セザール獣王国のレオパルド国王
セザール獣王国の闇組織『スネイクヘッド』を殲滅したオレ達は、レオパルド国王に呼ばれて王都へと向かった。途中の小さな町で1泊して、翌日の昼には王都に着いた。検問の前で大勢の人達が並んでいる。その横を馬車に乗って通過することに多少の抵抗はあったが、仕方がない。
「ケン兄。見てみて! すごい人だよ!」
御者の席に座っているローザとドリエが大きな声で話しかけてきた。窓から街を見ると、確かにすごい人だ。ビャッコの街も賑やかだったが、王都は道の広さから違う。大通りには大道芸人達までいた。
「皆さん。そろそろ王城です。準備してください。」
オレ達は相手が誰であっても同じ服装だ。特に用意するものはない。
馬車が王城に入って行った。馬車から降りると、そこにはヨーロッパの城を思い出させるような石造りの立派な城が立っていた。兵士達が駆け寄ってきて案内してくれた。
「ケンさん。中に入りましょう。」
「はい。」
オレ達は王城の中に入って行く。壁には様々な武器が装飾品として飾られていた。さすが戦闘好きの国王だ。絵画のような美術品はどこにも見当たらない。そのまま応接室に通され、暫く待たされた。
「コンコンコン。」
「はい。どうぞ。」
「ビャッコ様。陛下の準備が整いました。謁見の間にお越しください。」
「わかりました。」
オレ達はビャッコの後ろを歩き、謁見の間の前まで来た。扉は飾り気がないが、重厚でしっかりした作りのものだ。オレ達が中に入るとファンファーレが鳴り響いた。どうやら歓迎されているようだ。左右には鎧を着た兵士達が立っている。オレ達はビャッコのマネをして臣下の礼を取った。
「国王陛下。ビャッコが参上いたしました。お申し付け通り、ケン殿一行をお連れしました。」
「大儀であった。」
「そなたがケンか?」
「はい。」
「そなたが『スネイクヘッド』を壊滅させたのは誠か?」
「オレじゃないですよ。ここにいるミレイ、ローザ、ミサキ、ドリエですよ。」
「女、子どもではないか?」
「子どもじゃないもん!」
ローザはオレの手を掴んできた。国王の前で無礼かと思ったが、意外にも国王は大きな声で笑い始めた。
「ワッハッハッ」
「どうしたんですか?」
「わしの前で物怖じせずにしゃべった者は久しぶりでな。愉快! 愉快!」
「そういうことですか? ここにいるミサキもアルメデス王国の王女ですから、あまり気にしないんですよ。みんな。」
「なんと?! ジョナサン国王の娘か?!」
「はい。お父様をご存じなのですか?」
「ああ、知っているとも。あやつが幼いころ、よく相撲の相手をしてやったものだ。そうか。あのジョナサンの娘か。アッハッハッ」
近くにいたビャッコは初めて知った事実に困惑していた。
「それで、お前はただ者ではあるまい。何者なんだ? ケン?」
「オレはアルメデス王国の伯爵です。それ以外の何物でもありませんよ。」
「王国の貴族がなぜこんな場所にいる? それに、『スネイクヘッド』の件を考えれば、ただの伯爵でないことは分かり切ったことだ。」
“リン。頼むよ。面倒なお願いだけど、いいかな?”
“いいですよ。いつも一緒に寝ていても何も言わないでいてくれるお礼です。”
突然、オレの指が光り輝く。そして、空中に温かく優しい光が現れた。その光の中に真っ白な服を着て、背中に純白の翼を広げた美少女が現れた。
「私は大天使ナルーシャ。わが主はこの世界の平和のために旅をしているのです。」
突然現れた大天使に、兵士達は大慌てだ。全員が平伏している。国王レオパルドさえも椅子から降りて片膝をついている。ビャッコは目を白黒させながら気絶寸前だ。
「大天使様。お伺いします。我が主とはどういうことですか?」
「私はグランドマスターの命令で、マスターであるケン様を主としています。そのマスターが、この世界を平和へと導くように管理神エリーヌ様に頼まれたのです。」
「では、ケン殿は神なのか?」
「私はお答えできません。それは、マスターにお聞きください。」
「オレは人間ですよ。普通の人族です。良いじゃないですか、それで。」
「わかりました。では、そういうことにしましょう。」
隣で聞いていたミレイもミサキもローザもドリエもキョトンとしている。多分後で質問攻めになるんだろうなと思いながらも、国王に用件を聞いた。
“リン。ありがとう。もういいよ。”
“はい。マスター。”
リンが指輪の中に戻って行った。
「レオパルド国王陛下。オレ達に何か用があったんですよね?」
「おお、そうであった。まずは報酬をな。これ!」
国王の指示に従って、宰相のような人がオレ達の横の机に大白金貨100枚を置いた。
「これは今回の報酬だ。受け取ってくれ。」
「なら、遠慮なくいただきます。ただ、1つオレから陛下にお伝えしておきたいことがあります。」
「どんなことだ?」
「オレが討伐した『スネイクヘッド』の首領のティガは魔族でした。」
「何と?! なぜ魔族が?」
「オレにもわかりません。オレも魔族に会うのは2回目ですから。油断しない方がいいですよ。今回はオレが討伐しましたが、次にいつまた魔族が来るかわかりませんから。」
オレは目の前の報酬を空間収納にしまった。その様子を国王は見ていなかったが、ビャッコはしっかり見ていた。
「ケ、ケ、ケン様。今のはなんでしょうか?」
「空間収納ですよ。」
「空間収納?」
「はい。オレの作った空間に荷物を入れておくんです。便利でしょ?」
「なるほど、それで皆さん手ぶらだったんですか?」
「そうですよ。今更どうしたんですか?」
「ウッホン」
無視された国王陛下が咳払いをした。
「大変失礼しました。陛下。」
「よいよい。わしも伝説の魔法の空間収納と聞けば驚くからのう。それより、どうだ? ケン。わしと模擬戦をしてくれんか?」
やっぱりだ。絶対にそういう話になると思った。4人娘がオレを見ている。




