ダンジョン攻略 その8
やっと風邪治りました。
10月20日 改変しています。 特に魔法をね。
―――キィィィンーーー
高い金属音がその空間に響いた。
ーーードサッ!―――
黒い球体が、宙に現れた。
その中から。一人の女性が地面にお尻から落ちた。
「いっ!!いったぁぁーーい!」
お尻を打った愛子は、お尻を痛そうに摩った。
「もう!何なのよぉぉ!?」
そして現れたのは、黒い義足をつけた愛子だった。
周囲を愛子が見渡すと、つぶやいた。
「ここって…私が戦ってた場所じゃ……」
そこは……愛子が文字通りの死闘を、骸武者と繰り広げた場所だった。
その証拠に目の前の地面には、血の匂いと黒い染みがあった。
「うぷっ……うえぇ……」
愛子は吐いた。
そして体が震えた。
恐怖が蘇ってきた。
「だ…大丈夫! 私は勝ったのよ! アイツは…骸武者は……私が消したんだから」
愛子は確かめるようにつぶやいた。
―――カタッ!―――
「えっ!何っ!何の音?」
愛子は音がするように振り返った。
そこには、木製の小箱があった。
小箱の蓋が開いたみたいだった。
「なんだぁ…小箱が開いた音かぁ…・・びっくりしたぁ……ふぅ!大丈夫!大丈夫よ!」
愛子はルルカッタのことを思い返した。
私がこの世界にくるきっかけとなった少年。
私が護るべき存在。
「ルル君、大丈夫かな……私と同じ目にあってなければいいけど……」
胸に手を当てて、愛子はつぶやいた。
そして愛子は立ち上がり一歩ずつ恐る恐る歩み進めた。
―――カツンカツンーーー
ホールに硬質な音が響いた。
「本当に自分の脚みたいに動くのね。マキナ……ありがと」
義足をくれたマキナのことを思い出した愛子。
「そういえば…私の今の格好ってどうなってんだろ…あっ!鏡があるわ」
ホールの奥にあった鏡で愛子は自分の姿を見た。
足には黒く光るボディーに薄紫色のスリットラインの入った義足があった。
「おおっ!やっぱり、なんかすごいねコレ。見た目は金属なんだけど……ロボっぽい!宇宙世紀って感じ」
そして改めて自分の身体を見た。
髪は乱れていたが、顔や手には傷がどこにも見当たらなかった。
着ている服装は白いミニワンピース型ナース服。
しかも大胆なバックレスタイプだ。
「ううっ!服は……やっぱり、はずかしいよぉ」
ミニスカートの中身が見えそうで見えなかった。
絶対領域がある意味で情欲をそそる格好だった。
「ううっ!!これルル君には絶対良くないわ! 教育的にダメだぁ…これだと何か趣味の悪いコスプレをしているみたいだしぃ…それに……」
ルルカッタが今の自分を見た時のことを考えた。
―――アイコ様……すっごくいいです!!―――
心の中のルルカッタが、すごいガッツポーズで言っていた。
「あれっ?」と愛子は心で思った。
―――アイコ様、好きです!大好きです!すごい素敵です!さぁ結婚しましょう!!―――
心の中のルルカッタが目を輝かして愛子に語り掛けていた。
「そんな、だっだめよ!貴方とは年齢がちがうのよ。主に見た目的な問題で!」
―――そんな!アイコ様!見た目の年齢なんて愛の前には関係ないです!―――
―――さぁ!アイコ様!!―――
心の中のルルカッタが愛子に襲い掛かったぁ!
「だっだめよ!そんないきなり!!ああぁぁ!!」
「いゃぁん!だめよぉ!ルルクゥゥン!!」
思わず声に出した愛子。
鏡の前には、身をくねくねとくねらせる愛子がいた。
甘い声で心の中のルルカッタと自問自答していた。
愛子はふと鏡に映った自分の姿をみた。
そして自分に言い聞かせるように言った
「コホン! ふーー! 深呼吸深呼吸ぅ! やっぱりこの服装はルル君的にダメね!彼をダメにしてしまうわ!」
深呼吸をした愛子は拳を握りしめた。
そして予感めいたことを感じて言葉に出していた。
「マキナ……きっとまた会えるわ。そのとき改めてちゃんとお話し…いやOHANASIをしましょうね!」
マキナさん!にげてぇ!超逃げてぇ!OHANASIされる前にぃ!!
