表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/52

腹ぺこ家族

ランチに呼ばれて自分で飯を作る羽目になるとはな、ちょっと新鮮な気分だ。

メインはから揚げだけど、お客人の女性二人も食うから少し手を加えたものにしないと

何を作ろうか考えているとマキちゃんがかまどの火をつけてくれる


「おじさんは火起こしができないからあたしがツケてあげるね」


「ん~、大義大義」


「すいません、兎の干し肉と卵と山菜くらいしか食材はありませんが入用でしたら使ってくださいね」


そう言ってイリスさんは手持ちの食材を私に渡してくれる


「ありがとうございます、勝手にかまどを使ってしまって申し訳ございません。なるべく汚さないように気をつけますので」


「いえいえ構いませんよ、主菜を作って頂けるのに文句なんて言えません」


台所というのはお母さんや女性のテリトリーなのだ。男性が好き勝手荒らしていい場所ではないので一応保険を掛けておく


卵があるならそうだな、から揚げと卵で簡単なやつをつくるか

液晶のコンビニ通販でめんつゆと玉ねぎを買っておく

玉ねぎ2個入り 100z  めんつゆ500ml 200z


まずはから揚げを手から20個出す。続いて卵を割って溶き卵にしておく

すると、横からスッっと手が伸びてきてから揚げを2つ強奪される。マキちゃんだ


「えへへ~」


「いけない子がいるようだ、奥さんも味見どうですか?」


イリスさんにもから揚げを2つ小皿に乗せて渡してあげる


「もう、マキったら。わたしにまですいません。これは鶏肉ですか? とてもジューシーですね。焼いたものではこうはなりません。それに味付けも塩だけじゃありませんね。とても複雑な旨味があります。美味しいです」


さすが飯を作り慣れてる主婦だけあって、中々の洞察力だ


「えぇ、鶏肉に小麦の服を着せて油で泳がせてるんですよ? 調味料に関しては説明が難しいですねぇ。ここら辺では食べ慣れない物ですので」


喋りながら作業を進める。玉ねぎを食べやすい大きさにカットしてめんつゆと一緒に鍋に入れる。玉ねぎに火を通すため中火で2分ほど煮る


「もうできた?」


「もう少しかかるなぁー」


調理をしていると待ちきれないのかマキちゃんは私の回りをちょろちょろと歩き回る。飯を待つ猫みたいだな

玉ねぎに火が通ったら、から揚げを鍋に入れる。食べるのは私とマキちゃん、イリスさん、マルスの4人なので一人5個ずつだ


「いい匂い、もうできたでしょ? 早く食べようよ」


「せっかちな子だなぁ、ほら向こうで待ってなさい」


彼女は私のいう事を聞かず鍋の中身をずっと覗きこんでいる。よし最後の仕上げだ!

火が通ったから揚げと玉ねぎに、溶き卵を箸で切るように加えていく


「・・・・・・今です!」


諸葛孔明のような掛け声を発しつつ、卵がいい具合に半熟になっているタイミングで鍋をかまどから外す。から揚げのなんちゃって親子丼の完成だ


「すごーい! 金色だよ金色! 食べ物なのに輝いてる!」


「なんて美しい食べ物なんでしょう。それにこの甘くて食欲をそそる匂い。お砂糖は使ってなかったのに」


それはめんつゆのおかげだよ。ホントはみりんや料理酒で味を整えるべきだから、実際はただの手抜きなんだ


「イリスさん、これは甘い鶏肉料理なんですが緑が欲しいので合いそうな野草を選んでくれませんか?」


ブツブツと料理の考察に試行錯誤しているイリスさんに声をかける


「ハッ!? わたしったらすいません。甘い料理でしたら少し辛みのあるカイワレン草を使いましょう」


「おじさん、この料理はなんて言うの?」


「これは親子丼って言う料理だよ。鳥の卵と鳥の肉を使ってるだろ? だから親子丼って言うんだ。君たち親子にピッタリな料理だと思ってね。さあ冷める前に食べようぜ」


親子丼を皿によそってテーブルに運ぶ。

盛り付けと配膳は全てマキちゃんとイリスさんがやってくれた。調理はほぼ私ががやったので気を遣われたのだろう


親子丼の卵は半熟でいい感じにできているとおもう。卵とめんつゆの主張が強いので、から揚げの肉は低質のはずなのにとても美味しく誤魔化しが効いている。冷や飯をチャーハンにして食べると美味しくなる理論だな。二人の反応はどうかな?


「卵がフワフワだよ! 白い野菜も甘くて柔らかくて口の中で溶けるみたい。でもやっぱりお肉が一番おいしいや!」


「こんな味の料理は食べたことがありません・・・・・・いつも卵にはしっかり火を通していましたがこんな食べ方もあるんですね。でも一番凄いのはこの鶏肉ですね。そのまま食べても美味しかったのに甘くしても美味しくなるなんて」


ふぅ~、めんつゆの味と、甘い肉料理に少し不安があったけど口に合うようでよかった。私は料理を食べ終わるとトイレを借りるために席を離れる。席に戻ってくると、先ほどまで空になっていたイリスさんとマキちゃんのお皿に新しい親子丼が盛られていて二人はそれを美味しそうに食べていた


っておい! それマルスくんの分じゃんか!


「ちょっと! ちょっと! それマルスくんの分だぞ! 食べたらアカン!」


「え? でも、もう食べちゃった」


マキちゃんはたくさん食べれて満足したのかニッコリ笑って床に横になる


「あらヤダわたしったら! 夢中になってマルスの分まで食べてしまうなんて。マキ、なんでお母さんを止めてくれなかったの」


なんなのこの親子は、腹ペコ一家なの?

結局マルスくんにはから揚げを8個置いていくことになった。


「美味しかったよ! また作ってね!」


「本当にごめんなさい。マルスの分をまた別に用意していただいて。」


「いえいえ、楽しく食事ができてとても有意義な時間でした。それではそろそろ失礼しますね」


私はそう言い残すと扉に手をかける


「おじさん! またね!」


「ああ、また」


「ぜひ、またいらっしゃってください」


別れの言葉は「さよなら」ではなく、「また」だった。社交辞令のようなものかもしれないが、また来れる日を思うと、それはとっても素敵なさよならの言葉なのだ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