2度目の冬
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こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side 主人公
ただいま。毎日夜には帰って来ているけれども、緊急の案件の目処がたつと気分が違うわぁ。
帝都の城からここに転移してきたのだが、国境は完全に撤収できた。最後の人々を帝都に送ったあと念のため見回ったのだ。
国境線をぐるっと気配探査などを使いながら、ついでに魔物や魔獣も間引いてきた。隣国側の国境は警戒している気配が伝わってきたが、慌ただしい動きは見られなかった。
まぁ、王国を通じて周辺国に帝国の代替わりの情報や新皇帝一派は穏健派であり話し合いのできる人々であること。
内政の充実に当面力を入れる方向性であり、公正な商取引ができる可能性が高いこと。治安も改善していくと期待が持てることを伝えてあるので、警戒はしていても、無用な攻撃性は持たずにすんでいるのだろう。
職業軍人の五万人は今は帝都の帝国軍施設に収容されている。鍛え直すにしろ、召し抱えるにしろ、各領地に再配置するにしろ人間性の確認や適正や本人の希望も大事だからね。
そのあたりは、新政府の人々に任せられると思う。令息もやっと家族と再会できた。だいぶみなさまやつれてはいたが、家族揃ってふたたび会えるのは奇跡だろう。
正直あのままだったら令息は呪いに掛かって生命を落としていただろうし。あの時はまさにあと一歩遅ければ間に合わなかったと思う。
そしてたまたまあの日あそこにわたしが居なければ、など偶然の積み重なった結果なので奇跡といってもいいだろう。
わたしがこの世界に来てからよく思う。まさに巡り合わせ、たまたま、奇跡。わたしだけが要因なのではないと思っているけれども、必然ではないが恵みのように不確かな要素の集まりの結果。
女神さまが、この世界が、人々それぞれの持つ何かが、たまたまや巡り合わせを引き寄せるのだろう。
令息はもう変装する必要もない。本来の姿で新しい政府で働く予定だ。皇太子も彼を頼りにしているようだし。
ちなみに令息が助けたいと思っていた味方や仲間たちもかなりの人数助かったという。島にはあの後も人々が転移して来ている。
その中には帝国民もいて身元を確認する際に、今の帝国の最新情報を伝えこの島から皇太子や皇弟や貴族たちが国に戻ったことを知らせると帰りたいという希望が多かったらしい。
帝国仮政府には定期的に連絡をとっていて、彼らが戻る下地もあり受け入れはスムーズに行われているそうだ。
そうやって新しい人員を確認する中で絶望視されていた仲間たちを発見し喜びあったという。
今後も島に関しては帝国や王国の協力が必要だ。事情を知る人々からの支援があれば、島の人々の再出発も上手くいきやすい。
通信の魔道具や転移陣などはそのまま置いてきたので連絡手段もある。兵糧を分配したり、各領地に派遣した巡見使隊の働きのおかげで、適切な支援が行われつつあるという。
やはり各領地の資産を素早く押さえたのがよかったと思う。同様に帝都の貴族宅の捜索も素早かったという。徹底した対応を帝国民も好意的に評価しているとかいないとか?
教会のことはよく分かっていないが、わたしは黒いモヤモヤを浄化する。そうすればなんとかなる気がするんだよね。
さて我が家の新たな住人たちの様子はどうだろうか。
少しは落ち着いたようだ、狼の方は肉を食べたらしいがハーピーみたいな方は手をつけていない。
どちらも性別は男性みたい。洞穴はそこまで寒くはないがハーピー?には服を着てもらおう。なまじ人型に近いのでモフモフとはいえちょっと気になる。
というわけで、島の住民用の予備の服を取り出して着せる。まずはズボンだ。無抵抗なのは助かるが痩せすぎだ。成人男性向けの服がブカブカだった。上半身は毛皮のベストを着せた。うまく腕というか羽をだすことができた。
食事は肉をやめておかゆを作る。これまた無抵抗なので、匙で掬って食べさせる。その後毛布を敷いた上に寝かせさらに毛布を掛ける。しばらくは介護が必要だな。
さてもうひとりの狼は目があうととにかく威嚇される。今までは鑑定するのを後回しにしていたが、ただの魔物とも思えないので鑑定してみる。
魔物じゃない?魔族?どこがどう違うのか、じつはよく分かっていないのだが。
魔狼種の翼皮族?もう1人は、ハイハーピー種?これは一体?魔物と間違われたのかなぁ。どちらも希少種かなぁ?だって見たことないもの。
2人とも回復の宝珠が使われたのは確かだ。首にかかっている識別アイテムがその証。よほどひどい状態でも回復できたはず。だから今こうしていると思うのだが。
お名前は?とまず狼の方にたずねたが無視された。しかしこのままでは困るので自己紹介からはじめた。白いマントは脱いでいるので8歳児の姿だ。
自分はこの辺境伯領の冒険者で、今回人間の国で戦争がはじまりそうだったのでそれを阻止するためにあそこに行ったこと。
人間の国の中でも特に残虐な行いをする者たちを退治し、虐げらている者たちを救い出すこと。またその後は元いた場所になるべく送り返し、以前の暮らしに戻れるように協力することが今回のお仕事だったこと。
ただ事前の調査をあまりする時間もなく人間の国の冒険者なので、まさか魔物や魔獣まで捕らわれていたとは当日まで知らなかったこと。
恨みは深いと思うが、恨みんだり復讐するなら罪のある者にお願いします。ほかの人間たちも被害にあっており、人間すべてを憎むのはどうかやめてほしいこと。
あなたをそんな目にあわせた奴らの仲間なら、八つ裂きにするのを手伝います、と。人間の国でなら人間の協力者がいないと不便だと思うこと。
ちなみに協力するので対価をいただきたいこと。無償で協力などと言われても信用なんてできないでしょうから。対価は魔族のこと、あなたの種族のことを教えてほしい、と。
自分はどのみち浄化を行うため、あちこち移動している。その途中でまだまだ酷い目にあっているモノたちがいるとしたら救助をしたいこと。なので話す気になったら声をかけてほしい、と告げて側をはなれる。
ハイハーピーだという彼は、相変わらず無気力に横たわっていた。排泄の問題もあり、彼にはスライムパンツをはかせている。
身体の機能を復活させるためにも運動をさせたいのだが、心が凍ってしまったような有様なので日光浴などをさせるのが精一杯である。
今朝もおかゆにした。日光浴をさせながら手足をゆっくり動かす。慰めにでもなればと思い、音楽を流している。
たくさんの作品がある中で
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