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実戦投入

 その機械は、薄暗いコンテナの中に大量の武器弾薬と共に安置されていた。べつに廃棄されているわけではない。それらの武器は、全て不気味な機械が自分で選ぶために置かれているのだ。個人用攻撃連携システム、通称APSはこれから初陣を迎える戦闘用ロボットだ。

 身長180cm。体を構成するのは、むき出しの高炭素鋼フレーム。頭部分と胸部分にはチタン合金で覆われた高性能カメラ。人間向けに作られた道具を使うため、肘から先だけがシリコンで覆われた人間そっくりの腕パーツが付いている。これらがあいまって、テスト時からグロテスクな化け物や妖怪の類と呼ばれた機械である。


 APSはその強靭なフレーム故に、アサルトライフルの弾丸ならば4~5発まで耐えられる。またその頑丈さはこの中に脳みそが無く、遠隔操縦のロボットであるためだともいえる。金のかかる教育もコンピュータもこの機械には必要なかった。だから一台作るのに優秀な軍人を育成するのよりも安く済む。


 この兵器の安さには秘密がある。それは操縦するのが何も知らないFPSゲーマーだという事。戦場のリアルさを求めるプレイヤーにとってAPSに搭載された高精度カメラからリンクされる戦場の風景は本物そのものだった。本物なのだから当然だ。設計段階では、退役軍人や傷病兵を雇用し操縦することが提案されていたが、実現しなかった。怪我を負った兵士の多くが戦場を恐れていたためだった。軍は代替案としてゲームプレーヤーに目を付けた。小さなころからFPSゲーム、それも戦場をテーマにしたゲームを朝から晩までやりぬいたプレーヤーは、試験をするまでもなく敵への反応速度の面で退役軍人よりも勝っていた。


 結果、実戦投入までにリンクするのはFPSプレーヤーになってしまった。彼らはゲームをしていると思っているのだから金を払う必要もない。


 この事実はプレーヤーにもAPSに随伴する本物の兵士にも伝えられていなかった。




 ボイド伍長は唾を地面に吐いた。ここは馴染みのカンザスとは違い、土だらけ砂だらけの戦場だった。目の前には薄気味悪い金属の塊がminimi軽機関銃を抱いて突っ立っている。


 なぜ、自分がこの糞機械と一緒に戦わなければいけないのか、と思う間もなく、APSがその場でジャンプし始めた。助走を付けずにその場で40cmほども飛び上がり、まるで子供みたいにボイド伍長の周りをぴょんぴょんと回り始めた。


(なんだこいつ。これが新型兵器? 嘘だろう。お偉方はついに頭がいかれたらしい)


 耳に付けたインカムから作戦開始5秒前のアナウンスがあった。普通、そういうのは無いのだがこのAPSが来てからはこれをやるそうなのだ。馬鹿馬鹿しい。フットボールじゃないんだぞ。

 カウントがゼロになると同時にAPSはジープに向かって駆けだした。


「おい!!敵はそっちじゃないぞ!!!戻れ!!!」


 APSは背嚢からC4高性能爆薬を取り出すと、ジープのボンネットに貼り付け始めた。その車は俺達が使う予定の車だった。冗談というのにはいささかやりすぎだと思ったし、その爆薬量は高層ビルでもぶっ壊せるほどの過剰な量だった。一つで飽き足らず、二個三個と重ねているのだ。


 APSは乱暴な手つきで運転席に乗り込むと猛スピードで走り出した。かと思うと、急停止し、クラクションを鳴らす。そしてバックしてくる。


 俺に乗れというのか。APSが乗っているのは高性能爆薬が張り付いたジープ。衝撃でいつ爆発してもおかしくない車なのに。


 またバックしてきて今度はバンパーが膝に当たりそうになりボイド伍長は慌てて飛び乗った。

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