王都ビザンチン見物
セザール獣王国のレオパルド国王に呼ばれたケン達一行は、国王と謁見した。他国の貴族が自国にいることを不思議に思っていたレオパルド国王を、リンが大天使の姿になって説明してくれた。だが、元来戦闘好きなレオパルド国王から模擬戦を申し込まれることになった。
「陛下。申し訳にくいのですが、オレでなくてこの中の誰かが相手をするんじゃだめですか?」
「よいが、わしがその模擬戦で勝利したらお主が戦ってくれるんだろうな?」
「いいですけど。でも・・・・」
「でも、なんだ?」
「勝てないと思いますよ。」
「やってみるまで分からんだろう。」
仕方がないので、オレ達は城の外にある闘技場までやって来た。ここに来る間中、誰が戦うかでもめている。
「僕が戦うにゃ。 同じ獣人族にゃ。」
「いいえ。ここは私が。お父様が相撲で勝てなかった相手です。私がお父様の仇を取ります。」
「私に戦わせてください。ケン様と戦うなどと言ってらっしゃる方は、私が成敗します。」
誰が戦うかもめてる間に、闘技場の中央にはローザの姿があった。
「一番小さな君が相手なのか?」
「うん。でも、大丈夫だよ。遠慮しないで来てね。」
ミレイ、ミサキ、ドリエは何が起こったのか状況が把握できていない。自分達が言い争っている間に、勝手にローザが出てしまったのだ。オレが審判をすることになった。
「始め!」
レオパルド国王が本気モードだ。もの凄い圧だ。周りの空気が国王に向かって吹き込んでいく。国王は木剣を手に持ってローザに向かう。ローザは何の武器も手にしていない。
「行くぞ!」
「うん。」
レオパルド国王の姿が消えた。残像だけが残っている。ローザの右側から木剣が振り下ろされる。だが、ローザはそれを体勢を低くして避けた。さらに、国王が上にジャンプしてローザめがけて木剣を振り下ろした。だが、すでにその場にローザはいない。
「ハーハーハー。お嬢ちゃん。強いな~!」
「ありがとう。」
「でも、避けてばかりじゃ勝てないぞ!」
息を整えた国王が再びローザに突っ込んでいった。今度は正面から木剣で突く。次の瞬間、ローザが消えた。と思ったら、国王の木剣の上にチョコンと立っていた。そして、頭に軽くチョップをする。
「えい!」
国王はその場で意識を失った。
「ローザ! お前やりすぎだぞ!」
「ごめん。でも、かなり手加減したよ。」
「それは分かってるさ。まっ、やってしまったんだからしょうがないな。」
しばらくして国王が意識を取り戻した。
「わしは負けたのか?」
「はい。」
「あのような小さな少女にか?」
「はい。」
「さすが『ワールドジャスティス』だな。全員が同じように強いのだろう?」
「そうですね。」
「そうしてみると、ケン殿の強さはどれほどなんだ?」
オレは冗談で言った。
「多分、魔法一つでこの世界を消滅させられますよ!」
「な、な、なんと?! それだけはやめてくれ!」
「冗談ですよ。」
「冗談か~。ふ~。」
でも、本当にできてしまうかもしれない。そんな自分が怖くなることもある。オレ達は応接室で国王とビャッコさんとお茶を飲んだ後、すぐに城を出た。女子4人衆の要望で、その日はビャッコさんに案内されて王都ビザンチンを散策することにした。やはり、みんなも年頃の女の子たちだ。服屋を見つけると興味津々だ。
「いいよ。ここで待ってるから買っておいで。」
「ケン兄。1人何着までいいの?」
「1人5着までな。」
「ヤッタにゃー!」
「ケン様! 最高で~す!」
みんなで走って行ってしまった。ベンチにはオレとビャッコさんだけがいる。なんか気まずい雰囲気だ。
「あの~。ケン様。ケン様は本当は神様なんでしょう?」
「さっきも言いましたけど、オレは人間ですから。」
「そうですよね。」
2人の間に沈黙が流れる。何か気まずい。すると、突然ビャッコさんが話し始めた。
「私はミレイさん達が羨ましいです。」
「どうしてです?」
「いつも好きな方の近くにいられるじゃないですか?」
「そうですね。でも、その分、別れはつらくなるんですよ。オレもみんなも。」
「そうですね。獣人族、エルフ族、竜人族、人族。それぞれ寿命が違いますもんね。」
「そういうことです。彼女達はそれを覚悟の上でオレの近くにいるんですよ。」
「皆さんの絆はすごく強いんですね。」
「彼女達はそれぞれ苦しい事を乗り越えてきたんです。宝物って楽しては手に入らないんですよ。死ぬほどの思いをして、苦労して初めて手に入るんです。彼女達は心に大きな宝物を持っていますから。」
「そうだったんですね。何も知らずに羨ましがった自分が恥ずかしいです。」
「そんなことないです。自分に素直になることは大事ですから。」
すると、ミレイとローザが口喧嘩をしながら帰って来た。
「ケン兄。聞いて! ミレイ姉ったらひどいのよ!」
「だって、もったいないにゃ。」
「どうしたのさ。」
するとドリエが説明を始めた。ローザが胸の下着を探していたら、ミレイがまだ必要ないと言ったらしい。それが、ローザを怒らせた理由のようだ。オレはローザとミレイを呼んで二人を抱きしめた。
「そんなことで喧嘩するなよ。ミレイだってローザだってお互いが大事なんだろ。時間は永久じゃないんだよ。なら、1分でも1秒でも笑って過ごした方がいいじゃないか。」
オレの言葉をローザもミレイも目を丸くして聞いていた。2人がオレから離れて聞いてきた。
「どうしたの? ケン兄? 急に!」
「おかしいにゃ! 何かあったにゃ?」
「別に何でもないさ。いつもみんなと笑顔でいたいって思っただけさ。」
なんか、喧嘩がばかばかしくなったようで、その後はミレイもローザも普通に戻っていた。そこに空気を読まないミサキが話しかけてきた。
「ねぇ。ケン! この服似合うでしょ? また胸が成長したから、強調したのよ!」
「良く似合うよ。でも風邪ひくなよ!」
「大丈夫よ。」
となりでドリエが苦笑いしている。まっ、なんだかんだこのメンバーは仲がいい。オレはそれだけで満足だ。
ミレイ姉! いつも言ってるけど、私は成長中だからね!
でも、今は僕の方が勝ってるにゃ!
悔しい~! ケン兄! ミレイ姉ったらひどいのよ!




