第4.1話 最後の一撃
モルトケは、襲い掛かる魔物を振り払い、走り去って行く彼――アレスの後ろ姿を見届けた。
「なぁ、フィール殿。ワシが負けたとき、一つだけ頼みがあるのだが」
剣と槍が互いにぶつかりあい鋭い金属が響く中、モルトケは眼前の敵にそう言った。
「その頼みというのは、彼を見逃すということでしょうか?」
「そうだ」
キーンという甲高い音と共に、モルトケは首を縦に振った。
「いいでしょう、あなたの最後の望み……聞き入れましょう。ですが、次は見逃しませんよ」
「フィール殿、ワシの頼みを聞き入れてくれて感謝する。だがな、次に彼と会うときは、フィール殿が死ぬときだ」
モルトケがそう言った直後、フィールが魔法で操っている槍が彼の腹に深々と刺さった。
しかし、彼はその時わずかに笑ってみせた。
「奥義――最後の一撃」
瞬間、モルトケは持っていた剣をフィールに向けて投げつけた。
やがてその剣は風よりも早い、一直線に伸びる閃光となりフィールの眼前へと迫る。
「――三段障壁」
フィールはとっさに魔法で防御する。
しかし、閃光となった剣はバリアを一枚、二枚と破っていく。
そしてついに、三枚目のバリアが破られた。
閃光は、フィールの目と鼻の先まで迫る――あと少し。
だが閃光はそこで輝きを失い、ただの剣となって地に落ちた。
「届かなかったか」
悔しそうに、しかしやり切ったような表情をモルトケは浮かべた。
そんなモルトケを見たフィールは魔法で槍を操り、彼の胸に突き立てようとする。
しかし、結局フィールがその剣を彼に突き立てることはなかった。
「すでに、息絶えていましたか」
老将モルトケは地に膝を突き、首を前に垂れていた。
見れば、彼の鎧はボロボロに壊れており、体中に刻まれた切り傷からは鮮血が流れ出ている。
「英雄モルトケ、あなたは本当に勇敢でした」
フィールは激しい戦闘を思い返しながら、モルトケの亡骸の前でそう告げた。
もう歩いて三日……つかれたよぉ~。次回「小さな村の小さな隠れ家」お楽しみに!
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