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ダンジョン攻略 その6

風邪がなかなか治りません。

―――グシャ!―――


 愛子の両足を切断した武者ボーンジェネラルは、愛子を壁に投げつけた。


「う…ぐぅ・・」

「グガアアァァ?」


 カタカタを大口をあけて愛子をあざ笑うと、愛子に背を向けた。

 壁に崩れ落ちた愛子の目には、骸骨武者ボーンジェネラルの後ろ姿が写った。


「く…うぅ…い…たぁ…いぃ…」


 壁に打ち付けられた愛子には、全身を激痛が駆け回っていた。

 その痛みと反比例するように、愛子の気力は急激に失われていった。

 もう愛子の精神ココロは、痛みと出血で限界寸前だった。


―――いたい―――


―――私……死んで……いくのか……な―――


 愛子の精神ココロが限界を自覚させた。

 そして意識を消失させようとしていた。

 愛子の命は風前の灯であった。


―――ルル君……ごめん…ねぇ……私―――


 愛子は痛みで意識が消えそうになりながらも、護ると誓った少年ルルカッタの事を思った。

 そして出会ってからのことが走馬灯のようによみがえる。


―――私……君を―――


 目の前でルドルフから助けてくれと伝えられ、託された少年。

 優しい笑顔で、私のことを励ましてくれた少年。


―――ルル君……―――


 愛子は砕けそうになる心の片隅で少年ルルカッタのことを思った。

 護ると誓った少年。


―――ルル君……逢いたい……逢うまでは!私は……死ねない!!―――


 愛子の心に一つの光が差し込んだ。

 それは約束だった。

 護ると誓った、一人の少年ルルカッタ


―――私が、彼を…ルルカッタ君を、護るんだ!――― 


 ルルカッタに逢うまでは死ねない!

 死ぬわけにはいかない!

 愛子が強くルルカッタのことを意識した時だった。

 

―――アイコ様!―――


 心の中で少年ルルカッタの声が聞こえた気がした。


―――負けないで!アイコ様!―――


 そして愛子の心の中で、ルルカッタは叫んでいた。


―――諦めないで!!アイコ様!!―――


「そうだ!私は彼を護ると誓った。私は死なない!死んでたまるか!死ぬのはボーンジェネラルだ!」


 愛子が声にならない声でつぶやくと、愛子の体に黒紫色の魔法力マナが廻ったのを感じた。

 そして、首から下げていたステータスプレートが光り輝き、新たな魔法が刻まれた。


―――重力魔法”真滅圧縮テラドバアル”―――


 愛子の脚をすべて咀嚼したボーンジェネラルは、槍を掴みかかった。

 愛子は力を振り絞り、ボーンジェネラルを見た。

 

―――あんな奴に負けたくない!―――


 愛子は体を壁に預けて震える腕を、体に残されたわずかな力を振り絞り掲げた。

 そして自らの想いを込めて詠唱トナエた。

 先ほど発現した新たな魔法を!


「…テ……”真滅テラド……圧縮バアル”…ウゥ!!」


 愛子の手の前に紫に輝く魔法陣が現れた。

 そして固有重力魔法”真滅圧縮テラドバアル”が発動した。


 骸骨武者ボーンジェネラルが槍を掴んだその時!

 ボーンジェネラルの周囲に、紫色の光を放つ黒球が出現した。

 次の瞬間、黒球はその大きさを急激に増大させ武者ボーンジェネラルを飲み込んだ。


「グガァァァ?」


 ボーンジェネラルを飲み込んだ黒球は、急激に縮みそのまま黒い点となり消えていった。

 一時の間、静寂が空間を支配した。

 ボーンジェネラルが立っていた地面も球状にえぐられた。

 まるで空間そのものが消滅したようだった。


「や……った」


 愛子はそうつぶやくと、ウエストポーチの右側ポケットを探った。

 そこには回復薬の小瓶があった。

 愛子はその瓶を取り出そうと手に力を込めた。


―――ガシャァン!―――


 愛子の指は力無く、握りしめた瓶は地面に落下し砕けた。

 そして地面にはわずかに回復薬が残った。


「くっ!死んでたまるか。私は生き残るんだ。ルル君に逢う為に!」


 愛子は地面に出来た回復薬のわずかな水たまりに、顔を近づけた。

 そして口を開いた。


―――ピチャッピチャッ―――


 愛子は口から舌をだし、砕けた瓶からこぼれたその液体を舐めた。


―――ピチャピチャ。


 わずかに体に力が入る愛子。さらにこぼれた回復薬を舐める愛子。

 回復薬はわずかに愛子の身体を回復させた。愛子の瞳にわずかな光を宿し始めた。


「ぐっ…勝っ…た…」


 力無くつぶやいた愛子はだったが、無くした血液は戻ることはない。

 その為、貧血を癒すことはできなかった。

 愛子のふとももは適切な止血をされた。

 さらにに回復薬の効能のによるものか、脚からの出血は完全に止まっていた。


「ああ…私は…生き…てる………」


 愛子はつぶやいた、そして自分の身体を改めてみた。

 美しかった両足は、太ももで両断され無くなっていた。

 そして、服は開け血液で赤黒くなっていた。


「もう…だめ…」

 愛子は、意識を無くし床に突っ伏した。



 その時、愛子の周囲に黒い粒子がまとわりついた。

 そして黒い粒子は愛子を包むと消えてしまった。


 愛子が消えた後には、血だまりが残るのみだった。




―――キィン!―――


 愛子が粒子に包まれ現れたのは青い光を放つ一室だった。

 そして周囲を機械に囲まれていた。



「うっ…ここは……一体……」


 愛子は一瞬気を失ったが冷たい床の感触に目を覚ました。

 そして周囲を目で見渡すと、目の前の椅子に座っている人影を見つけた。


「貴女は…だれ?」


 近寄る人影を愛子は見つめた。

 近寄る人物は黒いメタリックな肌を持っていた。

 そして全身にフィットした服装と、その金色に光る瞳が印象的だった。


「あら、貴女……」


 そうつぶやき愛子に手を伸ばす機人族の女性は、肩まで伸びた銀髪がすこし遅れて落ちてきた。

 その女性を愛子は見たことがあるような気がした。


「だ…れ…?」


 愛子は思い出せなかった。

 そして愛子の意識は疲労と貧血の為、闇の中に落ちて言った。


「そっか…なるほど、そういうことね…」


 愛子を見つめながら、女性はつぶやいた。

 そして愛子を抱きかかえ、部屋の中央の台に近づいた。



いつも読んでくださりありがとうございます。

感想、ご意見、誤字脱字があれば報告お待ちしています。


シリアス続きます。

深く傷ついた愛子がもっとも大事なものに気が付いたことで愛子が覚醒しました。

あとは楽しめるように書いていくので今後の展開をお楽しみに


次回更新は金曜20時までにしたいと思っています。


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