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<11>-3

 ――受けた衝撃と感覚が、似ていた。

 どうやら気を失っても、過去の記憶は蘇ってくるらしい。

 熱……吹き飛ばされる、一瞬だけあの時の光景が見えた気がした。

 真昼の――闇。半壊した頭の異形。もう一つのパンドラクライシス。

 アレは、誰が戦っていたのだろう。いまでもこの疑問に予想すら出来ない。

 そんな光景を、倒れた俺が視界も虚ろに眺めている。

 眺めている……眺め……、ん?



 意識が戻るにつれて、瞼が開かれ、視界がようやく回復してきた。

 過去の回想以上に衝撃的な出来事が現実で展開されていて、彼は血相を変える。


「うきゃぁあああああ! な、なななななにやってんのぉおおおおッ!?」


 宗二郎から奇声の悲鳴。

 仰向けになっている状態。そこへ祈理が剣を振り上げている。魔導科の二年生ともなれば、魔術兵器の扱いならお手の物らしく、片手で剣を軽々と振り上げていた。


「あ、起きましたか?」


「起きましたかじゃないし! なにトドメを刺そうとしてるんですか! しんじらんない!」


「…………失敬な。アナタがあれしきの一撃を受けて気を失ったものだから、この剣でもう一回頭を叩いて起こしてあげようとしたまでです」


「野蛮極まる荒療治ッ」


 これ以上、殴られてはたまらない。

 宗二郎はすぐに立ち上がろうとしてバランスを崩した。思っている以上に体力が消耗していた。


「…………はぁ。…………先輩。とても疲れたんで、もう帰ってもいいですか?」


「なんだか、あまり更生の色が感じられないような気がします。一日で良くなるほど、私も期待はしていなかったのいですが、これは養成所始まって以来の重傷者ですね」


 不満そうにする祈理。いつの間にか檜山が去っていたのもあって、練習場に生徒たちが入ってきていた。


「他の生徒が来ちゃいましたので。きょうの所はここらへんで良しとしておきましょう。それじゃあ明日は本格的な活動をしてもらいますので」


 急に慌てて、祈理が立ち去ろうとするので、宗二郎はちょっとまってくれと言って引き留めた。


「あの先輩。足に力が入らないんで、引っ張って貰ってもイイですか」


「………………どこまで、どうしようもない人なんですかアナタは。人の手を借りてまでの事でも無いでしょう? 自分でなんとかしなさい」


「ああああああ! もう立ち上がれないんですぅううう! お願いします! いっかい、いっかい引っ張ってもらえるだけで結構なんです。そうすれば心を入れ替えられる気がするんですっ。更生の第一歩。養成所にとってはカスカスな一歩だが、東堂宗二郎に取っちゃ、でっかい一歩ぉおお! 石蕗せんぱあああああああいいッ! おねがぁあああああいぃ!」


「わ、私の名前を叫ばないで下さい!」


 あまりにも執拗に頼まれるものだから、祈理は仕方無しと――本来であれば、触れたくもない男子生徒の手を掴んで、引っ張り上げた。


「…………………………………………マジか。……すげえな」


「――え。いま、なに。を? …………ちょっとアナタ、いま何をしたんですか」


 思わず口走ってしまった宗二郎はハッとして祈理を見る。

 視線が合う。近くで見ると(まつ)()が長い。

 ――さて。なんて説明しようか。取りあえず先輩のデカイ胸に心奪われましたって言っとくか? いや流石に冗談でも、冗談と受け取ってくれませんよ――。


「――ねぇ~?」


「アナタ…………とことん、ゴミクズな思考をしてるんですね。最低です」


「あ、すいません。つい出来心と心の声が口からダダ漏れ。先輩がすごく可愛かったもので――そ、それじゃあ……だめ?」


 にへらぁと作り笑顔。

 何も言わず祈理の手が、ゆっくりと宗二郎の眼前に差し出され、


「…………ぉお。割と生命線がキレ――――ぃいいいいい!? ぐべぇッ!」


 最後まで言い切る前に、祈理の手から魔術が放たれた。

 ――今日二度目の〝ぼわッ〟が放たれ、宗二郎の頭を撃ち抜く。

 さながら西部劇に出てくる草(タンブルウィード)が如く、コロコロ丸くなって転がり、壁に衝突した。目眩と激しい痛み。練習場はトレーニングスーツの有効エリア内なので、怪我はしていない――はず。


「どうやら私の認識が間違っていたようですね。アナタの根性は打っても打ってもたたき直されるどころか、汚らわしい不純物が混じった粘土みたいな人だったようです……こうなったら、どうやってもアナタを物理的にどうにかしない限り、私の気持ちも晴れません。普通科の一年生にこんなのがいるなんて……同じ学校に在籍している者として恥ずかしい限りです」


 憎悪と本音と暴言が重なって、もはや親の敵をみるようであった。

 好いて貰う気は無かったのだが、コレじゃあ嫌われすぎて――関係の修復はムリかもしれない。


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