9.膝まくら(大腿骨)
日が昇る前、俺は目が覚めた。
「オハヨウゴザイマス」
……骸骨が膝枕してくれていた。
いや、寝心地良かったし、ありがたいのだが。
素直に喜べない。
「おはよう」
俺は起き上がる。
ぐぅ~。
「朝食ニナルヨウナ物、採ッテキマショウカ?」
「お願……いや、人間の食べ物を知っているのか?」
モンスター食なんて、俺は食う気はないぞ?
「人間ガ、ヨク採ッテ、食ベテイル物ヲ知ッテイマス。
オ任セクダサイ」
骸骨は草木で覆われた入り口を開き、出て行った。
30分くらいしたら、両手いっぱいの木の実を抱えた骸骨が戻ってきた。
「ドウゾ!」
「こんなにいらな……いや、貰う。
ありがとう」
今食べないにしても、非常食として持っておくべきだ。
さっそく木の実の1つをナイフで割り、食べる。
……不味い。粉っぽい。
これは調理しないと駄目だ。
こっちはどうだ?
おお、ナッツっぽい。
これは当たりだな。
木の実を剥いて食べていると、日が昇り始めた。
「アア、ソロソロ土ニ還ル時間デス。
昨晩ハトテモ楽シカッタデスヨ。ソレデハマタ」
「ちょっ、待て! これ、お世話になったお礼にやる!」
俺は、手に持っているナイフを骸骨に握らせた。
骸骨は、土に沈んでいった。
「……本当に世話になった。ありがとう」
俺は骸骨の居た場所に頭を下げた。
「木の実を入れる容器が無いな」
いったん、洞窟の外へ出る。
その辺の草やツタをたくさん採り、一か所に集める。
「『ツール表示』、草のカゴを描いて……『実体化』」
成功だ。
草とツタで出来たカゴがポンと現れた。
洞窟に戻り、カゴに木の実を詰め、背負う。
「またなー!」
人の良い骸骨の居た地面に手を振り、俺は都市へ向かうことにした。