新しい生活
飯も食わせたしやる事もないので寝床に戻ることにする
「もう寝るだけだよね? 洞穴に行こうか?」
「はい」
ちょこちょこ敬語使うなぁこの子は。子供はもっと開放的であってほしいものだが世知辛い世の中だな。洞穴に戻ると先に戻っているグルスが出迎えてくれる
「よお、どこ行ってたんだお前ら? まだ初対面なのに一緒にお出かけとは仲が良くていいことだ。俺らは家なしの中でも立場が弱いから協力していかないと生き残れねえ」
「外を散歩してたら会ったから一緒に道草を食ってたんだよ」
「・・・・・・?」
「そうなのか。エムル、皿割って晩飯食い損ねただろ。少ししかねえが干し肉やるよ」
そう言うとグルスは汚い布の袋から手のひらほどの大きさの干し肉をエムルに手渡す
「いらないよ? お腹減ってないから」
「強がるんじゃねえよ、一日一食の飯を抜かれて腹が減らねえわけねえだろ。遠慮しねえで食っとけよ」
「道草を食ってきたと言ったはずだが?」
「お前がメシを分けてやったのか? 人族がハーフエルフに? まじかよ」
グルスは胡散臭い目で私を見つめる。なんだこの野郎やんのか?
「悪いが私は世情に疎くてね、人だ亜人だの差別だなんだ知らないし興味もないんだ」
「ご飯おいしかった。柔らかいパンとお肉だったよ」
「疑って悪かったな。 ただでさえ人族は亜人を見下してるしハーフエルフともなると奴隷のようなあつか」
「それ以上はやめなさいって、誰も幸せにならないし生産性の欠片もねえ。興味がないって言っただろ。悪いが疲れてるから私はもう寝させてもらうよ」
私は手頃なスペースを見つけると、アイテムボックスから2枚のダンボールを取り出す。1枚を地面に敷き、もう1枚を布団代わりに上にかける。瞼を閉じて羊の数を数え------られなかった
誰かが肩を軽く揺すってくるのだ
「なんすか? もう寝るとこなんですが」
「これ」
エムルが動物の毛皮のような物を無言で差し出してきた。どうやら寝具を貸してくれるようだ。しかし、悲しきかなエムル用のサイズなので、とても小さく私が使っても腹から膝前程度の長さしかない
「ご飯のおれい」
「私が使っちゃったら君が使う分が無くなるだろ? 飯も私が好きで食わせただけだから気にしなくていいよ。その気持ちだけで十分だ」
「で、でも」
私はエムルの頭を両手で掴むと激しく撫であげた。ムツ〇ロウさんスタイルだ
「よーしよしよしよし! もう寝るから話は明日にしてくれな」
無理やり話しを終わらせて、さっさと眠らせて貰うことにしたのだ
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「んぅー、便所」
朝の目覚めは尿意によるものだった。清々しい目覚めこそ理想的だが現実はこんなものである。起き上がるとすでにグルスもエムルも起きていて、外でタライに水を入れて洗濯をしていた
「クッソ、なかなか汚れが取れねえぜ。臭いも落ちねえなぁ」
「あっ、 お、おは」
「おはようお二人さん、朝から精が出るじゃーん」
「よお起きたか。よく眠れたか?」
「幻想的な昆虫のオーケストラと固く力強い地面、洞穴だから湿度も最高だぜ? 震えるほどよく眠れたよ」
「なーに、そのうち慣れるさ」
洗濯の手を緩めないままグルスは答える
水洗いだけで汚れを落とすのは厳しいだろうな。そういや石鹸を買ってあったから使わせてやるか
アイテムボックスから石鹸を取りだし投げ渡してやる
「貸してやるよ。貸すだけだからなちゃんと返してよ」
「おお! 石鹸じゃねえかありがてぇ! でも、これかなりの上物じゃねえのか? いいのか?」
「使わねえと石鹸の存在意義がないだろ。ただし節約はして上手に使ってね」
「おおよ、エムルお前さきに使って見ろよ。石鹸なんて使うの初めてだろ?」
エムルは本当に使っていいのか私に視線で語りかける
「ええんやで」
許可を出してようやっと石鹸を水につけて衣服を擦り始める
「泡すごい。スゥー、いい匂いする」
「すげえ泡立ちだな、こりゃあマジで上物じゃねえか。エムル! 俺にも早く貸してくれよ」
「洗い終わったら呼んでくれ」
そう言い残すと洞穴に戻って朝食の支度をすることにする。他人の洗濯を見てても仕方ないからな
コンビニアプリで食パンの6枚切りとマスタードとトマトを購入する
食パン 150z トマト1個 100z マスタード瓶 300z 合計550zだ
食パンはトーストしたい所ではあるがメンドクサイし今回はそのままでいいか。まずはトマトを薄くスライスする。から揚げを右手から出し半分の大きさに切る。パン全体にマヨネーズを薄く塗る。トマトとから揚げをパンの上に敷く。から揚げにマスタードソースを付けてもう1枚のパンでサンドする。から揚げサンドの完成だ
料理を作り終えるとタイミングよく洗濯終わりの報告を受ける
「おーい洗濯終わったぞ、助かったぜ」
「凄いキレイになったよ!」
石鹸を受け取りアイテムボックスにしまう
「はいはい、ご苦労さん。朝飯を作ったから特別にご馳走してやるよ。手を洗って来いよ」
「おっ、マジかよツイてるぜ。お前をここに連れてきて正解だったな」
「現金な野郎だな、私はお前がここに連れて来た事を根に持ってるからな。忘れることなかれよ!」
「わ、悪かったって」
手を洗い終えたグルスが私の元へ来る
「なにを食わしてくれるんだ? パンか? 粟か?」
「ほらよ、肉の入ったパンだよ。私に感謝と敬愛の念を込めて食べるんだ」
「おおおおおおお! こりゃまた上物のパンだぜ! うへへへ」
そう言うや否やグルスはパンを食べ始める
「うめええええ! 柔らかすぎだろこの白パン、香辛料も肉も入ってやがる。貴族飯かよ!」
モグラのおっさんはどうでもいいんだがエムルが来ねえな。
自分の寝床スペースにちょこんと座ってるエムルに声をかける
「どうしたの? 早く朝メシ取りに来なよ?」
「わたしは昨日の夜食べたよ? 次のご飯は今日の夜だよ」
「んなこと言ったらモグラ野郎は昨日の夜も食って朝も食ってるだろ? 早く取りおいで」
エムルは少し迷っていたが、食欲には勝てずパンを受け取りに来た
「白パンだ! ありがとうございます。ちょっと辛いけどおいしい!」
しまった子供用はマスタードを抜くべきだった。まぁ食えてるみたいだから問題ないか。私はパンを齧りながら今日の事を考える、どう動こうかな
「あ、そういや今日はレイから日雇いの仕事を斡旋されたから食い終わったら行くぞ」
えぇ、聞いてないんですが……




