魔力の属性
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こちらの作品はカクヨムさんでも投稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
side ある治療院の見習い???
島に来てひと月、人も増えたが島にもリズムが出来てきたと思う。側近の人やかわるがわる交代できてくれる冒険者の人たちのおかげで、島の皆も毎日安心して暮らせている。
リーダーが1人でも生活できるように、ここでいろいろ覚えてほしいというのはわかる。身体が動かなくて他の人を見ているだけの時、あんなふうに動けたらと思っていた。
はじめはどうしたらいいかわからなかったけれど、周りの皆もそうだと気づいて勇気づけられた。1人だったらやっぱり周りに迷惑をかけてると落ち込んだかもしれない。
でも皆と同じだったから、聞くことも教えてもらうことも遠慮しなくてすんだのかもしれない。慣れてきて自分でもたくさん採取できるようになり、皆で持ち寄って蓄えることもできるようになった。
保存食にする方法や日持ちする調理の仕方、毎日いろいろなことを教えてもらう。何か自分にできることはないかな?島で暮らせるのはありがたいと素直に思えるようになったから、今度は助けてもらった恩返し?ができないかなと思うようになったのた。
他の人にもちょっと聞いてみたら、いっぱい覚えてたくさん狩りをして素材をたくさん持ち帰るのだという。持ち帰った素材は、お金と引き換えできるし足りない物を買うこともできる。
自分たちと同じように服やパンを後から来た人たちにあげられる。もっと稼げたら、いつかここに連れてきてくれた感謝をお礼を伝えられる気がする、という。
そんな穏やかな島の暮らしは、たくさんの試行錯誤の毎日だ。リーダーも側近の人も冒険者たちも南部地域ははじめてだから、素材も採取も魔物や魔獣の相手も慣れないことばかりだった。
でもリーダーは、なんでも知っていて採取するものはわかりやすく絵に描いてくれる。毒のあるものや触ってはいけない物も教えてくれる。魔物についても注意するところを指示してくれる。
リーダーは鑑定というスキルがあるらしい。ほかにも南部の人も島に来ていて、恐る恐る話しかけると答えてくれた。その人も遠慮していたみたい。少しづつ教えてくれるようになった。
皆に交流が増えて、その日のことを話したり協力したりしやすくなった。足りない物があっても、何かで代わりにならないか工夫したり、魔法の使い方を考えたりしてなんとかできないか皆でわいわいやっている。
魔法。わたしも魔法が使えるようだ。皆クリーンとか生活魔法は使えるはずだが、身体が動かせないほどだったわたしは使った記憶がほとんどなかった。
ある程度の家の子なら、子供のうちに魔力の属性とか調べるのだと思うが、わたしたちには遠い話だ。
この島ではじめて魔力の属性を調べてもらった。ほとんどの人たちは普通くらい。でも何人かは普通の人より多い人たちがいた。わたしもそう。もちろん庶民の中での話だ。
わたしの魔力は微力な聖属性。身体も動かせなかったわたしが。なんだかモヤモヤしてしまった。
そんな時、リーダーが魔力を増やす方法について皆に話した。自分の持っているものを知ることは大事なこと。できることを増やすことを大事。そして、持っているものを強くすることも大事。
今は少ないとか思っていても、少しでも増やすために頑張ってほしい。少しでも強くなれば闘っても負けにくくなる。魔力が増えればできることが増える。
自分の持っている力に納得できなかったとしても、納得できるまで調べることはできるはず。違う力が欲しかったかもしれないけれど、何もないより何かあった方がずっといい。
今ある何かをより生かすことを考えよう。皆が協力すればできないことはなくなるかもしれないよ、と。
わたしはその時リーダーの話が全部分かったわけではなかったが、それでも分かったことはある。
せっかく持っているものは生かしたいこと。持っているものを増やすことは努力すれば誰でもできること。そしてここには助け合える皆がいて、力を合わせれば何かあってもきっと大丈夫な気がすること。
それからわたしは、リーダーが持ってきた仕事に積極的に出るようにした。狩りも向いているいないに関係なくやってみた。一生肉を食べないわけではないなら、肉を自分でも獲って捌けた方がいいから。
島の外の仕事にも行った。農作業というのは初体験だ。農地というのさえ見た記憶がなかった。地平線まで広がる農地。全部が黄金色。綺麗だとはじめは思ったけど、とても大変だった。
これがパンの材料だと話は聞いていたけれど、こんなに大変とは思わなかった。本当にパンになるのかな。帰り際に配られるふかふかのあたたかく香ばしいパンを抱えた時、とても嬉しかった。
畑仕事をする人たちが楽しそうなのは、この喜びがあるからなのかな。
いろいろな仕事を試させてもらって思ったこと。聖属性魔法を持つ者がまだまだ少ないということだ。
わたしの魔力なんて普通の人より少しだけ多いくらい。リーダーに言われてから、毎日魔力を動かす努力と使い切るようにはしているが、この短期間で効果なんか出るわけない。と、そうは思うのにどうしても気になってしまう。
まだしたことがない仕事、回復。
秋も終わりのそんな時、リーダーが島の皆に働き口の話を持ってきた。その中に見習い仕事があったのだが、治療院も見習いを受け入れてくれるらしい。
わたしを含めて聖属性魔法に適正のあった人たちが見習いに行くことになった。
何人かと話す機会があり、なにをやりたいか一生懸命考えたが、希少な適正だからこそまずは試してみたいと思ったという。
わたしもそうだ、わたしも自分のことをやっと受け止めて、いろいろ受け入れて、そしてまだ試していないことがあると気づいた。どの仕事を選んでもいいのなら、やらないにしてもちゃんと試してからにしたい。
side ある治療院の長???
