1/16
迷想曲
ひとり静かなホールの中で彼女はライトを浴びていた
黒く輝くグランドピアノの鍵盤蓋をそっと開け
鍵盤の白とそっくりな細い指先うごめいた
軽やかに流れるその曲は
姿なき音の暴れ歌
彷徨い憂いで紡いだ音符
その音たちは迷走しだす
流し流されひび割れた迷いの想いが響いてた
壊れた音は踊りだす
ひとり静かなホールの中を
人が聞けば顔を顰める暴れた音符が踊りだす
断ち切られぬその迷いは
美しい曲さえ乱したのに
彼女の想いは一切乱れず
一心不乱に指を動かす
迷想曲は美しい
乱れたそれが美しい
ひび割れ暴れて壊れた曲は
また新しい姿を見せる
迷い彷徨い見つけた乱れは
心の底をも見抜き通す




