特攻
グオオオオオオン!!
しょっぱなからアクセルベタ踏みのジープが、岩に乗り上げ車体ごと宙を舞う。地面に胴体着陸したかと思うと、今度は泥にタイヤを取られ横滑りのまま敵兵をひき殺した。
いきなりの突撃で敵兵は混乱に陥れられていた。それもそのはずで、普通、敵が自分達よりも劣勢な戦況で真正面から突撃をかけるなど考えもしない。まさかそれをされると思っていなかった敵からは小銃弾による応射がわずかにあっただけで、どれも見当違いの方行に飛んで行った。
「おい!!絶対に止まるな!!止まったら死ぬぞ!!」
ボイドは鉄の頭に噛り付いて怒鳴ったが、声は聞こえていないAPSは敵を見渡せる丘まで移動すると、さっさとブレーキを踏んだ。
眼下では状態を立て直し始めた敵軍が、廃屋や廃車を盾にしてAK47やRPG9を構え始めていた。
APSはジープの後ろに取り付けられた機関銃に取り付くと、右から左に横なぎに敵兵をなぞった。
ドンドンドンドン!!!
それはあまりにも近かった。兵士の白目が見えるほどの近くで、しかも撃ち返されているというのに、このブリキの兵隊は全く恐怖を感じていなかった。それどころか楽しそうにしている雰囲気さえ感じた。自分でもおかしいと思うが、腕が人間そっくりなためか、それともこの金属の塊が節々にあまりにも人間らしさを感じるためか、親近感の様な物を感じていた。
ギューン
敵の陣地から白煙が上がった。錆びたドラム缶が空き缶のように踏みつぶされ、巨大な鉄の塊が姿を現す。
「戦車だー!」
運転席に戻ったAPSは再びアクセルを踏み込んだ。唸るエンジンがまるで暴れ馬のような加速をジープに与え、巨大なT70型戦車のキャタピラめがけて突っ込んでいく。俺達は接触する寸前でジープから転がり落ちた。
ぐしゃりと潰れたバンパーが事故の衝撃を物語る。それでも戦車は塗装が剥がれただけだった。無傷の砲塔が長い砲身をこちらに向けようとゆっくり旋回を始めた。死ぬ。ここで死ぬ。
APSの右手にはC4の起爆スイッチ。
瞬間、頭のてっぺんから尻の先まで強烈な衝撃が突き抜けた。頭の中で鐘がなり響き、強烈な耳鳴りの中で空にまで響いた爆音の残響を聞く。
目の前で、真っ赤な炎が戦車側面で上がったかと思うと、砲塔がひしゃげ、乗員ハッチから紅蓮の炎と共にヤカンが噴くような甲高い音が響いた。
その様子を見て固まったまま動けない敵兵達。
APSは倒れたボイドのそばまで駆け寄ると肩を貸して立たせた。
それはまるで歴戦の友を思うような動作で。
敵兵は逃げた。死ぬ物狂いで逃げて行った。遅れた友軍の戦車が近づいて来たからだった。
APSは戦車を見るなり走って近づき、なにやら周りでうろちょろしていたが、中に入れてもらえないと分かると、動いている戦車の上に立って軽機関銃を構えている。
面白いやつだ。それがボイドの感じた正直な所だった。
それからAPSはボイドに応急キットを投げつけるなどした。彼が受け取らなかったために3回も投げつけられた。