あの日のことは忘れない。絶望が希望に変わった瞬間。あの瞬間の記憶がある限り、わたしの心は折れることはないだろう。
連日運び込まれる怪我人や病人、力およばず看取る日々。王国は医療に配慮してくれているのである程度予算はあるから、薬も人手も他所よりはまだマシだ。
それでも徐々に状況が悪くなっている気がして不安だ。薄汚れた窓から見える空が明るい。ゴミの落ちている床、血の汚れが落としきれていない治療器具、きちんと手入れしなければ不衛生だと分かっているが人手が足りない。
自分でやりたくとも、次から次に患者がくる。カルテも書かなければ。食事もしないと魔力も回復しない。
そんな時リーダーが現れた。辺境伯領の冒険者クランのリーダーだという女の子だ。子供がなんの用だろう。
時間がないからすぐ終わらせますと言うと、光が治療院を満たしすぐに消えた。リーダーが皆をお家に返してあげればいいですよ、と声をかけると帰って行った。
ちょっと待ってほしい、何がおこったんだ。助手たちが泣きながら喜び、患者たちが起き上がったので帰り支度を手伝うという。
他の医師たちと呆然としていると、雑用をしてくれている老婆からお茶を出されて、他の何人かと一緒に椅子に座ってパンを食べていた。
食べ終わるとふらりと診察室や、寝台が並んだ病室を見に行った。空っぽだった。誰もいない。これは夢なのか?
昔はよくあった。治療をして患者が元気に笑って帰って行く姿。それを同じく笑って見送るわたし。もう長いことそんなことを経験していなかった。
あぁ皆帰ったのだ、それぞれの家に。帰れてよかった。
治療院の地下には大量の棺桶がいつもある。正直あの場所のことは恐怖しか感じないが、合理的な置き場なのは理解している。理解と不快は別問題だが。
つまり、歩いて出て行ける患者と横たわって出ていく者たちにどうしてもわかれる。でも今日は皆歩いて帰って行ったのだ。見送れなくて残念なことをしたものだ。
この治療院にわたしが来てはじめてではないか、病室が空になったのは?
職員にまともな休暇をとらせてやれるな。このところ休みなしだったから。休み明けには大掃除だな。やっと器具を手入れできるな。
いつも気になっていたのだ。他の者がやると、雑な気がして満足できなかったのだ。潔癖症だと文句をよく言われていたのがずっと昔のことに思える。
そして余裕があれば、窓も掃除しなければ。
手紙の山の中の1番上に見習いを受け入れてほしいというものがあったこと。雑用係として使ってみて、少しなら魔法も使えるようだから教えてみればいいということ、が書いてあった。
差し出し人は、クラン雛鳥のリーダー、保証人は各ギルドマスターと辺境伯と宰相閣下。
そんな不思議な手紙をもらったところがここ以外にもいくつかあったという話をあとから風の噂で聞いた。
休み明けの日、若者が何人か門の前にいた。やけに来るのが早くないか?とは思ったが確認すると、リーダーの紹介だという。なんでもします、とやけに元気なので掃除を手伝わせることにした。
治療院の長が魔法の可能性に気づくのはまだ少しさきのこと…。
たくさんの作品がある中で
お忙しい中お読みいただきありがとうございます。