「さぁ、今は彼と先に逢わなくちゃね」
愛子は言葉に出して歩き始めた。
そして開いた小箱の中をのぞいた。
「これ何かしら…これは!」
木箱の中には茶色く変色した手紙が入っていた。
『この手紙を読んでいるということは、この魔物を倒したんだね。コングラッチュレーショーン!! 』
愛子は思わず手紙を握りつぶしそうになった。
こめかみには青筋が立っている。
「ははっ!ほんとうにふざけてるわねぇ! フー……落ち着いて愛子!これはトラップよ!ハンニバル並みのね!心理的な動揺を誘うつもりなのよ。きっと!」
気持ちを落ち着けた愛子は、改めて手紙を読み返した。
『いやぁ、こいつ結構強く調整しすぎて、ダンジョン最下層の手前くらいにしか置けれなかったんだよねw よく倒した、本当によく倒せたね? そこで、こんな魔物を倒せた君には特別な贈り物を送ろう!』
「えっ…贈り物って…」
愛子は嫌な予感がした。
そして木箱を見るとそこには、愛子が見慣れたものがあった。
―――ナースキャップ―――
そう愛子が元の世界で以前使っていた物にそっくりな白い物がそこにあった。
手紙には続きがあった。
『この帽子は、僕からプレゼントだ! 探索魔法が付加されている。プレゼントの形は倒した君のスキルに合わせて自動で調整されるからねw どんな形かはお楽しみだZO☆』
―――グシャ!!―――
「ふっざっけんなぁぁぁ!!」
愛子は手紙を握りつぶした。
もう豆サイズになるくらいに。
「ふん!!!」
その極限まで圧縮された手紙をぶん投げる愛子。
―――ビシイィ!! バゴォ!―――
地面にめり込む元手紙だった物。
周囲がへこんでいた。
摩擦熱で発火する手前という感じである。
それは地面にめり込んだ。
―――シュゥゥゥ!―――
「はぁはぁ!今のこの一撃なら武者の頭部を確実破壊できるわ! そう卵割れば黄身が出るでるのと同じくらいね」
愛子が肩で息をしながら叫んだ
―――キィ―――
ホールの奥に扉が開かれ、光る通路が現出した。
「ふー気にくわないけど!とっとりあえず!これをつけておけばいいんでしょ!いいわよ……もう何でもつけるわよ」
愛子は髪を紐でお団子に結びなおした。
ナースキャップを手慣れた様子で頭にピンで固定した。
愛子は、その光る通路に向かって歩き始めた。
「今度こそ、ルル君に会えるはず!」
そうつぶやくと、愛子は光の通路に消えた。
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そして話は少し前にさかのぼる。
そうルルカッタが、愛子と別れてしまう所まで戻った。
「うっ……まぶしぃです!」
ルルカッタは黒い光に包まれた。
そして目を開けると、そこには通路があった。
「…ここは……これは……転移’(アンスラ)’みたいだけど……アイコ様もどこかへ飛ばされてされてしまったんだろうか……大丈夫でしょうか」
ルルカッタは消えていく黒い光を手でつかんだ。
「あっ……これは…」
黒い光はつかむことのできなかった。
そしてルルカッタの手からこぼれるように消滅した。
「アイコ様……」
ルルカッタは愛子のことが心配だった。
それは常に傍らで彼女のことを見てきた彼だからだった。
「アイコ様の力は確かに未知数なんですけど…せめて、魔法の使い方をちゃんと伝えておけばよかったです」
戦闘は本来、自分のような魔法師の領分だった。
それなのに彼女は僕を守ってくれた。
「アイコ様に護られているだけの僕ではだめですね……」
ダンジョンに入ってからは特に守られっぱなしだった。
ルルカッタは愛子の自分への愛情を感じていた。
しかし彼は思っていた。
自分が召喚のに、何もできない不甲斐なさを。
「アイコ様、今度逢えた時に僕は貴女に頼られる自分でいたいとおもいます」
宙につぶやいたルルカッタに答えるものはいなかった。
ルルカッタは青い通路を進み始めた。
自らの思いを胸に。
―――カツンカツンカツン―――
通路を歩くルルカッタ。
すると突如奥から猫のような形の魔物が飛び出てきた。
「キキイイィィ! 」
甲高い叫び声をあげルルカッタに向かってきた。
猫のようなと表現したのは、首が2つあり赤く光る二つの目を宿していた。
その魔物は右手に生えている鋭い爪でルルカッタに襲い掛かった。
「うっ!まずい’電撃’」
右手を掲げた。
右手に魔法陣が現れた。
そして魔法陣から電撃が放たれた!
