第四十四話
武器の形をした戦闘用の魔道具から、小物タイプの戦闘用の魔道具など色々見ていくが、どれもこれも性能が良いものばかり。
そして、性能が良ければ良いほど、それ相応にお値段も高くなっていく。
それに、どういった魔道具がウォルターさんの戦い方に合っているのか、魔法使いの私では想像しづらい。
そんな風に悩んでいると、後ろから「どうしたの?」と声を掛けられた。
後ろを振り向くと、私の背後に店員さんと思われる女性が立っていた。
店員さんはニッコリと微笑み、私に優しい声で聞いてくる。
「色々と悩んでいるようだけど、一体何に悩んでいるのかしら?」
「友人への贈り物をどうしようかと。彼は騎士学院の生徒なので、何か戦闘に役立つ魔道具を送ってあげたいと思いまして」
私がそう答えると、店員さんは「なるほど」と言って真剣な表情に変わった。
「その彼は完全に魔法が使えない人?それとも無属性魔法は使える人?」
「後者です。身体強化を得意としていて、魔力制御がとても洗練されています」
「主に使う武器は剣?それとも槍とか?」
「彼は主に剣を使って戦いますが、体術も同じくらい優れています。なので、どういった魔道具を送るのがいいのかと悩んでいました」
そんな超人みたいな人いるか!?と疑われるかと思ったが、店員さんは真剣な表情のまま続ける。
「属性魔法を使えない剣士なのに、貴女ほどの魔法使いにそこまで称賛されるなんて凄いわね」
「私の事をご存じなんですか?」
「そりゃあ有名人だもの。貴女の事を知らない商売人がいたら、そいつは素人か他国の密偵よ」
そう言って、ニヤリと笑う店員さん。
赤髪に青緑色の瞳をした、全身から色気を漂わせている妖艶な美女。
クールな顔立ちの綺麗系で、ボン・キュ・ボンと称してもいい素晴らしいプロポーション。
その抜群のプロポーションを誇る身体を真っ黒なドレスで覆い隠し、そのドレスの上から同じく真っ黒なローブを羽織っている。
さらに、両手には真っ黒な手袋をしていて、履いているブーツまで真っ黒。
全身のコーディネートを真っ黒で統一している素敵なお姉さん。
ただ、改めて彼女を観察すると、ただの店員でない事を理解した。
魔法使いの視点で彼女の姿を見てみると、身に纏っているそれらはただの服ではなく、全てが高性能な魔法使いの戦闘服だと分かる。
その戦闘服に使われている素材は、どれも魔力伝導率や魔力増幅率が最高クラスのものばかり。
軽量で動きやすいと言われている、魔法使いにとって垂涎の品であるのは間違いない。
「自己紹介がまだだったわね。私はカトリーヌ・マルソー。このナターシャ魔道具店で働いている店員よ」
素敵なお姉さん――カトリーヌさんが自己紹介してくれたが、家名であるマルソーに反応してしまう。
「ナターシャ魔道具店で働く方は、全てナターシャさんの親族だけでは?」
私がそう言うと、カトリーヌさんは感心したような表情になる。
「確かに、この本店だけは親族のみで経営しているわ。ただ、私の祖母が二代前の‟ナターシャ”の妹で、今でも本家とは親交があってね。名字は違うけど、私もナターシャの親族として扱ってくれてるの。だから、本店でも働かせてもらえるってわけ」
「なるほど、そのようなご事情でしたか。失礼な事を言って、大変申し訳ありませんでした」
私がそう言って頭を下げると、カトリーヌさんが苦笑いをしながら頭を上げるように言う。
「そんなに気にしなくてもいいのに。公爵家のお嬢様が、私なんかに頭を下げちゃダメじゃない」
「失礼な事を言ったのですから、頭を下げることくらい当たり前です。それから、私の事はイザベラと呼んでいただいて構いません」
なぜだか分からないけど、カトリーヌさんと仲良くなれそうな気がする。
そう思ったから、私の事を友人のように名前で呼ぶようにお願いした。
「そんな恐れ多い事は出来ないわよ」
「最初から私を公爵家の娘だと知ってその口調なのですから、カトリーヌさんならば出来るでしょう?」
ニヤリと笑ってそう言うと、カトリーヌさんも面白いといった表情で笑って返す。
「分かった。イザベラ、彼の事をもっと聞かせてちょうだい。聞いた情報を基にして、私が色々と選んであげる」
「はい、お願いします」
ナターシャの一族であるカトリーヌさんならば、ウォルターさんの役に立つ魔道具を選んでくれるだろう。
お土産を渡した時のウォルターさんの反応が、今からとても楽しみだ。
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