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狐の婿入り

日間ランキング91位がベストスコアでした

ありがとうございました

熊との死闘を終えたおっさん

運がいいことに熊を相手にしてできた体の外傷は逃げている時に切り株でコケたかすり傷一つだけだった


「怪我はなくてなによりだが酷く冷えるな」


全力で森を走り回り猛獣に精神を削られていた私の発汗量はなかなかのものだった

体はクールダウンしたが、体に纏った薄汚い汗が体温を奪っていたのだ


「小腹も減った。あー、ラーメンが食いてえ。具体的には大盛り味噌ラーメンにネギバターコーンチャーシュートッピングで」


コンビニ通販でカップ麺を購入してこの場で食べる事は可能だが、先ほどから揚げの香りで熊を呼び寄せただけあって流石にできるわけがない


「晩飯はカップ麺にしよう。ゆで卵も茹でて味噌ラーメンのスープにぶちこんでやる。締めにライスで雑炊だ」


晩飯を今日の生きがいに村へと帰ることにする

しかし、2分ほど歩いた所でその足は止まってしまう


「やヴぁい。道がわからんかも」


猛獣から逃げる際にしっちゃかめっちゃか走り回ったので帰る方向がわからなくなってしまった

ちなみにおっさんが夢中で走り回った距離はせいぜい300mにすぎない

だが道路の舗装はもちろん、何の目印もなく似たような木ばかり生えている森ではこんな些細な事でも遭難してしまうのだ


「弱った。意味もなく歩いてもリングワンダリングになるのが関の山だろうな」


しみじみと過去に見たテレビ番組を思いだす

森岡武志探検隊というサバイバルドキュメンタリーだ

リングワンダリングとは、人間は何の目印のない環境では真っ直ぐ歩いているつもりでも微妙に右や左に蛇行してしまう現象だ

広い森などで起こりやすく、真っ直ぐ進めない遭難者は広大な森を延々とグルグル回り続けてしまうのだ


「訪ね人ステ○キでもあれば助かるんだがフィクションのチートアイテムに頼ってもね」


ちなみに訪ね人ステ○キの的中率は70%としょっぱいのはご存知だろうか?

中々にふざけた青狸もいたもんだ  


見覚えのある場所はないかと辺りを散策していると頬に冷たい液体が流れ落ちる


「雨かよ。さっきまで雲一つなかったってのに」


山の天気は変わりやすい


急いで雨宿りできそうな場所を探すが中々見当たらない

始めはポツポツと降っていた雨だが、時間が経つにつれ徐々に雨量が増していく


「こりゃあ適当なとこでビバークした方がいい。視界が悪すぎる」


熊 遭難 雨とロクな事がない1日ではあるが最難関の試練がまだ残っているとは知らずに私はコンビニ通販を起動してレインコートを購入する


「衣服の濡れ具合によっては着替えもいるか」


しかしここで体にある違和感を感じる事になる


衣服が濡れていないのだ


確かに雨は降っている

シトシト雨は降っている

降水量は3ミリといったところか

肌に水が伝う感覚

雨水の冷たさ

地面が雨で濡れた時に感じる独特のにおい


確かに感じるのだ

しかし衣服は濡れていない 

空には雲が一つもない

ただただ雨は私の体に侵食せず、水を弾く滑り台が如く伝い落ちてゆくだけ


「服が濡れてない? ズボンも、靴も髪も? それに雨が降ってるってのに空には雲一つない。不気味すぎるぜ」


しゃんしゃんしゃん


鈴の音が聞こえる。一定のリズムを保って音が響いていく


しゃんしゃんしゃんしゃん


何者かが歩くたびに鈴が揺れて音を奏でていく


しゃんしゃんしゃんしゃんしゃん


音が少しずつ大きくなってくる


それはカロットの元に音の発信源が近付いてくる紛れもない証明


私は身を隠せそうな草むらを見つけると、体が汚れるのも厭わず地面に這いつくばりその身を隠す


「危険度最大。熊なんて目じゃないぜ。へへ、私の第六感がここまでの拒絶反応を出すとはね」


逃げろ逃げろ逃げ炉二元ろ2ゲロ弍げろ②下呂


その場に留まることに身体が拒絶反応を示す


「黙ってろ! こんな見せ物は一生に一度見れるものじゃねえんだ。ああ、たまらねえぜこの感覚は、早く見せてくれ」


彼の精神が異様な程の高揚感に包まれる

毒を纏うその雨はカロットの精神を着実に蝕んでいた


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