―――ヒョイ!―――
魔物は軽く飛び上がり魔法を避けた。
「くっ! やられる!」
そう一瞬思ったルルカッタは両腕を目の前でクロスして爪の暴威に耐えようと踏ん張った。
―――シャキン! ザシュ!!―――
ルルカッタの腕に深い切り傷が入った。
「くぁ!いたぁ……」
ポタポタと腕から血が流れ出た。
「くっ!獣魔召喚’(リヴァ)’」
そして思い出したように呪文の詠唱を行った。
―――シィンーーー
魔法陣がルルカッタの前に描かれた。
しかし…そこからは何も現れなかった。
「そうだ…ぼくの獣魔は……殺されたんだ……」
ルルカッタは思い出した。
街から逃げるときに母上と一緒に戦った自分の獣魔のことを…
魔法師の魔法で飛ばされ、蹴とばされ、斬られ息絶えた自分の獣魔を…
「僕が…殺してしまったんだ……いや殺させてしまったんだ……」
剣で斬られながらも母上を護ろうと戦った獣魔。
白い狼のような体つきの獣魔だった
子供のころに獣魔契約をしてからずっと一緒だった…
僕の獣魔……
「うっ…獣魔…僕は……」
ルルカッタの瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
そしてつぶやいた。
「ごめん…ごめんよ…ハク」
―――ウォォォン!―――
狼の遠吠えのような声が聞こえた。
ルルカッタは顔を上げた。
魔法陣が消えずに光っていた。
「あっ…ハク……きみってやつは……」
魔法陣の上には薄く光る狼が透けて見えていた。
尻尾をパタパタさせていた。
「君は…こんな僕にまだつきあってくれるのかい?」
そう魔法陣につぶやいたルルカッタ
魔法陣の薄く光り透けた狼は尻尾をふった。
―――ウォン!―――
「そ…そっか…ありがとう。ハク!」
そしてルルカッタは魔法を唱えた。
昔、研究した古代魔法を!
