らしていた。
さっ、と一筋の真一線が空を切り裂く。オリオンの辺りから流星が幾つも飛び出してきた。
彼女は三脚を雪に突き刺す。新品でまだ使い慣れておらず、どこかぎこちない手つきで円筒に脚を生やす。
覗けば、区切られた視界の中で幾千の星々が瞬いて彼女に存在を示してくる。時々横切る流星を観ようと望遠鏡から目を離すと、それは既に燃え尽きて空気の中に溶け込んでしまう。
ほう、と白い感嘆の吐息が流星と同じく消えて無くなる。
空の青白い光を反射した雪たちの中にもまるで星々が煌めくようだった。
燃えて無くなる流星と、溶けて無くなる雪星と。
レポートのタイトルはそれにしよう、と彼女はすんなりと納得した。
今回は短編にしてみました。
詩だと文字数足りないことがよくあって、散文型でも良いのかなーなんて思ったりする最近の加部宮です。




