ドワーフの村に到着
ローザの思いもかなって、無事にエルフの里を旅だったオレ達はドワーフの村を目指して歩き始めた。
「ローザちゃんは世界樹を見たことがあるの?」
ミサキが興味津々で聞いた。
「ないよ。だって、世界樹には選ばれた人しか行けないんだもん。」
「ふ~ん。」
「ケン様。どうしてエルフ族は精霊と仲がいいんですか?」
ドリエが無邪気に聞いてくる。だが、オレも知らない。
“リン。ヘルプ! ドリエの質問に答えられない。教えてくれ。”
“はい。この世界の精霊達は世界樹から生まれます。そして、知識・能力が高くなったものが大精霊となります。それをまとめるのが精霊王です。精霊はアストラルボディしか持ちませんが、長い年月の間で肉体を持った者達が妖精になるのです。その妖精が進化したのが、エルフ族やドワーフ族なのです。”
“なるほどね。ありがとう。リン。”
“どういたしまして。それよりも、また一人で亜空間に行ってください。私もたまにでいいですが、マスターに甘えたいんです。”
“わかったよ。”
オレはリンから聞いた内容をみんなに説明した。みんなはオレの知識だと思って驚いている。なんかリンに申し訳ない気がした。
「ケン兄。大きな街道まで戻ったよ。」
「今日は、ここまでにして亜空間で休もうか。」
「賛成!」
その日は、亜空間で休むことにしたのだがローザの様子が心配だ。そう思っていると、ローザが枕を持ってオレの部屋に来た。
「どうしたの?」
「今日は一緒に寝たいの。いい? ケン兄。」
「いいよ。」
久しぶりにローザと一緒に寝た。少しは成長しているようだが、やはりまだまだ子どもだ。精神的に辛かったのだろう。ローザはオレに寄り添うようにしながら寝息を立て始めた。よく朝起きると、オレがローザと寝たことを誰も責めなかった。みんなもわかっていたようだ。
「さあ、今日はドワーフの村に行くぞ!」
「了解にゃ。」
街道を歩いていると、右側に険しい山が見えてきた。そして、街道が2手に分かれた。オレ達は山に向かう道を歩き始める。すると、木々がなくなり道が徐々に険しくなってきた。
「ケン様。ドワーフの村はどのあたりなんですか?」
「ドルトンさんに聞いた話だと、あの山の麓のようだよ。」
「ケン。そろそろ休憩しない? 足が痛くて。」
溶岩のような鋭い石がごろごろしている。その上を歩いているのだ。みんなも同じように足が痛いだろう。
「わかったよ。ちょっと休憩しようか。」
「やったー! ケン兄! ご飯にしようよ。」
ご飯と聞いてミレイの耳がぴくぴくと動く。単純な奴だ。オレは空間収納からオークの肉を取り出して、胡椒を振りかけて焼いた。あたりにいい匂いが立ち込め始める。すると、風下の方からドシドシとガタイのいい小柄な男達が3人やって来た。
「旨そうなものを食ってるな。わし達にも分けてくれんか?」
「いいですよ。」
オレはやって来た男達に同じように肉を焼いて渡した。男達はそれを一口食べて驚きの声をあげた。
「おい、お前さん。この肉はなんの肉だ? めちゃくちゃ旨いじゃないか?」
「オークですよ。ただ、この香辛料を使ってるからじゃないかな~?」
「おい、その香辛料を譲ってくれんか?」
「いいですけど、皆さん、ドワーフ族ですよね?」
「ああ、そうだ。」
「なら、村まで案内してくれませんか?」
「構わんが、何の用だ?」
「オレの知り合いにドルトンさんってドワーフがいるんですけど、ここに立ち寄るように言われたんですよ。」
「ドルトンだと~! あいつは元気なのか?」
「ええ、アルメデス王国の国王直営の企業で工場長をしてますよ。」
「よくわからんが、元気ならそれでいいさ。オレはドルトンの兄のダンタンだ。」
「ドルトンさんのお兄さんなんですか? オレはケンです。こっちはパーティメンバーのミレイ、ローザ、ミサキ、ドリエです。」
「みんな美人だが、お前の嫁なのか?」
ここで、ミサキが答える。
「今は違うけど、いつかそうなるのよ。」
オレは慌てて説明する。
「いいえ。オレ達は冒険者なんですよ。全員が同じパーティーメンバーなんですよ。」
「まっ、どっちでも構わんがな。ワッハッハッ」
世間は狭い。偶然出会ったのがドルトンさんの兄弟とは不思議なものだ。オレ達はダンタンさん達に案内されて、比較的足に負担のない道を歩いた。しばらく歩くと家が見えてきた。
「あれがオレ達の村だ。」
遠くから見ると、どの家も石やブロックでできているようだ。体に似合わず、どの家も大きめに作られている。
「最初に村長にあいさつに行くぞ!」
「はい。」