リチャードさん、救出!
リチャードさんを探してダンジョンを下りていくと岩の魔物ゴーレムがいた。ゴーレムを退治して、さらに下に向かおうとすると岩山付近でシルバーウルフの群れが吠えていた。 ドリエがシルバーウルフに向けて雷魔法を発動した。
「ゴ—— バキバキバキ」
「キャイン!!」
ドリエの手から放たれた巨大な電流に、すべてのシルバーウルフが一瞬で丸焦げになった。
「さすがドリエ姉!」
シルバーウルフのいなくなった岩山に近づくと、そこには隙間があり、中から声が聞こえてきた。
「なんか。ウルフの鳴き声が聞こえなくなったぞ!」
「そうだな。様子を見に行くか。」
「アーロン。お前はここにいろ! その足の怪我じゃ逃げられないだろ!」
間違いなく誰かがいる。オレ達は声をかけた。
「もう大丈夫ですよ。外の魔物はすべて討伐しましたから。」
「本当か?」
今度はミレイが声をかけた。
「早く出てくるにゃ! 大丈夫にゃ!」
すると中から髭もじゃの男性が2名出てきた。一人は足に怪我をしているようだった。
「大丈夫ですか?」
「君達が魔物を退治してくれたのか?」
「そうですよ。」
「ありがとう。感謝する。他の冒険者達はどこにいるんだ?」
「いませんよ。他の人達はこのダンジョンの外ですから。」
「なら、救助隊は君達だけなのか?」
「そうですけど。」
「信じられん。」
すると、ローザが可愛く言った。
「私達、『ワールドジャスティス』だからね。」
「あのSランクパーティーのか?」
「そうよ。」
2人は安心したのか張っていた緊張の糸が切れたようにその場に崩れた。
「大丈夫ですか? しっかりしてください。」
「あ、ありがとう。」
「オレはケンです。こっちはミレイ、ローザ、ミサキ、ドリエです。」
「俺はリチャードだ。こっちは仲間のアーロンだ。」
「リチャードさんですか? 本当に?」
「ああ、そうだ! だが、どうして・・・・・・?」
「ジャネットさんに頼まれたんですよ。マイケル君にもね!」
「ジャネットとマイケルが来てるのか?」
「ええ、来てますよ。今はギルドでリチャードさんのことを待ってますよ。」
「そうか~!」
リチャードさんは座り込んだ地面の上で、大粒の涙を流して泣いた。すると、ミサキがアーロンさんに声をかけた。
「その足じゃ歩けないでしょ。ちょっと見せて!」
ミサキがアーロンさんの足の傷を確かめた。すると、シルバーウルフに噛まれたのだろう。牙の跡が痛々しい。時間の経過とともに、噛まれた跡が化膿していた。そこで、ミサキが治癒魔法を発動する。すると、ミサキの手から暖かい光が発せられ、傷跡が見る見るうちに塞がっていく。
「おお、ありがたい。君は治癒魔法が使えるのか?」
「ええ。」
「この場所はまだ危険ですから、すぐに地上に戻りましょう。」
「わかった。」
リチャードさんもアーロンさんも上に向かって歩き始めようとした。
「2人ともこっちに来てください。」
「どうしたんだ? 上に行くんだろ。」
「オレ達にはまだやることがあるんですよ。だから、時間がないので、とにかくこっちに来てください。」
2人は不思議そうに近くまで来た。
「じゃあ、みんな行くよ。」
「うん。」
オレは全員を連れて地上まで転移した。突然地上に出たことでリチャードさんもアーロンさんも目を白黒させている。
「転移ですよ。」
「転移?! 転移って、失われた魔法じゃないのか?」
「いや~、そんなことはないですよ。魔族だって使っていましたから。」
「魔族?!」
「ええ、このダンジョンの最下層にも恐らく魔族がいますよ。」
「それは本当か?」
「ええ。間違いないと思いますよ。」
「なら、すぐにギルマスに報告して、国から討伐隊を派遣してもらわなければ。」
「大丈夫です。オレ達が討伐しますから。」
「君達だけでか? いくらSランクパーティーでも魔族は難しいだろう?」
すると、ドリエが口を開いた。
「そんなことないですよ。ケン様はすでに魔族を討伐していますから。」
「そういうことですから。オレ達はまたダンジョンに戻りますね。ジャネットさんとマイケル君によろしく伝えてくださいね。」