「強き爪と想いを宿す我が獣、我が力となれ! ”獣魔召喚魔装術”」
叫ぶルルカッタに魔法陣の白い狼の零体が重なった。
―――ウォォン!!―――
青い光が包み、ルルカッタの姿を変えた。
それは、白き獣人と呼ぶにふさわしい異形であった。
「あぁ…ハク!君を近くに感じるよ。ありがとう…」
白き獣人にルルカッタは変身した。
「キキイイィ! ギイイィ」
猫のような魔物は、その爪をルルカッタに振り下ろした。
そのスピードは風圧で周囲に風の壁を作っていた。
―――ヒュッ! ガキィィィィン!―――
「そんなもの!今の僕には届きません」
そう叫ぶルルカッタは自信であふれていた。
近くに自分の獣魔の鼓動を感じた。
殺されてもう会うことができないと思っていた。
でも召喚で来てくれた。零体になっても僕と居てくれる。
それがルルカッタはうれしかった。
「はぁぁ!」
魔物の爪は獣化したルルカッタには届かなかった。
ルルカッタは飛び上がり二つ首の魔物を飛び越えた。
そして右手を振り下ろした。
―――ザシュ!―――
「キィ!」
二つ首の魔物は素早くルルカッタの攻撃を避けた。
「そこです!!」
ルルカッタは魔物に蹴りを放った。
――キイン!―――
魔物はルルカッタの蹴りをはじき返した。
「くっ!魔物のくせに硬化の固有魔法をもっているんですか……厄介ですね」
「キシャァァ!」
魔物はルルカッタを威嚇した。
「でも、今の僕なら!はぁぁ!」
ルルカッタは自らの右手に力を籠めた。
そして、素早く振り下ろした。
「はぁ!真空爪!!」
振り下ろした爪の前に空気の爪が現れ敵を襲った。
獣人化したことで使用することができるようになった特殊技能だった。
―――ザクッ!―――
「ギィーーーー 」
魔物は、当たる前にルルカッタの爪をよけた。
しかしポタポタと体からは血が流れ出た。
「キィ!?」
魔物はよけたはずの身体が、切られてることに驚いていた。
そしてえぐられた身からは血が流れ出ていた。
「この攻撃からは逃がしません! 真空爪!」
さらに空気の刃が猫型魔物を襲った。
それは敵を切り裂いた。
「これで最後です! 」
腕にすべての力を籠めた。
さらなる空気の爪を練った。
「僕の勝ちです!」
ルルカッタは一瞬、勝ったと思った。
「キィィィ!!」
勝てると思っていた。
しかし相手は手負いの魔物である。
魔物は闘争本能のままに、ルルカッタに再度襲い掛かった。
けた違いのスピードで
「――――――クッ! 」
思わずよけるルルカッタ。
しかしそれがさらなる窮地を読んだ。
別の通路から同じような魔物が現れたのである。
「なんの!これくらい!もう一匹増えたからと言って…」
体がぐらつくルルカッタ。
急に襲ってきた疲労感。
「くっ魔法力が……」
獣人化が解けたルルカッタ。
先ほどとは違い魔物からのプレッシャーを受けた。
体から冷や汗が流れていた。
「こんな時に……」
ルルカッタは歯を食いしばった。
自分の魔力が尽き、このままでは死ぬと思った。
「このままでは……そうだ!さっきもらった物が!」
思い出したのである。
愛子と共にフロアボスを倒したときに手にした贈り物を。
―――ゴソゴソッ!グイッ―――
ルルカッタはウエストバッグを探った。
そしてそれを取り出した。
「これを使うしか……」
年代を測定出来ないほど古い魔力回復薬。
「魔力を回復させなければ…僕はここで死んでしまいますし……」
一瞬戸惑ったが、ルルカッタはその瓶の中身を一気に飲み干した。
「えぇい! 儘よ! ゴクッ! うえぇ……まずぃ……」
―――ドクン―――
―――ドクン、ドクン―――
―――ドクン!ドクン!ドクン!―――
「かはっ! ううぅこっこれは! グアァァ!?」
急に胸が早金を鳴らすように拍動を速めた。
そしてルルカッタに激痛が走った。
「うぅ…しまったぁ…これは……毒か……」
ルルカッタは毒だと思った。
しかし、その魔力回復薬はルルカッタの魔力を回復させた。
「なっ…なんで、こんなことが…」
ルルカッタは驚いた。
「ぼくの……魔法力が増えている……これなら!」
その身を襲う万能感。
そして感じる自らの身体の変化。
髪型はもともとは坊ちゃん刈りの髪型だったが肩まで伸びた。
その顔つきとあいまって少女のようだ。
「ぐぅぅ!いたいぃ!」
ルルカッタは激痛を感じ、両腕を掴んだ。
その痛みに呼応するように体が変化した。
「キシャァ?」
魔物はルルカッタを伺い見ていた。
いつも読んでくださりありがとうございます。
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これからルルカッタ編の始まりです。
次回更新は土曜日20時に更新載せる予定です。